意思による楽観のための読書日記

バカ丁寧化する日本語 野口恵子 ****

問題は現在日本の謙譲語、尊敬語、丁寧語の使われ方とマジョリティはどう変化していくのか、という問題である。
1. 「させていただきます」の多用。典型的なのは政治家、「私は皆様にお訴えをさせていただきたいと思うわけであります」 この一文に多くの問題があるという。政治家は偉そうに威張っている、と思われたくないために謙譲表現である「させていただく」を使っているのだが、訴えることに対する聞き手からの許可を得ようとしているわけではない。丁寧の「お」をつけているのだが、謙譲表現に丁寧語を付加するのは変である。さらに不要な「を」をつけてさらなる丁寧表現をしようとしていておかしい。思うわけでありますはさらに不要、無駄を削れば「私は皆様に訴えます」である。
2. 尊敬語と謙譲語の不適切な組み合わせ。話をしているお客と店員、そこにはいない店長、という状況で「あいにく店長は出張中でおりませんがもう戻る予定です。お客様、よろしければお待ちいただき、お目にかかりますか。」せっかくうまく謙譲表現していると思ったら、最後にダメにしている例である。さらに日本語の不備を指摘している。それは相手の配偶者を指す場合に、ご主人や奥様、という男女不平等表現をしたくないケース。適切な日本語がない。
3. 「ちょっと待ってもらって良いですか」 これはちょっと待ってください、と言う意味でTVでもよく耳にする。ちょっと貸してもらって良いですか、と相手に言われたら、これは自分に貸して、と要望しているのか、隣の人に貸してもらうことを私に許可を求めているのか、文章からはわからない、状況判断が必要、と言う例。待ってください、の間接表現なのである。
4. 言葉は時代と共に変化する、関西の「さ入れ」。関西弁で作らせていただきますは「作らしてもらいます」、ところが今は「作らさせてもらいます」が標準になってきたという。桂米朝なら前者だろう。「働かさしてもらう」「「行かさしてもらう」「書かさしてもらう」。
5. TVの芸人やバイト先のマニュアルの影響度は大きい。 3の「ちょっと待ってもらって良いですか」これのどこがおかしい、と思う若者が多いという。「お会計はレジの方でお願いします」これのどこがおかしいか。会計におは不要であり、レジには方はいらない。「いらっしゃいませ、こんにちわ」こういわれてお客としてうれしいのだろうか。

この本を出張する飛行機で読んでいたのだが、飛行場や機内でのアナウンスや問いかけが気になって仕方がなかった。
■羽田空港で「持ち込み手荷物は一つまでとなっております」一つまで、というのはゼロか1だから一つまで、と言っているのか。なっておりますとは、そのルールを決めたのは航空会社ではないのか。
■荷物検査場で、「もう一度通させていただいてよろしいでしょうか」通してよろしいでしょうか、で十分だ。
■席についてアテンダントから「新聞の方は大丈夫ですか」 新聞は読まれますか、の方が良いと思う。ANAまでファミレス並みか。
■飛行機から出ようとして「ちょっとお待ちいただいてよろしいでしょうか」 うーん、これは状況次第、強引に進もうとする客には有効な「慇懃無礼表現」というケースもあると言う気もするが、通常なら、ちょっとお待ちいただけますか、で十分である。

確かに、丁寧化が過ぎるという気がする。
バカ丁寧化する日本語 (光文社新書)

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