三体世界は地球より遥かに優れた科学と技術力を持つ文明だった。羅輯は三体が送り出した地球侵略のための艦隊が地球に辿り着く前に、黒暗森林理論にもとづいて三体世界の座標を全宇宙に向けて発する脅迫により地球を救った。羅輯は、三体世界による侵略計画に対抗するための「面壁計画」により全人類より選ばれた面壁者。実は面壁計画と同時に、侵略者に対してスパイを送り込む計画が進んでいた。人類のスパイとして選ばれたのが孤独な男、雲天明。その雲天明に若い頃から声をかけ続けていたのが、後に航空宇宙エンジニアとなる程心。程心はエンジニアとして宇宙エレベータである「階梯計画」の実現に貢献する。
そして、面壁者である羅輯に代わって次の面壁者として程心は選ばれたのだが、三体世界から送り込まれた智子(ソフォン)はこのタイミングを狙っていた。引き継ぎが行われた直後、地球から全宇宙に向けて三体世界の位置をメッセージとして発する仕組み「黒暗森林抑止」は三体世界から送り込まれた水滴により破壊されてしまう。三体世界の侵略艦隊を抑止する仕組みは亡きものとされ、三体世界からは新たな侵略部隊が送り込まれた。その速度は最初の艦隊よりも遥かに速かった。程心はなぜ抑止システムを発動しなかったのだろうか。地球と三体世界との共存を願う心があること、三体世界と智子は読み切っていた。三体世界は羅輯から程心への引き継ぎのタイミングを何年も前から狙っていた。先行部隊により支配され始めた地球人類は、オーストラリア大陸にのみ生存を許されることとなり、移住が始まると多くの人類は相争い合うこととなる。
その頃、太陽系の外れには二隻の宇宙船がいた。そこにも監視者である水滴はいたのだが、四次元空間出現により水滴は無害化され、地球の予備機として宇宙船に搭載されていた黒暗森林抑止システムが発動され、再び三体世界からの侵略は抑止される。二隻の宇宙船は英雄となり、一部の乗組員は宇宙に移動することを決意するが、多くの乗組員は再び地球への帰還を選ぶ。地球ではオーストラリアに集められた人類の解放が始まる。しかし、その状態が長く続くことはない。黒暗森林抑止システム発動により、三体世界と地球の座標情報は全宇宙に向けて発信されてしまったのだから、黒暗森林理論によれば、いずれは新たな侵略者、攻撃者が現れるはずだった。その時は予想よりずっと早く、そして別の形で現れた。恒星系ではなく宇宙空間からの攻撃により三体世界の恒星が破壊され、三体世界の惑星も同時に葬られた。三体世界は、侵略艦隊以外生き残りはいなくなってしまった。宇宙空間には遥かに離れた恒星系を破壊できる侵略者が三体以外にもいること、つまり黒暗森林理論が証明されたことになった。
地球では、次は自分たちの番だと、可能な滅亡回避手段を模索し始める。地球に残された智子は、程心と羅輯に対して回避手段はあると伝えるが、その具体的方法は教えない。そこに、三体世界に送り出された雲天明からのメッセージが出来する。その直後、智子は地球上から消滅、雲天明と程心、二人の関係と雲天明からのメッセージが、宇宙全体の運命を左右するかもしれない。ここまでがIIIの上巻。