意思による楽観のための読書日記

アフリカの瞳 帚木蓬生 ****

主人公の作田、妻となったパメラ、診療所の医師サミュエルら、前作で馴染んだ人物たちが登場、馴染みの世界に戻ったような心地の良さを感じる。「蹄」で天然痘ウィルス撲滅に奮闘した時から12年が経ち、シンとパメラ夫婦の息子タケシも登場。今回は、南アフリカに蔓延するエイズ禍を問題として取り上げた作品。世界のHIV感染者の3人に2人はアフリカに集中するという。HIV感染の広がりという点において、南アフリカの現実は悲惨である。高価な外国製の抗HIV薬が貧しい国民の間に行き渡らないため、政府は自国生産の安価な抗HIV薬ヴィロディンの利用を推奨。それとともに、妊婦と新生児に対してはヴィロディンを無料配布。ヴィロディンは本当に効果があるのか。サミュエルの診療所を手伝う作田とパメラは疑惑を抱くようになり、独自の調査を開始。パメラが語る、政府をあてにしていてはいけない、自分たちの力でこの国を変えていかなければならないというメッセージ。それを反映するかのように、シンやパメラの活動を応援する普通の黒人女性たち、自分たちの努力で農地を豊かにしようと奮闘しているイスマイル一家たちの姿が描かれている。

予防も治療も追いつかない、感染者は感染の事実をあきらめの境地で受け入れる。そんなアフリカを製薬会社は、新薬の実験地域として扱おうとする。こうした現実を淡々と描写している。フィクションでありノンフィクションである。
アフリカの瞳 (講談社文庫)

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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