意思による楽観のための読書日記

大阪府警暴力団担当刑事 森功 ***

筆者は大阪府警で暴力団を担当する数多くの刑事たちに取材をした。実名を出すことは憚れるため、その名前を「祝井十吾」と総称することにした。2011年の夏、突然行われた島田紳助の記者会見、反社会的存在であるヤクザとの付き合いがあったことを認め、今後一切の芸能活動をしない、という内容だった。それを聞いた祝井十吾、「記者会見するのであればもっと正直にはなさんかい」。祝井十吾が調べたところによれば、島田紳助はヤクザと数回食事をしたでは済まない深い付き合いがあったはずだという。どうも羽賀研二の恐喝事件を調べているうちにボクシングの渡辺二郎と紳助の付き合いが炙り出てきて、渡辺二郎を通じた紳助と山口組幹部との付き合いが出てきて、紳助本人に確認したところそれを認めたことがきっかけだったらしい。興行にヤクザが絡むことはなんとなく想像できるが、ボクシングや吉本興業の講演では全国各地で西日本では山口組を中心としたヤクザがその上前をはねていたらしい。渡辺二郎はその組員名簿にも名前が乗るほどの入り込み方だった。

山口組は港湾荷役や工事手配などでその三代目であった田岡一雄の時代に急速に経済的に力をつけ、その配下の勢力を伸ばした。1984年に田岡を継承した4代目竹中組長は一和会との抗争で殺され、5代目は渡辺芳則、6代目は司忍と続く。大阪府警はこの4代目時代に起きた抗争、その後も続いたヤクザ同士の勢力争いに乗じて、ヤクザ勢力全体を弱体化すべく、暴対法など法律制定や撲滅運動などの各種戦略を練ってきたが、現実は厳然とヤクザ勢力が存在している。

田岡一雄の息子は満、その還暦のパーティは大阪の一流ホテルであったホテルプラザで行われたが、そのパーティには大阪市長を始め多くの芸能人や経済界の実業家たちも参加した。田岡満はヤクザではなかった。しかし、父に山口組組長をもち、その活動の裏には必ず山口組がいたはずである。そのことはパーティ参加者も知っていた公然の事実であった。吉本興業会長やその夫人、そして一時週刊誌記事になった中田カウスと山口組の関わり、そしてそれと紳助引退の真相などが、祝井十吾の証言として紹介される。

森功のドキュメンタリー「銀行と」で解説された当時の三和銀行淡路支店と関西の解放同盟飛鳥支部長だった小西邦彦との関わりがまたまた登場する。補助金とヤクザをつなぐマネーロンダリングの片棒を三和銀行と解放同盟が担いでいたという話。そして最近のITファンドの活動と裏世界との関わりである。ホリエモン、村上世彰などが有名だが、ここで登場するのはパチンコ情報誌で一儲けした梁山泊グループの総帥豊臣春國、アイ・シー・エフの株式操作で200億円のあぶく銭を手にしたという。その周りには多くのヤクザたちが群がりその上前をはねていった。金の臭がするところにはかならずヤクザが群がる、それに警察が気がついた時にはすでに手遅れというケースが多いという。

週刊誌で騒がれ話題になる、ということにはなんらかの実態があるのだとあらためて感じるような証言録である。紳助以外にもヤクザとの関わりが深い芸能人たちがいるはず、その芸能人達は口を拭って知らんぷりをしているのであろか。




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