意思による楽観のための読書日記

石油の支配者 浜田和幸 ***

昨年の原油高は、なぜおきたのか、最高値は1バレル147ドル、そして今は60ドル、この乱高下は尋常ではない。膨大な投機マネーが原油先物市場になだれ込み、価格をつり上げていた、実需に見合う価格ではなかったことが分かる。

原油高の「犯人」は誰だったのか、著者は、原油を人質にとった「マーケット・テロリズム」といえるような前代未聞の状況だとして、その主役が、先進国の商品先物を買う機関投資家であり、具体的には投資銀行やヘッジファンド、年金ファンド、大学基金、財団、富裕層の個人、政府系ファンドなどであるという。

著者の指摘の要点は次の通り。
・石油には二重価格が存在しており、日本はどの国よりも高い値段で買わされている。
・原油市場を高騰させた資金に金利が安い、円キャリー資金が使われている。
・石油は化石燃料であり、そのうち枯渇するというピークオイル説とは別に、地球内部で無機物質から作られているという学説がある。
・CO2排出権取引市場はエンロンの陰謀であった。

そして現在では、「新セブンシスターズ」と呼ばれるロシア、イラン、サウジアラビア、中国、マレーシア、ブラジル、ベネズエラの政府系石油会社が原油市場に大きな影響力を持ちはじめているということが、重要である、と指摘している。セブンシスターズといえば、欧米の石油メジャー七社をさしていたが、これらの新興国の影響力、政治的観点から、とくに中国とロシアの動向からは目が離せないと著者は述べている。
石油の支配者 (文春新書)

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