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「集団的自衛権の行使」と、それを法的に支えるための安保法案に関する議論を聞いていると、いくつかの問題が錯綜して論じられているように感じられる。少し整理をして考えてみたいと思う。そこで、まず、現在行なわれている議論の主題を明確にしておく必要があると思う。議論の主題は、日本の平和と安全を守るためにいま何をなすべきかということである。
現在の議論が混乱しているように見えるのは、政府が主張する「なすべきこと」すなわち「集団的自衛権の行使」が憲法に違反している疑いが濃いからだと思う。そのため、「何をなすべきか」という問題と「憲法問題」が入り混じってしまってわかりにくくなっている。
そうであれば、議論を2段階に分ければわかりやすくなるのではないか。
Ⅰ. 日本の平和と安全を守るためにいま何をなすべきかを議論する。「集団的自衛権の行使」ができるようにすることはそのための正しい方策なのか。現状のままで、いったい何が問題なのか。仮に問題があるとして、その問題を解決する他の方法はないのか。
Ⅱ. Ⅰの議論の結果として出た「なすべきこと」が、憲法に違反しないかを検証する。もし、憲法に違反するのであれば、国民の判断で憲法を改定する必要がある。なにしろ、そうしなければ「日本の平和と安全」が脅かされるのだから、やむを得ない。
Ⅱ. Ⅰの議論の結果として出た「なすべきこと」が、憲法に違反しないかを検証する。もし、憲法に違反するのであれば、国民の判断で憲法を改定する必要がある。なにしろ、そうしなければ「日本の平和と安全」が脅かされるのだから、やむを得ない。
Ⅰの議論では、憲法問題を一時棚上げにし、本当に必要なことを論じればよい。そして、結果として出てきた方法が、Ⅱの議論で、憲法違反であると結論されれば、憲法改定の議論に進めばよい。(もちろん、改定は必要最小限であって、現行憲法を自民党の憲法草案と置き換えるようなことではけっしてない)「集団的自衛権の行使」ができるようにすることに賛成の人であっても、「集団的自衛権の行使」は現行の憲法に違反するので、勝手な解釈で合憲とし、強行採決することには反対する人が多い。
「強行採決」は、これらの議論とは別の次元の大きな問題である。与党が3分の2の議席を持っているのだから、採決すれば与党の主張が通るのは議会制民主主義の下では当然のことだと考える人もいる。しかし、先の衆議院議員選挙で、自民、公明の得票率は45%に過ぎなかった。全有権者に対する比率ではたった27%である。一方、非自民、公明の得票率は55%である。ところが、45%の得票率で与党は246議席を獲得し、55%の得票率で獲得した野党の議席はたった54議席しかない。その246議席を使って強引に採決をすることは、本当に議会制民主主義の精神にかなうものなのだろうか。この事実を国民はもっと考えたほうがいいのではなかろうか。
ここで、少しⅠの議論について考えてみたい。現在、日本の平和と安全が脅かされようとしており、集団的自衛権の行使ができるようにしておかないと大変なことになると政府は主張し、国民の不安を煽っている。でも、それは本当だろうか。このことそのものが疑わしい。
世界は、20世紀前半の2つの大戦で、戦争というものがいかに悲惨で割に合わないかということを学んだ。富を得るためには、平和の中で経済活動を活発にすることの方が、戦争で資源を奪い合うよりも格段に優れていることを学んだ。したがって、今の世界情勢は戦争前夜のようなものではまったくない。先ごろ、韓国と北朝鮮が一触即発のような事態になったが、双方とも、上記のようなことはわかっており、平和的解決に至った。北朝鮮が強く望んでいるのは経済制裁の解除であり、世界との貿易を盛んにしたいのである。金正恩といえどもわかっているのだ。
また、日本が無防備なわけでもない。日本には自衛隊があり、世界第4位の防衛予算に裏付けられた装備を持っている。また、日米安全保障条約があり、個別的自衛権の行使は国民の気分として認められている。
この現状で何が問題なのか。どうして自衛隊が海外にまで出かけ、アメリカが行なう戦争(アメリカが日本のために行なう戦争ではない。アメリカがアメリカのために日本国外で行なう戦争であって、たとえ国外であっても、それは日本が攻撃されたことに等しいと、国民がではなく政府が判断する戦争)に参戦することを宣言しなければならないのか。その理由がわからない。
友達がやられているのに放っておいていいのか?などと言うが、世界一の圧倒的な戦力を持っているアメリカがいったいどの国にやられるというのだろう。現実は逆で、アメリカがアメリカにとっての悪者をやっつけている。
また、最近のテレビ番組で、安倍首相は、自衛隊が海外に出かけて行って戦争することを、隣の家の火事に駆けつけてする消火活動に例えて説明した。でも、消火活動に行って、その家の人に喜ばれはすれ、その家の人から攻撃を受けることなどないが、戦争ではその現場で攻撃され、殺される人が出てくるのだ。まったく違う話で、例えになっていない。集団的自衛権の行使が必要だということの説明にはなりようのない例えである。いかにも安倍首相らしい。このような類の説明が、安倍首相の言う「丁寧な説明」のようだ。
結局、どの問題についても、安倍首相の主張について、確かに正しいと国民が納得できるような説明はなされておらず、ただ「私の考えている方法は正しい」「憲法違反ではない」「議会制民主主義に則ってやっている」と繰り返しているに過ぎない。そして強行採決が行なわれ、この国が、安部首相のような人をトップにいただく政府の思い通りの国に変えられてゆこうとしている。いったいいまの日本は本当に民主主義国家なのだろうか。
「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」という日本国憲法の前文がむなしく聞こえる。
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