サンタラ 若者のすべて ツイキャスプレミア配信Bonfire Time!VOL.19より
Day Is Done (Family Tree)
Terminal City Vodka Collins
眠れない[Music Video] 小谷美紗子
(ちんちくりんNo,42)
新宿から故郷の中核市駅までは一時間三十分はかかった。ホームに降りて僕はすぐに公衆電話を探した。かほるに電話をさせるためだ。ここまで来てしまった以上僕の実家に泊まらせる他ない。となると、かほるは当然一泊する旨、家に連絡しなければならない訳で、本人は至って暢気に「いいのいいの大丈夫、大丈夫」と言っていたが、そうはいかない。なにしろかほるは女の子で高校生で、しかも何やら深刻そうな「持病」を持っている。親が心配しない訳がないし、警察なんかに連絡された日には僕は誘拐犯にされてしまう。「だって、うちお父さんアメリカだしお母さんは締め切り迫っていてきっとそれどころじゃないし」かほるは言い訳したが、僕は一瞬「アメリカ?締め切りって何」とかほるの新たな謎に翻弄されかけたが、そこは抑えて「じいさんがいる」と何とかかほるに「家に連絡すること」を了承させた。
公衆電話は降りてすぐ正面、売店の横にあった。かほるはぶちぶち言いながら、受話器を上げ、十円玉を差し込み口に入れて、じいさんのいる一階古本屋の電話番号をプッシュした。
あ、おじいちゃん?―うん、かほる。
急なんだけれど・・・。今日うちに帰らないから。
海人のうちに。うん、そう。・・・だから・・・うん。
何故そこにって・・・、明日帰ってから話すよ、長いんで、ごめんねおじいちゃん。
おかあさんにも・・・、え、―代わりなさい?・・・電話を海人に?
かほるは受話器を僕に向けた。もともと途中から代わろうと思っていた僕はかほるから受話器を受け取り、百円玉を一枚追加してから、話が長くなることを覚悟して耳につけた。さて、と。僕はどんなじいさんのキツイ言葉でも受け取らんと思い構えた。―が、にも拘らず話は意外なほど早く済んでしまった。「よくもかほるを」と非難されると思っていた言葉は「かほるが迷惑かけてすまん」となり、「許さん」となるはずだったのが「かほるをよろしく頼む」になった。拍子抜けした僕が思わず「手を出すな、とか言わないんですか」と問うと、ハハハ、と突然笑い出し、「じゃあな」と電話を切ってしまった。わからん、僕は昔精神科の医師だったというじいさんの心の中が全く読めなかった。本当は怒りで一杯だったのか?いや違う。あれは・・・。
Day Is Done (Family Tree)
Terminal City Vodka Collins
眠れない[Music Video] 小谷美紗子
(ちんちくりんNo,42)
新宿から故郷の中核市駅までは一時間三十分はかかった。ホームに降りて僕はすぐに公衆電話を探した。かほるに電話をさせるためだ。ここまで来てしまった以上僕の実家に泊まらせる他ない。となると、かほるは当然一泊する旨、家に連絡しなければならない訳で、本人は至って暢気に「いいのいいの大丈夫、大丈夫」と言っていたが、そうはいかない。なにしろかほるは女の子で高校生で、しかも何やら深刻そうな「持病」を持っている。親が心配しない訳がないし、警察なんかに連絡された日には僕は誘拐犯にされてしまう。「だって、うちお父さんアメリカだしお母さんは締め切り迫っていてきっとそれどころじゃないし」かほるは言い訳したが、僕は一瞬「アメリカ?締め切りって何」とかほるの新たな謎に翻弄されかけたが、そこは抑えて「じいさんがいる」と何とかかほるに「家に連絡すること」を了承させた。
公衆電話は降りてすぐ正面、売店の横にあった。かほるはぶちぶち言いながら、受話器を上げ、十円玉を差し込み口に入れて、じいさんのいる一階古本屋の電話番号をプッシュした。
あ、おじいちゃん?―うん、かほる。
急なんだけれど・・・。今日うちに帰らないから。
海人のうちに。うん、そう。・・・だから・・・うん。
何故そこにって・・・、明日帰ってから話すよ、長いんで、ごめんねおじいちゃん。
おかあさんにも・・・、え、―代わりなさい?・・・電話を海人に?
かほるは受話器を僕に向けた。もともと途中から代わろうと思っていた僕はかほるから受話器を受け取り、百円玉を一枚追加してから、話が長くなることを覚悟して耳につけた。さて、と。僕はどんなじいさんのキツイ言葉でも受け取らんと思い構えた。―が、にも拘らず話は意外なほど早く済んでしまった。「よくもかほるを」と非難されると思っていた言葉は「かほるが迷惑かけてすまん」となり、「許さん」となるはずだったのが「かほるをよろしく頼む」になった。拍子抜けした僕が思わず「手を出すな、とか言わないんですか」と問うと、ハハハ、と突然笑い出し、「じゃあな」と電話を切ってしまった。わからん、僕は昔精神科の医師だったというじいさんの心の中が全く読めなかった。本当は怒りで一杯だったのか?いや違う。あれは・・・。
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