意思による楽観のための読書日記

血の騒ぎを聴け 宮本輝 ***

今はもうあまり書かない、という宮本輝のエッセイ集である。小説のイメージとは少々異なる強烈な氏の言葉が連なる。

印象的だったエピソードが、「音を立てて崩れる」と題されたお話。友人の大学生のお嬢さんを氏が小説を書くための調査サポート員としてアルバイトで雇っていた。彼女の仕事ぶりは丁寧、迅速で、中学生時代から彼女を知る宮本輝は彼女の働きを認め、一人の青年に引きあわせたという。その青年のことも高校生の頃から知っていて誠実なしっかりした子だと思っていた。青年とその両親に彼女を紹介して、婚約までこぎつけ、結婚式の日取りまで決めた時、青年の父から断りの電話をもらったという。二人が揃って宮本輝の自宅に挨拶に行った日に、父親は興信所に調査を依頼していたという。そしてまさにその日に、彼女は妻子ある男と合挽きをしてホテルに入ったというのである。調査結果にはホテルを出る二人の写真まで添えられ、彼女とその男は4年もの期間お付き合いをしていたという。宮本輝の手伝いをしていた頃とも重なるため、なにかが音を立てて崩れるような気がした、という話し。女性は見かけによらない、ということである。氏の小説に時々現れる見かけは清楚で純粋そうな娘さんが不倫をしているという設定はこの経験から着ているのだろうか。

宮本輝の「いなかもの」の定義が面白い。
1.玄関を少し開けただけなのに、台所まで踏み込んでくる輩。
2.非はいつも相手にあると考える輩。
3.恩を仇で返す輩。
4.人の幸運をやっかむ輩。
5.なにかにつけて「俺がやってやった」と言う輩。
6.座る場所ではない場所で座る輩。
7.自分よりも弱い相手をいじめる輩。
8.お葬式に体操服のような服装で参列する輩。
9.求めてもいない相手に贈り物をしてそれに対する感謝が少ないと怒る輩。
10.自分が贈り物をされてありがたくないと相手を罵倒する輩。
11.自分と肌が合わない相手に冷たくする輩。
12.人は失敗をするものだということを知らない輩。
13.人生の大事を感情で対処する輩。
14.ケチ。

ふーん、デリカシー、自慢たらし、自己弁護、姑息、卑怯者、などかな。

好きな作家、水上勉、小林秀雄、宮尾登美子、田辺聖子、黒井千次、山田詠美、など、次は短篇集を読んでみよう。



読書日記 ブログランキングへ

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「読書」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事