徳川慶喜log~徳川と宮家と私~

徳川慶喜家に生まれた母久美子の生涯、そして私の人生。

私・井手純〜カナダ公邸出向⑥〜

2019-06-09 05:00:00 | 日記
カナダ公邸出向中、忘れもしないショッキングな事があった。
その日は20名の夕食会であった。
各国の大使ご夫妻をお呼びしてのフレンチのフルコースに和食も出すメニューだった。

大使ご夫妻のランチが済み、かたずけが済んでから、夕食会のセッティングにかかった。
まずテーブルを組みテーブルクロスをひく。
真っ白なリネンの糊がきいたクロスを広げてテーブルにひくのだが二人でやれば僅か5分で引ける。
だが一人でやるとなると、20分はかかる。

ショウプレートを置き、シルバー(ナイフフォーク)をセット、グラスは一人5つ。
それも一つずつ湯煎で磨く。
銀のキャンドル建てを(キャンドル各3本)3台置きナフキンを20人分折る。
今日はメニューに和食も有るので箸置きに箸をセットし、そして最後に醬油差しを5台置いて終了となるのだが、最後の一台を置くときに手を滑らして醬油差しがひっくり返った・・・・・・。

真っ白なクロスに無情にも真っ黒な液体が容赦なく広がった。
暫らくは声も出ず、茫然自失であった。
少しして”ヤバイ、間に合わない”15分程身体が動かなかった。
どうしよう、どうしよう、と思いながら、自分ではあまり覚えていないのだが、兎に角かたずけをしている自分が居た。
新しいクロスを取りに行き、また一からセッティングを始めた。
まあ、とにかく間に合った。

後で考えると5時間は掛かった。
よく間に合ったと今でも驚いている。
何事も一人ですると言う事の大変さを本当に痛感した。


徳川おてんば姫(東京キララ社)