米CIAの職員として、機密情報に接し、情報システムの機密責任者にまでなった筆者は、2001年の9・11同時多発テロ以降、情報収集のためにアメリカ大統領が命じた大統領令により、米国政府は、すべてのアメリカ国民だけではなく、全世界の人達による日常活動のすべてを監視することになってしまっていることを暴露した。本書は、その背景となる筆者の生い立ちからCIA就職に至る経緯を紹介し、身につけることになった情報技術を詳らかにした上で、機密情報の概要を説明し、この暴露の正当性と真実性を確保することを目的としている。暴露されたCIAとしては、筆者の身の確保、暴露内容の否定、報道妨害などありとあらゆる努力をしているが、本件については、筆者本人による周到な事前準備と協力者たちの努力により、長く一緒にいるパートナーとともにロシアで生活し、情報発信活動もしていて、今日の時点でもCIAの工作は成功していない。
筆者によれば、CIA/NSAによる情報監視は、PCによる情報やり取り、スマホ・電話、クレジットカード、電子パスによる交通機関利用、情報家電にまで及んでおり、米国にとって気になるキーワードなどにより、監査対象になると、該当する人物の情報はすべて監視対象とできるという。具体的にはCIAが収集監視対象とするのは、メタデータ、コンテンツを検索できるインデックス情報である。これにより当人PCやWEBカメラ、スマホの遠隔操作、監視、記録閲覧などが容易に行えるという。信じがたい話ではあるが、本書を読み進むとそれも可能なのかと思ってしまう。本書とは別の一冊、「スノーデン 日本への警告」では、本書内でも紹介される監視技術が、米国から日本にも提供され使われていることも警告されている。
スノーデンは、そいう行為は米国憲法に明確に違反するだけでなく、国際連合で定めるプライバシー保護や人権宣言など全てに抵触すると指摘、自分やパートナーの身の危険、安定した収入、家族の落胆などすべてをリスクにさらしてでも公開すべきと一大決心をして、それを実際に実行した。
自分は大した秘密はないし、政府にバレたら困るような通信などない、と思っていると大間違い。プライバシーや報道表現の自由を政府がないがしろにすることは、民主主義の根幹を揺るがせることであり、管理社会、監視社会から専制政治、独裁政治にまで繋がる道であると筆者は指摘する。憲法が、こうした可能性と権力を潜在的に持っている国家権力を縛る存在であること、スノーデンは何度も指摘する。2019年11月30日発刊の本書、民主主義や人権、情報技術に関心がある方になら、一読をおすすめできる一冊である。