お手伝い

ネット界に手を染めて、はや５年。
一時の夢中になった時期も、落ち着いてゆったりとパソコンに向かう日々である。
ネットを始めてよかったな、と思えるのは思いがけない出会いがあったとき。

ネットの布屋さんを通じて知り合えた方々は、普通の暮らしをしていたなら絶対に出逢うことのなかった方々ばかりである。
ほとんどの方は、私よりも１０歳以上年下の方ばかりで、私の知らない世界、思いがけない発想、心地よい刺激を日々私にくださる。
自分が５０に近づいた年齢であることも忘れ、そんな若いお友達との会話を通して色々と学んでいっていることが何よりも嬉しい。
そんなお友だちのひとり、マーブリさんのお買い物を、私がお手伝いすることになった。
私がこの街で、一番気に入っているお店においていたアンティークのバッグの口金である。
お店で一目惚れした、その口金は普段あまり見かけることのない凝った彫金のものだった。自分が若くて、この口金を使ったバッグを持ってでかける機会が多い人間ならば迷わず買っていたと思う。
私に娘がいたなら、きっと買っていただろう。
そんな話を、マーブリさんとしていたら、ちょうどマーブリさんがお友だちの結婚式に列席するためのバッグに是非使ってみたい、と打診された。
私としては、こんな素敵な口金をお店に眠らせておくのはもったいない、と思っていたので早速、代行でお買い物をして送ってあげた。
マーブリさんの手元に嫁いだ口金は、お店にぶら下がっていたときよりもはるかに生き生きと、本来持っていた気品を取り戻して輝いて見えた。

マーブリさんには迷惑な話だけれど、時折彼女と同じ感覚でものを見ていることがある。
一番驚いたのは、同じ布をみて感じた表現が同じだったということ。
日ごろ、彼女のサイトにお邪魔してその色の魔術師のような、幻想的で美しい色使いのものや、しっかりとした正しい日本語で記される日記に、私は惹かれていた。
そんな彼女と、同じ感覚で、同じ布を見ていたということがとても嬉しかった。
聞けば、本職の画家さんである。
私の周りで、ゲイジュツカらしきひとは、どうも個性が強くて、近づきすぎると火傷しそうなほどの激しいタイプが多かった。
だから、マーブリさんのお仕事を知ったときには、意外な感じと、あああの色使いはやはり本職の方ならではのものだったんだわ、と納得する部分がない交ぜになったような変な感じだったのだ。

いずれにせよ、私が何もアクションを起こさず、ただあちこちのサイトを覗き歩くだけならば、きっと交わることのなかった糸の端。
こんな形で、誰かのお役に立てて、そして田舎町に眠る美しいものに陽の光をあててやれたことに、ささやかな喜びを感じる。
九州が入梅したそうだが、我が家にはマーブリさんから彼女らしい美しい色の贈り物が届いた。
ありがとうございました。