人間は自分に都合のよい理論に飛びつく。 論理性や合理性に納得した理論を選択するのではなく、二つのカンジョウ(損得勘定と好悪の感情)が喜ぶ理論を人は支持する。
大学院にいた時、東大、早慶、さらにはアメリカ、インド、中国からの留学生も交えて、相続税の可否を議論したことがある。 議論の参加者は間違いなく平均以上のIQたちだったのだが・・・。
最初、日本人の学生たちで議論をしていた。 意見は二つに割れた。 当たり前だが、家が金持ちの学生は相続税を批判し、奨学金をもらっている学生は相続税大賛成だった。 1時間ほど平行線をたどると、インドの留学生が口を挟んできた。 彼の言い分はこうだった。 『発展途上国の人間から見ると、先進国に生まれた人たちは、それだけで凄い大きな財産を相続している。世界的な平等公正を重視するなら、先進国の富を国際機関に集約し、人口比に応じて世界の国々に分配するべきだ』。
すると、相続税に大賛成していた奨学生が、『それは違う』と反論してきた。 そして議論は、世界的相続税反対の日米連合と、大賛成の印中連合で延々と続きました。 議論なんてこんなものだが、ただし、これも時空間限定を曖昧にしているから議論が反転する。 今考えると、相続税の時空間をどこで限定するかを議論するのが先だった。
昨年、国土交通省を定年退職した元幹部の人と話をする機会があった。 彼は、『バブルの時、民間に行った東大同窓はすごいボーナスをもらっていたのに、自分たちはスズメの涙だった。いくらなんでもひどすぎる、ということで民間準拠の基準を変更した。 その直後にバブルが崩壊。だから今でも、公務員給与はバブル基準なんだよ』と言っていた。
昭和恐慌の時も今も、デフレは公務員にとって住み心地が良いから、当局はデフレ脱却に消極的なのだろう。 デフレで物価が下がっても、彼らの給料はほとんど減らない。 実質的な増収である。 一方、インフレのときには、物価上昇ほどには給料は上がらない。 公務員にとって、デフレは天国、インフレは悪夢なのだ。 ただ、日本以外の国では、公務員も終身雇用ではない(職種にもよるが)。 アメリカの猟官制はとくに有名だが、ヨーロッパの多くの国でも、幹部公務員は有期の契約制を採用している。 世論や政治家の言うことをあまり無視し続けると、自分の首も飛んでしまう。 だから、日本だけが、突出してデフレがひどいのだと思う。
もっとも、インフレで給料以上に物価が上がれば、民間でも実質的な減収になる。 しかし、減収になるか増収になるかは博打だが、物価以上に給料が下がった今減収であることは間違いない。 博打にかけてみようというのも当然の心理だろう。
今日はここまでにします。 おやすみなさい。
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