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今日の筆洗

2021年04月28日 | Weblog
 ライオンを見たことがなかったキツネがいた。初めてライオンを見た時は死ぬほどびっくりした。次に出くわした時は怖かったけれども、初回ほどではなかった。そして、三度目に見た時はわざわざライオンに近寄って、話しかけるほど大胆になった▼「イソップ寓話(ぐうわ)集」(岩波文庫)の「ライオンを見たキツネ」。イソップは「習慣は恐怖をも和らげることをこの話は説き明かしている」と書いているが、恐ろしさを忘れ、ライオンになれなれしく近づくキツネの身が心配にもなる▼もしかして、そのキツネはコロナ禍のわれわれではあるまいな。新型コロナウイルスの対策で、東京都など四都府県に三回目の緊急事態宣言が発出中だが、思ったほど人出は減っていないようだ▼昨年四月、宣言が初めて出た時は繁華街から人が消えたようになったのに比べて今はさほどでもない。三度目とあってはあのキツネのように気が大きくなり、外出自粛にも耳を貸さぬか▼恐怖には慣れただろうが、コロナの恐ろしさに変わりない。コロナによる死者が一万人を超えた。増加のペースはなお高い水準にある。感染力が強いとされる変異ウイルスの拡大も懸念される。今は本気で恐れ、警戒する時なのだろう▼政府の唐突なやり方への不満やコロナ疲れで宣言に背を向けたくなるのは分かるが、大胆になりすぎたキツネをライオンは許すまい。