意思による楽観のための読書日記

いったい、この国はどうなってしまったのか 魚住昭 斎藤貴男 ***

「憲法96条見直し」「武器輸出三原則見直し」「集団的自衛権の内閣による解釈行使」「靖国神社への集団参拝」、いったい、この国はどうなってしまったのか、とこの本のタイトル通りのことを感じる毎日である。安倍晋三首相は日本を「戦争が出来る国」にしたいのか。太平洋戦争の反省は何だったのか。首相は直接選ばれたわけではないが、こうした政治家達を選んでしまった私達とマスコミの責任も重いと思う。

本書は2003年3月に発刊されているが、その時にも小泉、福田、安倍というラインで同様の動きがあった。この時には時の野党の動きや経済の状況、自民党内の争いなどにより決定的なところまでは行かなかったが、今回は野党は弱体化し、経済の状況はリーマンショック以降の立ち直りに金融緩和により少しの光が見え、自民党内の動きは殆ど見られない。国民に、こうした動きはどのように映っているのか。経済が上向きだからもう少し安倍晋三にまかせてみようという人達が本当にマジョリティなのだろうか。

オバマ大統領が来日して、安全保障分野では自民党が希望する共同声明が発表された。尖閣が安保条約の適用範囲であること、集団的自衛権の行使にアメリカも支持をすること、大きくはこの二点であろう。アメリカの意志はこのとおりだと思うが、ここにきて、あのアーミテージさんが、「日本国民の支持を得た上で集団的自衛権の行使を進めるべきである」と発言している。NYTimesやワシントン・ポストも同様の懸念を示している。欧州のメディアも同様の論調だ。慰安婦問題に関しては、「人道的観点からは決して繰り返してはならない残虐な行為であり、強い反省が求められる」というのがアメリカのマジョリティの見方である。こうしたことを国民はどのように感じているのだろうか。また、現政権は自分に都合の良い所ばかり見ようとしてはいないか。

ドイツでは、津波から原発の大事故を起こしてしまった日本の状況を見て、原発廃止をメルケル首相主導で決め、圧倒的な支持を受けた。そして日本が原発をやめないどころか輸出までしている状況を見て、「日本人はいったいなにを考えているのか」という意見がマジョリティだという。強いナショナリズムを隠そうともしない安倍政権に対しては多くの欧州の政権やメディアも警戒感が強い。

新聞を読むとき、一面に何が掲載されているか、はマスコミとしてその時に何が一番重要だと思っているかを示しているはずだと思いながら読む。NHKの7時や9時のニュースもしかりである。本書で指摘されているのは、2002年当時もてはやされた多摩川に現れた「タマちゃん」が一面を飾ったその日、イラクでは米による単独攻撃が行われようとしていた。東電は損傷隠しをしていた。不審船の周辺で地対空ミサイルが見つかった。このような見出しがあるのに「タマちゃん」が一面か、という指摘である。癒やしもタマには必要だと思うが、優先度判断は国民の感覚と合致していたのだろうか。最近、日本はほんとうに良い国だ、ということを様々な視点から伝えるバラエティや特集番組が増えてきているような気がするが気のせいだろうか。

自民党も国民も見たいものだけ見て、見たくないものから目を背けようとしてはいないか、じっと新聞報道やテレビニュースを見て行きたいと思う。


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