意思による楽観のための読書日記

インシテミル 米澤穂信 ***

12人の男女が高額のアルバイト代(時給11万2千円)に釣られて7日間を閉じられた空間「暗鬼館」で過ごす。結城はその一人で大学生、暗鬼館には12人にそれぞれの個室、ラウンジ、食堂、トイレ、台所、金庫、監獄、守衛整備室、娯楽室、棺桶室がある。そして参加者には奇妙なルールが示される。食事と睡眠場所は与えられるが、夜は自分の部屋で過ごさなければならず、ルールを破ると罰を受ける、場合によっては殺される可能性もあると。そして、報酬は人を殺した場合、そしてその殺人者を指摘した場合には増額されるというのである。そして各人の個室には別々の武器、毒薬がおいてあり、そのそれぞれが異なる方法で人を殺せる道具になる。撲殺、射殺、毒殺、殴殺、射殺、、、、。参加者はまずは自己紹介をするがお互いを知っているわけではない。しかし、なかには知り合い同士もいるようだ。時給11万2千円は7日間では1800万円程度にもなる。みんなで何事も無く7日間を過ごせば大金が手に入る、とお互いに確認をして眠りについた12人、各部屋ではさらに詳細なルールが示される。殺人ボーナスは報酬総額を2倍に、被害者は1.2倍、しかし被害者になるということは死ぬことだから意味が無い。正しい犯人を指摘したら報酬総額は3倍に、正しい犯人を指摘した人を助けると1.5倍になると。しかし翌日一人が死体で見つかるところから疑心暗鬼が始まる。一体誰が殺したのかと。

そして日が立つごとに死者は増えていく。疑心暗鬼はどんどん深まる。お互いがどのような武器を持っているのか、死体はどのような武器で殺されたのか、これから犯人探しが始まるが、誰が誰の武器を使ったのかは推測の域を出ない。そこで、2人が殺された時点でお互いの武器を見せ合う事が提案される。しかし信用できる相手とできない相手が夫々にはいるようだ。5人と4人に分かれて武器を見せ合う。結城に与えられたのは火かき棒、殴殺が可能だ。このアルバイトに参加する直前に知り合った謎の美少女須和名はニトロベンゼン、毒殺ができる。安東は紐、絞殺、関水はニコチンで薬殺、という具合である。相手の5人もお互いを披露したはずだが、中見は明かさない。

そしてさらに殺人は起こり、6日目5人となった時点で結城は安東に殺人者と指摘され、他の参加者の多数決で犯人とされ監獄に入れられる。そこには3日目に犯人とされた岩井がいた。結城は岩井を前から知っていた。大学のミステリー同好会のメンバーだというのだ。そしてこの殺人の実験、アルバイトがミステリー小説仕立てになっていることをお互いの知識で確認する。クローズドサークルにおける連続殺人、そして脱出口を見つけた4人と、それを追う岩井と結城、この実験の謎を解く。脱出できたのは6人、それぞれが報酬を手にするがその額は様々であった。結城が手にしたのは33万円、安東は442万円、岩井と須和名は1769万円、そして関水は10億円。

数日後、報酬を手にして念願の車を手にした結城は須和名からの手紙を受け取る。須和名は結城を新たな実験のモニター、アルバイトに招待したのだ。

どうだろう、バトルロワイヤル、そして誰もいなくなった、ミステリーファンなら面白い読み方も出来るかもしれない。「インシテミル」は「淫してみる」「inしてみる」著者によると、「内輪の話に淫しても、外部には伝わらない、という感覚を表現してみたかった」と。表現できたのかどうかは読んでみなければ分からない。


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