育てないで収穫だけとろうとする で書いた、京都のバイト先の店主は、最良の雇用主でした。
思い出したので、もう少し書こうと思います。
思えば、面接の時からすんなりでした。
古い伝統建築の町屋に貼られたバイト求人を見て、履歴書を持参して面接をしました。
「○○大か、私の後輩や。」などと言い、あまり質問などもされず、いつから来れるかだけ訊かれ
明日からと言うと、「じゃあ、明日10時に来てください」と言われました。
あっけなく決まり、私がきょとんとした顔をしたのか、
「来てくれた人を迎えるんや。ご縁や。こないして来てくれてるのに 他の人も言うて
ようけ面接して そん中から選んで みたいなことうちはしまへんのや。早い者順や。」と言われました。
私は、そのおじいさん店主と波長が合い、いい予感がしました。なんの心配も不安もなかったです。
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承認的な環境でしたので、場には初日からすんなり馴染みました。
仕事の流れがストンと自分の中に落ちるまでに時間を要しましたが、それと馴染むのは別でした。
仕事の全体像が理解できる=場に馴染む ではありませんでした。理解できなくても馴染めました。
仕事が板につかなくても、温かい居場所に店主がしてくれていたからです。
京都で外国人観光客もけっこう来るというのもあり、私が英語ができる(ゆうほど出来ないが)
ということで、店主は会話の中で、よく「それは英語でなんちゅうんや」と訊き、私が答えると
「すごいな~」と褒めてくれました。外国人客が来ると、「ほら、行きや。あんたの出番やで」
と言って料理の説明などをさせ、注文をとって戻ってくると「すごいな~」と感心してみせてくれました。
褒めて、自信をつけさせる雇用主でした。「ほら、行きや」と背中を押されるのも、
品定め的ではなくて予め承認的な眼差しで、私が優秀に対応できなくても結果なんかどうでもいい風情だったので
変な緊張とかプレッシャーとかがなくて、行けました。そして、戻ってくると「すごいな~」と言われました。
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彼は、奥様にもやさしかったです。
ある時バイト仲間のおしゃべりで、ある女の子が「私○○フェチで」と言いました。
するとおじいちゃん店主が、「なんや?フェチて」と訊くので私から説明し、
その子が店主は何フェチかと訊きました。すると
「えぐれ胸フェチや」と言いました。
奥さんは、乳がんで片方の乳房を切除し、そこが凹んでいたのでした。
本当に、やさしい旦那さんだと思います。
そこに奥さんはいなかったのですが、店主がそう言ったことを
後で奥さんに伝えてあげれば、よかったのかも知れません。よくケンカしてましたから。