昨日、日本経済新聞の一面に、建設業の高齢化が取り上げられていた(http://www.nikkei.com/paper/morning/?b=20131010&d=0)。 ようやく一般紙でも提起されるようになったが、問題の根本を基本的にわかっていない。 国交省の『若手採用企業を入札で優遇する』という政策を紹介しているだけだった。
ほとんどの問題は、『買手独占という独占市場に、競争入札及び談合根絶という一般競争市場の理論を適用していること』が原因。 この一点に尽きる。 これさえクリアーしたら、あとの問題は放っておいても勝手に解決する。 ところが、紙面にはただの一言もそれらしきことは書かれていない。 (一般競争市場とは、売手および買手の双方が多数存在する市場のことをいうが、公共入札市場では買手は発注者一者だけの独占市場である)。
一般競争市場では、各企業は合併によって大きくなることが収益アップにつながり、結果として生産性も向上する。 しかし、拙著『談合革命と日本維新』に詳しく書いたように、現行の公共入札制度ではまったくあべこべなことが起きる。 規模の拡大ではなく、分裂・倒産による企業の増加と小型化である。 結果、ますます小さな会社があふれ、生産性はさらに悪化する。 生産性が低下すれば給料も安くなる。 若者たちが敬遠するのも当然である。
入札で優遇すれば、一時的にブレーキはかかるだろう。 しかし、生産性を高めずに採用を増やしても、そのコストはどこかで調整が必要になる。 中高年のリストラだろうが、そうなれば新人に仕事を教えるベテランはいなくなる。 むしろ嫌がらせが横行するだろう。 技術の伝承など絵に描いた餅だ。
給料が安すぎるから就職しないし、すぐに辞めるのだ。 年配の監督は、『最近の若いもんは根性が足りん』とよく言うが、三十代までならコンビニのバイトの方が時給は高い。 しかも、夏はクーラー、冬は暖房つき。 真夏は汗にまみれ、冬は霜焼けの手でスコップを握る仕事なんてあほらしくてできるはずがない。
ゼネコンの元締めがこんな小手先の政策しか思いつかないようでは、五年、十年先、建設業に未来はない。
十数年後には片言の日本語しかしゃべれない者たちが現場にあふれているかもしれない。 TPPの主眼の一つは、労働力の自由化である。 欧米が作ったルールを守るしか能のない日本のエリート・インテリたちは、『日本人が就職しないなら、外国人を使えばいい』と言いだす可能性は非常に高い。
今日も読了ありがとうございました。 おやすみなさい。
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