意思による楽観のための読書日記

人間はどこまで耐えられるのか F・アシュクロフト ***

ユニークな人間の限界について分析解説した本、なんにでも挑戦してみようという好奇心の強い人向け。

どのくらい高く登れるのか、僕は3776mまでしか経験がない。夏の富士山ご来光というやつで、限界でも何でもなかったが、それでも空気の薄さくらいは感じた。海外旅行で飛行機に乗ると1万メートルくらいの高さを飛んでいる。そこで窓ガラスが割れたらどうなるのか。客室内の空気は一気に轟音を立てて外に吹き出し、外気と同じ気圧まで下がる。ものが空中に浮かび、シートベルトをしていなければ吸い込まれるように外に投げ出される可能性がある。室温は外気と同じ温度にまで下がり、機内はきめ細かな霧に包まれ冷却された空気が気化始める。すぐに酸素マスクを着用しなければ30秒で意識を失う。落としたメガネを拾うよりも先に酸素マスクを着用することが生き残るためのコツだそうだ。機内を加圧しないで無酸素で飛行できる高度限界は3000メートル、民間機では1500-2400メートル相当の気圧に設定されている。戦闘機では機内を加圧するのは7600メートルから、操縦性確保のためだという。コンコルドは1万5千メートルを飛行していたので、窓ガラスが割れれば瞬時に命が奪われるというが、もうその心配はない。

どのくらい深く潜れるか、僕は八丈島で35メートルまで潜水したのが最深、その時には35メートル地点に5分いただけでエアーが渋くなり、単独で20メートルまで浮上、5分待って再び10メートルまで浮上、さらに5分で水上までたどり着いた。減圧のためだったが結構怖い思いをした。数気圧の圧力がかかると窒素酔いという症状になる。アルコール酔いに似ていて気分が高揚するという。窒素酔いは50メートルで始まり、90メートルでは意識を失う。スキューバダイビングでは30メートル程度にしておくようにというのはこのためである。

どのくらいの暑さに耐えられるのか。体内の水分が3-4%失われても支障はない。5-8%失われると疲労感やめまいを覚え、10%を超えると精神的なダメージも受ける。15-25%を失うと致命的だという。血液の水分が同時に失われて粘性が高まり心臓から送り出される血液の量が減って体が冷却できなくなってさらに体温が上昇するというのだ。暑い場所での苦しみは暑さそのものよりもこの水分不足であり、脱水症状が出れば36時間以内に死ぬ。

逆にどのくらいの寒さに耐えられるか、これは時間と程度による。服をしっかり着ていれば外気が0-5度になっても風さえなければ体温の維持ができる。手足が局所的にもマイナス0.5度以下になると凍傷を引き起こす。風が吹くと寒さは増加する。マイナス29度でも防寒着を着ていれば危険はないが、時速10マイルでも体感温度はマイナス44度まで下がり肌の表面は1-2分で凍りつく。風速が25マイルを超えると体感温度はマイナス66度、体の肉が30秒以内に凍り始めるという。冷たい金属に触ると肌はあっというまに凍りつく。高高度爆撃機の狙撃手は高度1万メートルで外気マイナス30-40度のところで機関銃を扱ったため手袋をはめなければ直ぐに手が機関中に凍りついたという。

宇宙でどこまで過ごせるか。先日地球に帰還してきた古川宇宙飛行士はどのくらい放射線を浴びたのだろうか。太陽では時々フレアが発生、大きなフレアが爆発すると10億個の1メガトン水爆が爆発したのに等しく、太陽嵐が起きて、地球に到達する放射線量も激増する。2012年はフレア活動11年周期のピークだそうだ。地球の磁場は放射線の盾になっており、上空で荷電粒子を捉えるためそこにはバンアレン帯という放射帯が存在する。放射線量は1時間あたり200msv(ミリシーベルト)地球周回軌道はバンアレン帯を回避するように設定されているというが、太陽嵐は避けられない。スペースシャトルの標準的な軌道では南大西洋上空を一日6回通過するので乗務員はその際大量の放射線を浴びるという。超音速機コンコルドでは1時間平均で10マイクロシーベルトの放射線を浴びる。ロンドンからNYCで35マイクロシーベルト、年間飛行時間は100時間に制限されていた。民間飛行機はコンコルドの半分ほどの放射線を浴びるというが、飛行時間が長いため浴びる放射線量は同じだという。ボリビアのラパスで暮らす100万人の住民は年間2msvを継続的に浴びているが、その影響調査は行われていない。イギリス南西部の山岳地帯には年間7msvの山地があり人も住んでいるが問題にはなっていない。低放射線量の健康被害の調査はできていないのだろうか。

太陽嵐のピークといわれる2012年にはどの程度の放射線、そして電子機器への影響があるのだろうか。そしてWebなどでも話題になっている50年位に一度という太陽嵐のピークでもあると言われる2012年、150年前江戸時代の1859年にも太陽嵐が起きていたという記録もある。現代社会におきれば通信、コンピュータシステムにどのような影響があるのか、予測できるのだろうか。
人間はどこまで耐えられるのか (河出文庫)

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