徳川慶喜log~徳川と宮家と私~

徳川慶喜家に生まれた母久美子の生涯、そして私の人生。

私・井手純〜大学から帝国ホテル時代⑦〜

2019-06-03 05:00:00 | 日記
その後、何年か経ち、営業部に配属された。

そこにいた部長が、前回の記事で書いた、厚生課長だった。
「くそ!厄介なことにならなきゃいいけどな。」と、思いながらも仕事は頑張った。
与えられた仕事は、さすがに帝国ホテルで、相手の企業は年商一兆円を超える大会社が多く(当時帝国ホテルは年商500億円)簡単にはアポイントメントが取れなかったのだが、ホテル業界の御三家でもあったのでその点では余り苦労は無かった。

そんな折、今は亡き高円宮憲仁親王殿下にお子様が誕生された。
殿下とは何度もお会いしており、数年前に私がカナダ大使館に出向していた時、カナダの大学に留学をされていた。
その時、大使公邸に二晩お泊り頂き、お世話をさせて頂いた。
殿下は私がいたことにとても喜んで下さり、大変気を遣って下さった。
その様な事もあり、部長に「お子様がお生まれになられたので、シャンパンのドンペリニヨンをお届けしたいのですが」と申し出るとなんと「お前それを持って行って幾らになるんだ!」と言われた。

もう、彼には何を言っても無駄だと思い、諦めた。
帝国ホテルと言う素晴らしい金看板がありながら、悔しい思いだった。
その後、彼に相談する事は無かった。

しかし私は大昔からの因縁もあり、帝国ホテルは大好きだった。
最後まで働けたことには感謝しており、幸せだったと心から思っている。


徳川おてんば姫(東京キララ社)