退屈な日の始まり。卓球はない。カラオケには行けない。
というかあきれてしまった。でも普段より1時間も早く
目が覚めてしまった。猫の白が鳴く。水が飲みたい。
洗面器で、ふろ水を汲んでやる。ぴちゃぴちゃ飲んで
静かになった。ゴミ出しもなくて寝坊できる日だった。
いつものスーパーでストカーのおばさんを振り切りながら
あご(トビウオ)のはんぺんを買う。魚はカレイ。煮つけにする。
レジはけろぴぃ。何て小さいあごなんだろう。はんぺんみたいなあご。
珍クシャの顔みたいで、かわいい。なんて思いながら帰る。
そば食って、家内は出掛ける。眠たいが寝れない。パソコンを
何となくいじる。歌ってみたは大儀い。ぐずらぐずらしていたら
婆さんから電話。死亡保険の話。すっかり滅入ってしまった。
それでもめげずに、寝る。30分は寝ただろうか。家内が帰ってきた。
あとで電話しとくから。年寄りの不安はカレイに比例する。
振り払うように、カラオケ練習。遠花火。故郷の花火の記憶。
思い出しながら、歌う。いい歌だ。まだちょっと早いけどいまから
練習して、煮詰めておけばおいしい歌になる。なんだか花火のにおいまで
漂ってきた。焦げる匂い。おーお。カレイの煮つけが焦げている。
むかし食べた、煮凝りが、忘れられない。台無しだ。これで我慢しろ。
コーヒーゼリー。ああ。カラオケ喫茶を思い出したじゃないか。無糖の
冷こーが懐かしい。ああ麗子。貌を忘れてしまった。どんどんわすれる
歌も忘れる。加齢のせい。おこげのカレイ。案外うまい。真っ黒だ。
むかしは胃の薬になったものだ。今は害あるおこげさん。気にしない。
鍋の底に張り付くカレイ。こびりつく年輪と戦いながら今日を過ごす。
巨人に負けるな赤い鯉。突然だな。白に赤ボールペンで化粧してやった。
赤鼻の白猫。そして招き猫。勝利を招く赤い猫。やめてくれんか鼻に
朱肉を押すのは。いたずらの日。華麗なる変身。達磨になる。はたして
両目に炭は入るだろうか。あるぜ。加齢のおこげ。こら。しろ。舐めるな。
真っ黒な舌を出して、許しを請う白でした。美味しかったです。加齢の
味がした。白目をむいただるまの竹取の翁。これでドライアイとおさらば。
今度はヒラメの刺身を食べたい竹取の翁。女々しい。