集成・兵隊芸白兵

 平成21年開設の「兵隊芸白兵」というブログのリニューアル。
 旧ブログ同様、昔の話、兵隊の道の話を続行します!

「踏めよ究極、これしかないぜ!」…究極の下半身トレ「四股」について考える(その2)

2024-06-27 10:42:09 | 格闘技のお話
 …すみません、思うところあって(その2)から、メインタイトルを変えました(;^ω^)。
 出典は伝説的アニラジ「青春ラジメニア」(平成元年4月1日~現在も絶賛放送中!)のメインテーマ「青春ラジメニアの歌」3番の一節「聴けよ究極、これしかないぜ」からです。
 四股は調べれば調べるほど、踏めば踏むほど「究極!」と思わされたため、こんなタイトルにしました。
 では、本編です。

 ①では四股で「つながり」を鍛えるというお話をしましたが、「つながり」とは自動車でいえば「電気系統」「足回り」です。
 相撲で勝つためには「つながり」がうまくいくだけでは全く不足であり、自動車でいえば「エンジン」に相当する箇所の開発が必須。
 箇条書きにしますと
①パワーの発露に必要な「大きな筋肉」をよりよくつける
②それら大きな筋肉を、さらに付近の大きな筋肉と連動させる
という要素が必要になるわけですが、以下に述べる理由から、四股はこの2点をまかなう最適解といえます。

 「人体が最大のパワーを発揮するためには何をすればいいか?」
 この答えは、理屈でいえばとても簡単。下記の一言で片付きます。
 「人体が持っている大きな筋肉を連動させること。」
 これについては、今や斯界では超絶有名人になった沖縄空手のエキスパート・山城美智沖縄拳法空手道首席師範も、
「大きな力を発揮するためには、大きな筋肉を連動させる必要があります。小さな筋肉ではいくら鍛えたところで、小さな力しか出ません。」
と常々仰っており、要するにそういうものなんです。
 しかし現実には、ある程度運動をしている人間であっても、「大きな筋肉を意識して動かす」ことができていないことが多く見受けられます。

 なぜ、この単純な理屈を実現することが難しいのか?
 これまた答えは単純。「大きな筋肉」は、大きな力が発露できるものであるいっぽう、意識して動かすことが難しいからです。
 「力こぶを作ってください」といわれてできない人はいませんが、「広背筋下部を動かしてください」とか、「大胸筋を動かしてください」と言われてできる人はそうそういません。

 大胸筋を鍛える代表的なトレーニングといえばベンチプレスですが、素人さんのベンチプレスは腕(上腕三頭筋あたり)か肩(三角筋前部)にしか負荷が入っていないことが多く見受けられます。
 広背筋を鍛える代表的なトレーニング・ケーブルロウイングも同様で、多くの人のロウイングは、負荷が腕(上腕三頭筋)や肩(三角筋中部または後部)にしか入っていないことが、はっきり見て取れます。
 こうした「なんちゃってベンチプレス」「なんちゃってケーブルロウイング」が示しますように、ろくに体を動かさない多くの人は「大きな筋肉を意識して使うことは、実はとても難しい」ということにすら気づけていません。
 事程左様に、「大きな筋肉を意識して動かす」ことは難しいのです。

 その問題を解決するためのアプローチ方法はさまざまに存在しますが、いわゆる「レジスタンストレーニングの理屈」…つまり、「こうした運動にはあの筋肉とこの筋肉が必要だから、あの筋肉を意識して、フォーカスして、その後コーディネーションをして…」みたいなアプローチをすると、はっきり申し上げますが、理屈倒れになって何も身につかない可能性が大です。
 実は筋の良い武道や格闘技に「型」が存在する理由こそ、ここにあるのです。

 「型」は武道・格闘技において、ものすごく役に立つことをものすごく単純な動作に溶かし込んだ「圧縮ソフト」みたいなものであり、それを修行者が反復することで「解凍」を促す、という点にあります。
(ちなみに単純な動作を理屈に依らず反復するというのは、実は脳科学の観点においても「気づきを得る」「ひらめく」ということにおいて重要なファクターであったりします。昔の人は経験則でそれを知っていたのですね。)
 相撲に少し詳しい人は誰でも知っていることですが、実は四股も相撲という格闘技における「型」のひとつ(相撲基本体操における第三運動・「四股の型」)だったりします。
 
 山城先生の沖縄拳法において「大きな筋肉をつなげて、大きな力を発揮する」という極意を凝縮した「圧縮ソフト」と位置付けられているのはナイハンチですが、相撲における同じ目的を担った圧縮ソフトこそが、四股なのです。
 
【四股で鍛えられるものその③ 「大きな力」のキーとなる中殿筋と、それを鍛えることの困難性】
 別にお金になるわけでもなんでもないので、もう答えから先に言ってしまいますが、四股がダイレクトに鍛えてくれる「大きな力」発露の最も重要な筋肉は中殿筋です。
 
 中殿筋は骨盤を横から支えるようについている筋肉で、起始が骨盤上端、停止が大腿骨の大転子(骨盤にハマっているジョイント部分)。
 役割としては「股関節の外旋」、そこから発展しての「骨盤の中立」。
 「外旋」は中殿筋だけではなく、それを覆うようについている大殿筋(上部)も使用しており、かつ外腹斜筋も連動するという、人体でも最大出力を発揮する動作。単純なダッシュのみならず急激な横移動など、下半身を爆発的に使う動作はすべてこの「外旋」がメインであり、この動作をバカアホスポーツ指導者は「下半身を使って投げろ!」とか「下半身を使って打て!」と表現するわけですな(;^ω^)。
(ちなみにこの反対動作となる「内旋」は、強力な動作である「外旋」のリセット機能であるため、中殿筋と、その奥底にある小殿筋だけが用いられます。)

 ここまで読むと「そうか、じゃあ大殿筋上部と中殿筋を鍛えれば、スゴい下半身が手に入るんだ!」…理屈ではそうです。単純な理屈では…しかしその実現は、非常に難しい…。

 中殿筋はボディビルダーを正面から見たとき、ケツが横に張り出しているあの部分であり、ボディビルの大会では「逆三角形の体型」を作り出すのに欠くべからざる部位であることから、ビルダーは当然、この「ケツの横の張り」を出すために鍛えるわけですが、その方法は驚くほど多種多様であり、「ケツの横の張りを出すには、スクワットだけしときゃいい」というビルダーはおそらく、誰一人いないでしょう。
 このくだりだけでも「殿筋群は鍛えにくい、とくに中殿筋はスポットで鍛えにくい」ということが判って頂けると思います。

 ここから先は「殿筋群を鍛える」に関する余談です。興味ある方だけ読んでみて下さい。

 わが国における多くのスポーツ指導者は、「そのスポーツ競技に勝つことを特化させた指導者」でしかないことが多く「競技に必要な筋肉をよりよくつける、あるいは筋力をよりよく上げる」という具体的手法をほとんど知りません。むしろその分野については、スポーツ競技という手垢がついている関係上、「ヨカタ以下」と言ってもいいでしょう。
 そうしたバカアホ指導者が、「殿筋群はスポット強化が難しい」ということも知らず、「選手の下半身を鍛えるんだ!」と息巻いた場合、だいたい2つの「間違った道」を選択します。ひとつは「走り込み」もう一つは「中途半端なレジスタンストレ」。
 ちなみに答えから言いますと「どっちも間違い!ペケ!」。その理由を以下に掲げます。

 「走り込み」のほうは太古の昔から、無能なスポーツ指導者が大好きなものとして有名ですね(;^ω^)。
 確かに走ることは下半身の各種筋群を使用します。しますけど…無能な指導者の皆さんに、絶望的なお話をひとつしておきましょう。

「『走る』という動作は腱弾性によるところが極めて大きく、『走る』という動作に慣れれば慣れるほどその色合いは強まり、『筋肉を鍛える』あるいは『消費カロリーを増やす』ということから遠ざかっていく。
 殿筋や脚部の筋肉を増やすならレジスタンストレ、消費カロリーを増やすなら『腱弾性』の関与が少ないウォーキングのほうが余程マシ。」

これは各種の小むつかしい文献を読みあさり、筋トレ系Youtuberのチャンネルをいくつも視聴し、自分で人体実験をして得た結果なので、間違いありません(キッパリ)!
 走り込みの主目的につき、それが「競技の特性として、走ることが必須だから」である場合には全然アリですが、それが「下半身全体を鍛えることだ」と断言するヤツとは、絶対に関わり合いにならないほうがいいです(キッパリ)!きっとあなたが不愉快な思いをしますから。
 
 次に「中途半端なレジスタンストレ」。これは平成二桁以降に市民権を獲得した、比較的新しいものですが、「中途半端で効果がないレジスタンストレ」をやっているのは、昨今のプロ野球が顕著ですね(;^ω^)。特に読売ジャイアンツの選手…。

 筋肉をつける、あるいは筋力を最大限に発揮する場合、一般には「ウェイトトレ」と呼ばれる各種レジスタンストレーニングを避けて通ることはできません。
(それをちゃんと頭&体でわかりたかったため、ワタクシも4年ばかりガチでウェイトをしていました(;'∀'))
 しかし、「筋肉を本気で覚醒させる」というのは本来生易しいものではなく、目的が筋量アップであるにせよ筋力アップであるにせよ、常に高い緊張感&ヘビーなウェイト(または高回数)が必須となります。
 よくバカなプロ野球選手が、ヘラヘラしながら「レジスタンストレらしきもの」をしている姿が見受けられますが、ヘラヘラしながらできる程度の回数・負荷では筋量・筋力のいずれも得ることはできません。得られるのは「重いものを持ち上げたであろう満足感」だけです。
(これはプロ野球だけでなく、各種スポーツ界でもほぼ同様)
 そのわりに「筋トレのあとは、栄養補給と休養が大事」とばかりに大飯を食って休憩ばっかりしているわけで…ちなみにこれが、ジャイアンツの選手が「あらゆる意味で読売巨人病(;^_^A)」になる原因であったりもします。

 話がだいぶ横にそれましたが、④では「なぜ四股の動作なら、中殿筋にダイレクトに刺激が入るのか?他」についてお話しします。


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (老骨武道オヤジ)
2024-07-04 20:27:21
四股についての緻密な解説ありがとうございます。私はブログ主様のように“専門的なウェイトトレーニング”をやった訳ではないので偉そうなことは言えませんが、40を過ぎてからド素人なりにバーベルを相手に職場の体育館にてトレーニングを週3回以上やった経験から「自分をそれなりのパワフル空手マン」に仕上げた自負があります。「筋肉は嘘をつかない!伝統空手にパワーがつけば最強になる!」を実感いたしました。ここで試合に勝てる空手と、実戦にて無敵に振舞える空手のギャップにも自問自答いたしました。結論は実戦にて無敵に振舞える空手の追求こそが、ガタのきた老骨空手マンが唯一出来る道と私なりに悟りました。さて、四股踏みは片膝に致命的な障害のある老骨ジジイには無理ですが、試合に勝ち抜く現役選手諸君には有効な鍛錬がと思っています。空手のトーナメント大会、緒戦は試合と試合の間は空いていますが、ベスト8、準決勝、決勝、優勝するまでに精鋭選手との激戦が続きます、この激戦を勝ち抜くのに下半身の安定が必須にて四股踏み鍛錬は有効だと思います。アホみたいな「走り込み」ではなく是非とも若い方たちは四股踏みをされるようお勧めいたします!!
返信する
Unknown (安納 雲)
2024-07-14 16:51:09
中臀筋!効いているのか、動いているのか
わからない部分についてこんなに微細な
レポート お疲れ様でした。(^o^)

なんでも古くから残るものはすごく
ありがたいものですね。
練習しよ:(;゙゚'ω゚'):
返信する

コメントを投稿