意思による楽観のための読書日記

氷紋 渡辺淳一 ***

小説の最初から結末を予感させる描写がいっぱいである。

大学医学部教授の娘だった有己子、将来を嘱望された研究員諸岡敬之と結婚したのが7年前、一人娘の真記は小学一年生である。何の不満もないような生活だが、有己子は結婚が決まったときに当時夫の同期生であった久坂に抱かれている。その久坂は天塩にある病院に赴任しているというのだが、その母が死んだので久しぶりに札幌に帰ってくると夫から伝えられる。

有己子は連絡をしようとするが夫の同期生であったという人の母の葬儀に顔を出す正当な理由が見つからない。葬儀が終わった後思い切って連絡を取る。そして天塩に帰るという久坂を札幌駅まで見送りに行き、久坂に誘われて再び抱かれる。

有己子は下腹部に激しい痛みを感じ、夫に診察してもらうと尿管結石だという。入院と手術を予定しているときに、久坂が一月ほど同じ病院に出張してくることを知り、有己子はとまどうがあいたい気持ちは隠せない。夫の執刀により結石除去手術は成功する。退院の日まで久坂は同じ病院にいながら見舞いにも来てくれない。

夫は結石手術だけではなく有己子に相談もなく不妊手術までしてしていたことが後からわかる。昔二回目の妊娠をしたときにひどい悪阻で二度と妊娠はしたくない、と言っていたからだと夫はいうが、自分に相談なく不妊手術をした夫が許せない。夫を問いつめると、久坂への思いを結婚当初から知っていたといい、手術を久坂にも見学させたのだといった、そしてそれが夫の久坂への仕返しだったことを知る。

有己子の気持ちは夫から離れているが、久坂はクールである。

不倫小説であるが、描写が客観的、空からみている医者が患者の心の動きを解説するような不倫小説。有己子はこの先どうなるのであろうか。

氷紋 (講談社文庫 わ 1-4)

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