分かりやすく非常によくまとめられ示唆に富む外国人をお連れしての京都案内ガイド。筆者は寿司店を営む通訳案内士で京都ハイヤットリージェンシーご推奨だという。ポイントは次の通り。
1.固有名詞を使うときは注意。将軍の名前は”Tokugawa"だけにして足利は徳川の前の将軍、義満は”The founder of the Golden temple”、神社に祀られている祭神や寺院の開山開基なども積極的には言わない。逆にお客様の国の固有名詞はあえて引用する。
2.天皇と将軍は象徴的な王様で将軍は行政のトップ。天皇の起源はその存在が海外の書籍に記述されハッキリしている5世紀半ば、古代中国の書籍に登場する倭の五王あたりから、応神、仁徳あたりからと説明する。将軍も家康の説明を軸に分かりやすく。
3.建物の説明は事実とその歴史を説明、暗記に頼らず広さや高さもその規模になった根拠や歴史上の位置づけも示す。つまり日本歴史を大局的な見地で捉えて説明すると理解されやすい。日本建築の知識も少し。瓦葺きと茅葺き、檜皮葺、破風、唐破風、寝殿造り、書院造り、数寄屋造り、浄土式庭園、枯山水、池泉回遊式庭園。自分が理解、納得できていないことは説明しない。
4.ガイドする相手の体調や興味を気配りする。知っていることを話すのではなく、興味がありそうなことを聞いてくれる意欲がある人に話す。段差の有無、車からメインスポットまでの距離、かかる時間なども重要な情報。
5.小道具も重要。例えば「五山の送り火」は8月16日の夜以外はただの山、説明するならイメージしやすいようにラミネート加工した画像を用意する。
6.予習はする。例えば二条城、建設された1603年には家康は61歳、シェイクスピアは39歳、イギリスではエリザベス1世が亡くなりジェームス1世が即位した。清水寺や東寺なら京都遷都と坂上田村麻呂、空海の、金閣寺なら義満が西園寺家から買い取り改築した1397年のエピソードを説明する。
7.基本的な数字は頭に入れておく。京都にある寺社は3300、京都市の人口は147万人でモスクワより少し多い。仏教伝来は552年に学問として、平安遷都は792年奈良時代の唐文化の模倣から日本文化の芽生え、1603年は江戸幕府樹立で朱子学をベースにした秩序社会形成、1868年は明治政府発足で西洋文明導入と神道基盤の日本的伝統形成、1945年第二次大戦終戦で非軍事化、民主化、生活様式のアメリカ化、現在の憲法発布。
8.神道と仏教。神社は神話系、天皇先祖系は山の際に、怨霊鎮魂系は非業の死を遂げた人物の霊を鎮めるため市中に、英雄系は歴史上の有名人を祀る、に分類、寺院は密教系で五重塔、絵馬、お守りなど現世利益、念仏系は民衆救済で浄土信仰、禅宗は座禅による悟りを目指し、枯山水、石庭、茶の湯、生花などの現在の伝統文化につながる、と分類。
9.仏像は如来、菩薩、明王、天の序列と釈迦如来、阿弥陀如来、観音菩薩、地蔵菩薩、不動明王程度は説明。多神教だから種類も多く、仏教本来の如来と菩薩を上位に、他宗教から帰依した明王や天を下位に位置づけた。アレキサンダー大王東征で精巧なギリシャ彫刻の技術がガンダーラ地方に伝わり仏像が彫られるようになった。
10.日本の年中行事と寺社との関係も興味を持たれる。歳神さまが滞在するお正月、豆まきと節分・立春、バレンタインデイとチョコ、ひな祭りと人形・宮中の装束、子供の日と武者人形・鯉のぼり、七夕と短冊・笹だけは東南アジア諸国でも、五山の送り火と護摩・先祖供養、地蔵盆と子供、ハロウィンと渋谷の騒動、クリスマスとパーティ、お宮参り、七五三、成人式、結婚式、葬式などなど。
11.町中でも見かけるもの。鳥居は漢字圏の人になら漢字「門」、竹矢来、地蔵、だるま、招き猫、フクロウは不苦労、カエルはお金が帰るから、団子と八ツ橋、提灯、暖簾、朱印帳などなど。
あとは慣れと経験。