切ったときは、気分がいいかもしれないけれど、後の道のりには、苦労が待っている。なぞかけではないが、世の中にいくつかある。しら、啖呵(たんか)、空の手形に大見得(みえ)…▼同じ列に加えたいわけではない。むしろ拍手を送りたいが、後に続く道のり、やはり厳しそうである。先日の米国主催の気候変動に関する首脳会合で、菅首相が切った温室効果ガス排出に関する「46%減」のカードである▼二〇五〇年の排出実質ゼロ実現に向けた三〇年度の一三年度比の目標だ。国際的にもそれなりに迫力のある野心的な数字であっただろう。大見得か啖呵か。表明する首相には誇らしさがあったという▼気候変動対策に背を向けていたトランプ前政権から、意欲的なバイデン政権へと米国が変わったことで、わが国に求めるものも厳しくなった。目標を厳しくした一因らしい。従来の目標が26%減だったことや経済界に難色を示す声があることからも、困難のほどは予想される▼競争力を損なわないようにしながら、目標達成はできるか。再生可能エネルギーを導入するだけでは及ばないだろう。切り札を切った首相に具体的な筋道はみえているだろうか▼風呂の湯が少なければ、ひざを曲げてつかれ、そうすれば、肩まで湯が来る−。そんな話で欲望のほうを伸縮させよと説いたのは二宮尊徳だったか。社会の側にも、影響は大きそうである。