主人公の作田は医者、心臓移植の勉強のために、この国を訪れていた。作田はブラック・スポットと呼ばれる黒人居住区の診療所に出入りするようになり、ひどい病状の子供たちをみる。「二歳くらいの男児が母親に抱かれている。小豆大の水疱が全身を覆っていた。枯れて消褪しかけている皮疹や丘疹もなく、虫の吸い口もみあたらない。すべて水疱が。熱は三十七度五分だった」そしてこうした病気になんとか対応しようとする過程で、その裏にある陰謀に気付く。ワクチンを作るために国外脱出。作田には恋人パメラがいるアフリカの蹄に戻る。消される危険性も高いのに、身の危険を顧みず戻るのである。恋人パメラはアフリカの蹄について「みんなはアフリカの蹄なんだ。蹄が動かないと、牡牛は歩けない、走れない。だから、みんなで力を合わせてアフリカの蹄になり、走ろう」
作者の描く物語はいずれも周辺調査が行き届いており、ヒューマニズムにもとづいて描写されるので暗くて重いテーマを扱っているのにもかかわらず読後感がさわやかなのが特徴。 本編と続編の「瞳」もおすすめである。
アフリカの蹄 (講談社文庫)
↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。