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今日の筆洗

2021年04月16日 | Weblog
 電気で動くかつお節けずり器をつくれないか。発案者の岩下文雄社長は試作を命じた。機械式のハエたたきも思いついた。どちらも技術陣が見事につくり上げてきた。製造コストが五万円、八万円をそれぞれ超え、商品にはならなかったそうだ。昭和三十年代だろう。竹間茂樹著『東芝コンツェルン』にある東芝のこぼれ話である▼会長の石坂泰三は、家庭電気器具のブームを予見し、新製品開発の号令を発していたそうだ。東芝はこの当時、家電などで日本初となる機器を次々に世に送り出している。経営陣の胸中まで、物づくりへの意欲が占めていた熱い時代だったはずだ▼「物言う株主」の厳しい要求や下からの不満の声、ライバル勢力との争い…。現代の東芝経営陣の胸中を占めるものを思えば、古き良き時代の経営者たちも同情したか。社長が辞任する事態にまで至った東芝の混乱である▼危機が終わらない。不正会計の発覚に始まり、原子力事業をめぐる巨額損失、債務超過などときて、物言う株主らの力を得ての再建の途上、今回の内紛だ▼この後、買収合戦が始まりそうだという。終幕の見えない舞台の何幕目かを見ているようである▼「潮満ちわたれ/科学の恵み/わが生む潮/都会に村に」(『東芝百年史』)と社歌にある。科学や技術の光で世の隅々を照らす名門企業のイメージ。また前面に出るのはいつか。