〝わたしにとっての「便所」〟の第7章である。
便所といえば便所である。大便と小便の用途しか考えられないのだが、今や便所は洗面所から化粧室と呼び方は変化するとともに、その用途も便所だけではなくなった。そう考えれば便所という言い方そのものも化石化していく。便室の用途として用便をする場所というのが日本的考えであったが、欧米では着替え、あるいは履物の履き替え、そしてポケットの中の金品の入れ替えというような用途もあったようだ。そして、欧米では便室と洗面所というものが別個の空間であって、洗面所の用途も多様であった。日本ではそうした感覚がなかったこともあり、便所に付随した洗面所は、単に用便後の手洗い程度に考えていた。だからこの形式が取り入れられてきたころは、洗面所はそれほど重要視されていなかったのか、スペースも狭かった。欧米での洗面所の用途をみると、①洗顔と歯磨き、②用便後の手洗い、③外出後の、あるいは外から屋内に入ったときの手洗い、④服装や化粧直し、⑤上半身の水拭き、⑥ハンカチや靴下などの洗濯、などの用途があるという。日本人としては、公衆の場で①とか⑤、⑥をするには抵抗があるだろう。またそんな光景をあまり見ることはない。洗顔や歯磨き程度の姿は見るが、それらはケースが限られているように思う。それでも現代の日本人にはそれほど違和感がないかもしれない。
ポケニャンさんはブログ「男子化粧室」において、〝男子化粧室〟の表示を見て「何をする場所なのか」みたいに違和感を覚えた経験を書いている。男女平等社会なら、女子化粧室に対して男子化粧室があってもちっとも不思議ではない。しかしながらそこまでして「化粧室」なる言葉を当てなくてはならないのか、それともマジに化粧のためのスペースなのか、不思議な話である。〝化粧〟とは何かと広辞苑で引いてみる。「紅・白粉などをつけて顔をよそおい飾ること。美しく飾ること。外観だけをよそおい飾ること。」などと書かれている。そして〝化粧室〟について「化粧に使う部屋。洗面所・便所にもいう。」とある。化粧室の意味からいけば洗面所でも便所でもいいわけだからけして不可思議なことではないが、そんな小難しいことではなく、便所の用途なら単に「便所」で良いと思うのだが、なぜこうも呼称を変えてきたのだろうか。〝便所〟より〝化粧室〟の方が聞き応えが良いというイメージの問題なのだろうか。それともマジに〝化粧〟のための空間なのだろうか。
そんなことを考えながら思うのは、公衆の便所とプライベートの便所ではかなり感覚に違いが出てきているというのが印象である。明らかに公衆の場に整備されてきた便所は化粧室になりつつあり、プライベートな便所は、相変わらず便所のままである、そんな印象である。ところが旅館よりもホテルの台頭により、人々は明らかに欧米化してきたことも確かで、それに慣らされてきていることも確かである。ホテルの狭いスペースだからこそなのだろうが、便器と浴槽が隣り合わせに並んでいるのは、わたしにはどうしても許せないわけで、今やそんな〝許せない〟なんていう人はいなくなっているかもしれない。
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第1章「わたしにとっての〝便所〟」
第2章「用を足したくなる環境」
第3章「用便後に尻を拭く」
第4章「便座器のもたらした変化」
第5章「便所周りでの作法」
第6章「便器が詰まる」
便所といえば便所である。大便と小便の用途しか考えられないのだが、今や便所は洗面所から化粧室と呼び方は変化するとともに、その用途も便所だけではなくなった。そう考えれば便所という言い方そのものも化石化していく。便室の用途として用便をする場所というのが日本的考えであったが、欧米では着替え、あるいは履物の履き替え、そしてポケットの中の金品の入れ替えというような用途もあったようだ。そして、欧米では便室と洗面所というものが別個の空間であって、洗面所の用途も多様であった。日本ではそうした感覚がなかったこともあり、便所に付随した洗面所は、単に用便後の手洗い程度に考えていた。だからこの形式が取り入れられてきたころは、洗面所はそれほど重要視されていなかったのか、スペースも狭かった。欧米での洗面所の用途をみると、①洗顔と歯磨き、②用便後の手洗い、③外出後の、あるいは外から屋内に入ったときの手洗い、④服装や化粧直し、⑤上半身の水拭き、⑥ハンカチや靴下などの洗濯、などの用途があるという。日本人としては、公衆の場で①とか⑤、⑥をするには抵抗があるだろう。またそんな光景をあまり見ることはない。洗顔や歯磨き程度の姿は見るが、それらはケースが限られているように思う。それでも現代の日本人にはそれほど違和感がないかもしれない。
ポケニャンさんはブログ「男子化粧室」において、〝男子化粧室〟の表示を見て「何をする場所なのか」みたいに違和感を覚えた経験を書いている。男女平等社会なら、女子化粧室に対して男子化粧室があってもちっとも不思議ではない。しかしながらそこまでして「化粧室」なる言葉を当てなくてはならないのか、それともマジに化粧のためのスペースなのか、不思議な話である。〝化粧〟とは何かと広辞苑で引いてみる。「紅・白粉などをつけて顔をよそおい飾ること。美しく飾ること。外観だけをよそおい飾ること。」などと書かれている。そして〝化粧室〟について「化粧に使う部屋。洗面所・便所にもいう。」とある。化粧室の意味からいけば洗面所でも便所でもいいわけだからけして不可思議なことではないが、そんな小難しいことではなく、便所の用途なら単に「便所」で良いと思うのだが、なぜこうも呼称を変えてきたのだろうか。〝便所〟より〝化粧室〟の方が聞き応えが良いというイメージの問題なのだろうか。それともマジに〝化粧〟のための空間なのだろうか。
そんなことを考えながら思うのは、公衆の便所とプライベートの便所ではかなり感覚に違いが出てきているというのが印象である。明らかに公衆の場に整備されてきた便所は化粧室になりつつあり、プライベートな便所は、相変わらず便所のままである、そんな印象である。ところが旅館よりもホテルの台頭により、人々は明らかに欧米化してきたことも確かで、それに慣らされてきていることも確かである。ホテルの狭いスペースだからこそなのだろうが、便器と浴槽が隣り合わせに並んでいるのは、わたしにはどうしても許せないわけで、今やそんな〝許せない〟なんていう人はいなくなっているかもしれない。
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第1章「わたしにとっての〝便所〟」
第2章「用を足したくなる環境」
第3章「用便後に尻を拭く」
第4章「便座器のもたらした変化」
第5章「便所周りでの作法」
第6章「便器が詰まる」
欧米では個人の家でもそうなんですかね。
家人が風呂に入ってる時、客がトイレに入りたい、客でなくてもいいんだけど、そんな時どうするんだうろと思ってます。時には「娘は風呂が長いんですいませんが・・・」なんてこともあるんだろうか?
聞くところによると、欧米の個人住宅では、便器・浴槽・洗面台が一つの部屋にまとめてあるようです。狭い日本ではユニットバスにその一揃えを仕組んだのでしょう。どうも浴槽の使い方も日本と欧米は違いますから、あのユニットバスは浴槽の部分が風呂場、その外は便所なんでしょう。洗い場があるのが当たり前と思うから日本人には納得できなくなる、そんな感じです。もともと日本人の空間ではないわけで、なじむわけがないか・・・。