今月の読書本は角田光代さんの「八日目の蝉」
誘拐した女、誘拐された女の子、誘拐された母親の
それぞれの気持ちに共感出来る作品です。
不倫をして妊娠し堕胎をするというケースは珍しくないのでしょうが
この作品は誘拐という犯罪を犯した女が誘拐した赤ん坊を守り
育てるという場面に泣かされてしまいました。
最初0章の誘拐場面から始まり・・・、
1章ではその誘拐した女・希和子が誘拐した赤ちゃん・恵理菜を
深く愛し、強く守りながら一緒に逃亡する様子が描かれている。
母親でもない女がそんな強い愛情を掛けることにすっかり感情移入して
目がウルウルしてしまう。
第2章では、誘拐された女の子・恵理菜が実の母親を始め家族たちと
馴染まず隔たっているという苦しみを抱えつつ生きている境遇や
自分も誘拐した女・希和子同様に不倫をしている現実が描かれていて
深い傷を負った女の子像が浮かび上がる。
がある日、曽てエンジェルホーム(一種の宗教団体)で可愛がってくれた
千草という女性が現れ、妊娠している恵理菜と一緒にいた最後の地・小豆島へ
行くことに・・そこには幼い自分が近所の子ども達と屈託無く過ごした景色が広がり
女・希和子が最後に叫んだ「その子は朝ご飯をまだ食べていないの」という育ての親
とも言うべき言葉を思い出したりして、このお腹の子どもをしっかり育てる決心をする。
女の心情をこんなに上手く描いている角田光代さんに感激しました。