具体的方策示すのは共産党だけ
物価高騰から暮らしを守るためにも、30年も続いた経済の低迷から抜け出すためにも、大幅な賃上げが必要です。賃金そのものは企業と労働組合などとの交渉で決まるため、政府が押し付けることはできません。しかし、最低賃金は違います。政治の責任でしなければならないのは、最低賃金を引き上げることです。この点で各政党の態度はどうなっているか、選挙公約文書などをチェックしてみました。
全国どこでも1500円めざす日本共産党
日本共産党は「最低賃金を時給1500円以上(手取り月額20万円程度)にすみやかに引き上げ、地方格差をなくし全国一律最賃制を確立します」(総選挙政策)。
今年度の地域別最低賃金は、最高が東京都の1163円、最低が秋田県の951円です。伸び額は50円から最高は徳島県の84円でした。今後すべての地域で今年の徳島県なみに増やしても、全地域で1500円以上になるのは2031年ですから、もっとペースを速めることが必要です。
日本共産党の政策は「最賃大幅引き上げのカギは、中小企業への直接支援です」としています。政府は、黒字企業に対しては大企業も含めて「賃上げ減税」による直接支援をしてきましたが、赤字企業の多い中小企業には支援が届きません。赤字企業にも届くような支援が必要です。
日本共産党は、そのために必要な財源について「大企業の内部留保に時限的に課税して10兆円の財源を確保」することを提案しています。具体的には、アベノミクス以降に増えた大企業の内部留保のうち、設備投資などに使われずに「余剰資金」となっている部分に臨時の課税を行います。
この提案は、賃上げにも新たな投資にも使われずに、日本経済全体にとっても「お荷物」となっている内部留保を有効に活用するものであるとともに、中小企業が賃上げを進めにくい大きな原因が、取引先大企業が賃上げ分の価格転嫁を認めようとしない点にあることをふまえて、その転嫁拒否によって膨らんだ大企業の内部留保を、賃上げ財源に還元させるという意味でも、大義あるものです。
最賃でも「手のひら返し」の自民党―地方創生にも逆行
石破茂首相は、自民党総裁選の公約文書で、最低賃金を「2020年代に全国平均1500円」「全国一律」にするとしていました。1500円については「2030年代なかば」としていた政府の目標を前倒しするというものです。その後も、首相は口先では「1500円」と言ってきました。
ところが、肝心の総選挙の自民党の政権公約には、いくら探しても「1500円」「全国一律」という文字はありません。最低賃金については「引き上げの加速」というだけで、具体的な目標は一切ありません。石破氏の発言はどこへやら。この点でも「手のひら返し」となっています。
与党でも公明党は「5年以内に全国加重平均1500円の達成をめざす」(衆院選重点政策)としています。ただ、「全国平均」ですから、東京などの大都市は1500円になったとしても、地方は取り残される可能性が大です。
また、与党の政策には、最賃引き上げ実現のために政府が行うべき具体的方策がありません。自民党の公約は「成長と分配の好循環」「省力化投資の促進、価格転嫁対策の更なる徹底」をいうだけ。通常の賃上げならともかく、短期間で思いきって最低賃金を引き上げるには、全く不十分です。
石破首相は、賃上げのための中小企業への直接支援について「日本は全体主義国家ではないので」などと言って拒否しています。しかし、過去にはフランスや米国でも支援を行ったこともあり、いまの日本でも、岩手県や徳島県では直接支援を決めています。そもそも、政府自身、トヨタ自動車には賃上げ分の4割もの減税で直接支援をしておきながら、「中小企業にはできない」という理由はありません。
石破首相は「地方創生」を看板政策にしていますが、そのカギは全国一律最賃制であり、地方では中小企業の労働者が8割を占めることを考えれば、中小企業への賃上げ支援が欠かせません。首相の姿勢は「地方創生」にも逆行するものです。
国民民主は「1150円」、維新は「最低賃金」の政策なし
国民民主党の政策パンフレットには「『全国どこでも時給1150円以上』を早期に実現します」となっています。「早期」というのがいつまでかは不明で、今年と同じ50円ずつ引き上げれば、現在最低の地域でも今回選出される衆院議員の任期内には1151円に達してしまうことを考えると、「今以上の努力はしない」という宣言のようです。
日本維新の会の政策パンフレットには、いくら目を凝らして探しても、「最低賃金」という言葉すら出てきません。最低賃金などの国の規制は撤廃して、賃金の額は企業に任せればいいというのであれば、重大です。
他の政党は、ほとんどが「1500円」ないし「1500円以上」を掲げています。しかし、中小企業への支援をどうするのか、その財源を含めて提案している政党はありません。
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