昨日は、3年振りに大学時代の友人らと、高田馬場で昼酒を呑み交わしました。
その中の一人が、「もう読んだから!」と言って、鞄から本を10冊ほど出して、「好きなのを持って帰って読んでくれ!」と皆に手渡してくれました。私の手元には、萩原慎一郎の『歌集・滑走路』が残りました。
一夜明けて、宿酔で朦朧な意識で手に取って読み始めると、たちまち言葉の礫に正気を覚まされ、目に涙さえ浮かべていました。
私立の中学高校でいじめにあい、17歳で出会った短歌を唯一の支えに、通信制大学・非正規雇用と悪路を辿りながら、自ら編んだ第一歌集の出版直前に32歳で自死した、萩原慎一郎という真綿のような感性に打たれました。
〈僕も非正規君も非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる〉
〈夜明けとは僕にとっては残酷だ朝になったら下っ端だから〉
〈消しゴムが丸くなるごと苦労してきっと優しくなっていくのだ〉
〈遠景になっている恋二十代なのになあって夕陽に嘆く〉
〈靴ひもを結び直しているときに春の匂いが横を過ぎゆく〉
〈風景画抱えて眠るようにあああの青空を忘れたくない〉
〈今日という日を懸命に生きてゆく蟻であっても僕であっても〉
〈抑圧されたままでいるなよぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ〉
〈きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい〉
こんな本を読んでいたなんて、KY君、君をまた見直したよ⁉︎
【追記】
2019年NHK-BS『平成万葉集』でも紹介されていました。