インターネットが世界規模で破綻した世界、という設定。あらゆる通信とコンピュータ処理が一瞬にしてできなくなってしまったらどうなるか。銀行システムが止まると、お金が使えない。それどころか皆が国家の保証を背景に信用して使っている貨幣が信用できなくなる。通信ができないので、テレビも電話も使えない。報道がないので世界がどうなっているのかをお互いに知ることができない。そのために、国家間の疑心暗鬼から世界各地区で小競り合いが始まり、国家間戦争も起きている。しかしその詳細は不明。スマホもWEBもPCも使い物にならなくなっていて、軍と警察が相互不信から殺し合う事態になってしまう。
こういう状況で、新聞記者の眞嶋は、信州に取材に向かうよう、指示され単独で長野に向かう途中、飼田というテロリストと巫女だという女性に拉致されて、ムラに連れてこられた。ムラは国家から独立をした組織として、数百年も自立生活を続けているという。巫女が宗教的象徴で、村長とムラオサの任命権を持つ。村長は行政権をつリーダーでムラオサは人心を束ね、大きな判断を委ねられる。三権分立とも言える、権力の鼎立状態の中で、国家からこのムラに神里という進化情報戦略研究所員が派遣される。情報が途絶する中で、国家権力とそれには向かうムラ、そうした状況を取材しようとする記者の眞嶋の相克が描写される。状況小説とも取れる設定が奇抜で、日本社会を象徴的しているようでもあるSF小説。