「うちにね、猫の親子が住み始めたのよ」
書道教室の帰り道、小学2年になった猫好きの甥に話しますと、目を輝かせて「わ~、見たいな~!!!」
「じゃあ、黒猫の親子のお話をするね」
我が家の濡れ縁の下に、黒毛の母猫が、生後間もない子猫1匹連れて暮らし始めた。
1昨年の夏のことですが、黒毛の子猫は、1か月過ぎてもあまり大きくならず、足取りもおぼつかない様子で芝庭で遊び、
「ちゃんと、成猫になれるかな・・・」と心配して、遠巻きで見守っていましたが、
交通事故で死んでしまいました。
今年の春、未だ寒さ厳しいころ、この母猫は子猫1匹産んで、同じ場所で暮らし始めました。
ある寒い日の朝、日陰の冷たい庭石の上に子猫が独りでいて、気になって私が近寄ると、
すぐそばの縁の下にいる母猫は、こちらを「シャー」と威嚇するものの、呼び寄せるなど何もしません。
昼、夫が見ると、子猫はその場に独りで震えていていて、母猫は留守でいません。
夕方、日が暮れて寒さ厳しい中、見かねた夫と従業員が毛布に包んでやりましたが、じっとして動きません。
猫を飼ったことがある従業員が、帰宅の途中、子猫を病院に連れて行くことにしました。
獣医の見立ては、
舌でなめて、目やにの掃除すら、していないから、目が開く時期に、まぶたが開かない、
栄養も排泄も十分でないから、今夜、放置していたら、死んでいただろう、
人が世話しても、手遅れで助からないだろう、とのことでした。
従業員の家族は、温かくしてやり、清潔にして、哺乳瓶でミルクを与え、ガーゼで肛門を拭き、
翌朝の出勤時、子猫はなんとか、命をつないだことを、従業員から聞きました。
甥は、「よかったねー」としみじみ答えます。
「でもね、まーくん、この話には続きがあるのよ・・・」と私。
そして日が高く昇る頃、母猫が庭に戻ってきて、「にゃーーーにゃーーー?」と子猫を探す様子に、
私も夫も、胸を突かれ、言葉もなく、涙がこぼれました。
甥 「母猫の元に、戻してあげたら・・・?」
私 「その母猫に戻すと、子猫は、いずれ、死んでしまうのよ。
今回だけじゃない。
2年前の子猫も、夏になっても小さいままで、毛は薄汚くまばらで、目が見えずよろけて、車に轢かれてしまった。
まあくん、もし、子猫が自分だったら、どうしてほしい?」
甥 「ちゃんと育てることができる人のところで、育ちたい」
私 「そうか・・・
子の命を想えば、母から引き離す方が、いい・・・・
だけど、子を育てられない母であっても、母として、子を想う心がある。
どうしたらよいか、難しい問題だよね・・・」
甥 「うー・・・・ん」と下を向いて黙って歩きます。
私 「それでね、従業員の家族が、毎日世話をしましたが、1週間後、死んでしまいました。」
甥 「悲しいね」
私 「まあくん、猫に限らず、人間の世界にも、親が子育てを上手にできず、児童相談所の発見も遅れて、
死んでしまう子供がいます。
学校の問題は、答えが、最初からある。 だから、簡単なのよ。
だけど、世の中には、答えを出すのが難しい問題がある。そして、それこそが、大切な問題なのよ」
そして、黙って帰路につく二人でした。
書道教室の帰り道、小学2年になった猫好きの甥に話しますと、目を輝かせて「わ~、見たいな~!!!」
「じゃあ、黒猫の親子のお話をするね」
我が家の濡れ縁の下に、黒毛の母猫が、生後間もない子猫1匹連れて暮らし始めた。
1昨年の夏のことですが、黒毛の子猫は、1か月過ぎてもあまり大きくならず、足取りもおぼつかない様子で芝庭で遊び、
「ちゃんと、成猫になれるかな・・・」と心配して、遠巻きで見守っていましたが、
交通事故で死んでしまいました。
今年の春、未だ寒さ厳しいころ、この母猫は子猫1匹産んで、同じ場所で暮らし始めました。
ある寒い日の朝、日陰の冷たい庭石の上に子猫が独りでいて、気になって私が近寄ると、
すぐそばの縁の下にいる母猫は、こちらを「シャー」と威嚇するものの、呼び寄せるなど何もしません。
昼、夫が見ると、子猫はその場に独りで震えていていて、母猫は留守でいません。
夕方、日が暮れて寒さ厳しい中、見かねた夫と従業員が毛布に包んでやりましたが、じっとして動きません。
猫を飼ったことがある従業員が、帰宅の途中、子猫を病院に連れて行くことにしました。
獣医の見立ては、
舌でなめて、目やにの掃除すら、していないから、目が開く時期に、まぶたが開かない、
栄養も排泄も十分でないから、今夜、放置していたら、死んでいただろう、
人が世話しても、手遅れで助からないだろう、とのことでした。
従業員の家族は、温かくしてやり、清潔にして、哺乳瓶でミルクを与え、ガーゼで肛門を拭き、
翌朝の出勤時、子猫はなんとか、命をつないだことを、従業員から聞きました。
甥は、「よかったねー」としみじみ答えます。
「でもね、まーくん、この話には続きがあるのよ・・・」と私。
そして日が高く昇る頃、母猫が庭に戻ってきて、「にゃーーーにゃーーー?」と子猫を探す様子に、
私も夫も、胸を突かれ、言葉もなく、涙がこぼれました。
甥 「母猫の元に、戻してあげたら・・・?」
私 「その母猫に戻すと、子猫は、いずれ、死んでしまうのよ。
今回だけじゃない。
2年前の子猫も、夏になっても小さいままで、毛は薄汚くまばらで、目が見えずよろけて、車に轢かれてしまった。
まあくん、もし、子猫が自分だったら、どうしてほしい?」
甥 「ちゃんと育てることができる人のところで、育ちたい」
私 「そうか・・・
子の命を想えば、母から引き離す方が、いい・・・・
だけど、子を育てられない母であっても、母として、子を想う心がある。
どうしたらよいか、難しい問題だよね・・・」
甥 「うー・・・・ん」と下を向いて黙って歩きます。
私 「それでね、従業員の家族が、毎日世話をしましたが、1週間後、死んでしまいました。」
甥 「悲しいね」
私 「まあくん、猫に限らず、人間の世界にも、親が子育てを上手にできず、児童相談所の発見も遅れて、
死んでしまう子供がいます。
学校の問題は、答えが、最初からある。 だから、簡単なのよ。
だけど、世の中には、答えを出すのが難しい問題がある。そして、それこそが、大切な問題なのよ」
そして、黙って帰路につく二人でした。