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今日の筆洗

2016年06月21日 | Weblog

「日本侠客(きょうかく)伝」「仁義なき戦い」などの脚本家、笠原和夫さんが娯楽映画のシナリオを書くコツを教えている。題して「シナリオ骨法十箇条」。これを守れば、観客の関心をつかんで離さぬシナリオができあがる。「骨法その三」は【オタカラ】である▼主人公にとって何ものにも代えがたいほどに大切なモノのこと。これが敵味方の間でサッカーのボールのように奪い奪われていると、ドラマの核心が観客に理解されやすくなる。<とりわけアクション映画の場合、「オタカラ」は必須>と書いている▼金塊は「オタカラ」の中でもとりわけよく使われる。映画好きなら「黄金の七人」「ミニミニ大作戦」などがすぐ挙がるか。その輝き、ずっしりとした重さもドラマのアヤになりやすいのだろう▼造幣局の博物館から金塊が盗まれた事件である。約六千三百八十万円相当、重さ約十五キロと聞けばアクション映画じみていて、手口も気になるが、何のことはない。逮捕された容疑者はその造幣局職員。職場のオタカラに目が眩(くら)んだか▼かつて小判などを製造した金座。職人の退出時は服を脱がせ、髷(まげ)の中やうがいで口の中も検査したと聞くが、今回、こうもやすやすと持ち出されるとは造幣局も随分、ずさんな管理をしている▼動機はFXでの損失と聞く。地味でも、まっとうに暮らす。それこそが本物の「オタカラ」だったのに。