伊勢物語 第6段 芥川
ずっと想いを寄せていた姫君を、
男はあろうことか盗み出し、
おぶって夜道を逃げていく。
その背中で、
初めて見る草の葉の夜露に
「あれはなあに?」と無邪気に問う姫君。
ひどい雨と雷を避けるために
逃げ込んだあばら家の蔵には、
鬼が住んでいた・・・
伊勢物語。芥川
女を失って
悲嘆のどん底に落ちた男が詠んだ歌
「白玉か 何ぞとひとの 問いしとき
露とこたえて 消えなましものを」
「あれは白玉? 一体なあに?」
と問われたときに、
「露」 とだけ答えて、
わが身も露のように
消えてしまえばよかった。