明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

読書の勧め(9)生きてるうちに読んでおきたい本10冊・・・2022年版(後編)

2022-03-01 20:05:34 | 今日の話題

6、枕草子(清少納言)

日本屈指の随筆集であり、文章を書こうとする者にとっては「永遠の古典中の古典」である。とまあ一応は褒め称えたが、私は余りこの手の随筆が好きではない。これと他の2つの随筆作品「方丈記や徒然草」と合わせて古今三大随筆集とか言って世間の評価は高いのだが、私は今ひとつピンとこないのである。言っている事は含蓄があってそれぞれ心に響くものがあるのだろうが、「所詮は個人の単なる感想」に過ぎず、別に参考にする人は「すればいいのでは?」、というスタンスなのだ。しかし清少納言の随筆の端々には、一条天皇と藤原道長の娘・皇后彰子との間に挟まって苦しみのうちに生涯を終えた理想の女性、「中宮定子」への追慕の感情が溢れているという分析があり、「そのこと1点で」10冊入りをしたようなものである(私はこういう御涙頂戴ストーリーに弱いのだ)。勿論選んだ理由はそれだけではなく、江戸中期以来「枕草子注釈本」が続々と刊行され、今や本朝古典作品の粋とまで評価は鰻登りの状況なのだ。これは是非とも読まなくてはいけない。ということで、読了予定は3年後までとしたい。

7、カササギ殺人事件(アンソニー・ホロヴィッツ)

この本は「このミステリーが凄い!第一位」に選ばれ、2019年度本屋大賞翻訳小説部門第一位や本格ミステリー・ベスト10海外部門など、4冠を達成した大人気作品である。私はこれを原書で読むつもりだ。今までも大概の海外ミステリー物は原書で読んできた。私は主に、ペーパーバックス版を本屋で探して購入することにしている。表紙に「No.1 ベストセラー」と書いてあれば、ほぼ読んでも失望しないのである。有名な所では「ダン・ブラウンのダ・ヴィンチ・コード」も原書で読んだが、まるで映画を見ているようなスリルがあり、多分日本語ではその切迫感が伝わらないのでは、と感じた。・・・と書くと、如何にも英語がペラペラみたいに思われるかも知れないが、私の英語は「中学卒業レベル」のダメ英語である。しかし海外のミステリーや警察探偵小説を読むのには、「全く不自由」を感じないと明言したい。秘訣は、絶対に「辞書を引かない」こと、である。そう聞くと「それじゃ内容がわからないじゃないか!」とお叱りをいただくかも知れないが、そんなことは「全く」ないのである。一般的なミステリーとか警察小説では、心配しなくても大体筋書きは決まっている。少々わからない単語があっても「大凡の見当はつく」のだ。だからわからない単語があっても「すっ飛ばして」読み進めば良い。そうしている内に話が急展開してきて、細かい所など「気にしている場合ではない!」となる。これがベストセラー小説が「ページ・ターナー」と呼ばれる所以である!。まあ、今まで20冊以上の洋書を読んできた私の経験から言えることなので、まず間違いはないと思う。是非皆様もお試しあれ。なお、このカササギ殺人事件というのは相当面白いと評判らしいから、今読んでいる「デイビッド・バルダッキの FALLEN 」が読み終わったら、すぐに買いに行って読もうと思っている。英国ミステリー作家コリン・デクスターの「モース警部」シリーズなど、テレビで放映されていたものも好きなんだが、如何せん時間が余りないので今回は割愛したい。よって、読了予測は来年以降になりそう。

8、年代記(タキトゥス)

歴史好きの私としては、東洋の歴史だけでなく「西洋及び中東」の歴史も興味津々だ。まあ、アラビアやペルシャそしてインドの歴史となると、いささか知識もないしちょっとハードルが高すぎる気がする。興味はあるがそこに踏み込むのは「来世」に取っておくとして、まず西洋「特にギリシア・ローマ」から始めたい。中でも歴史書の「白眉」と言われているのが「プルタルコスの対比列伝」と「タキトゥスの年代記」だ。ギボンの「ローマ帝国衰亡史」も有名だが、近年その歴史叙述に曖昧なところが指摘されて評価が下がっているから、今回の10冊には入れないでおこうと思う。ローマについては日本人の塩野七生の本が秀逸だというが、私はまだ読んではいない。時間があれば読んでみたいと思っているが、彼女の場合、現代の視点から見たローマ社会とは、という書き方のようなので、今回は割愛する。どうしても西洋史となると、読むのは他の読書の「進み具合を見て」ということになりそう。従って間違いのない安全な選択ということで、まずは年代記から読み進めたい。これに関しては、読了予定は「未定」である。

9、荷風随筆集

永井荷風は近代日本作家の中では、唯一「気に入っている」小説家である。荷風は若い頃あちこち「洋行」して、「ふらんす物語」など、西洋文化の香り高い作品をものして人気を博した。だが後年、「濹東綺譚」などの市井の人々の暮らしを描いて情緒あふれる小説を書くようになったという。その辺が「日本独自の心模様」を描いていて、しかもどこか西洋の個人主義が頭を覗かせているような、ある種不思議な日本人離れした感性を持っているように私は思う。日本の作家は得手して精神的なものを書くと「皆ドロドロ」になりがちなのだが、荷風の作風はどこかカラッとしていて、そこが私の好きな所なのかもしれない。彼の日記「断腸亭日乗」などにあるも興味はあるのだが、取り合えず「随筆集」を買ってみた。これはたまたま柏モディのジュンク堂書店で、日課の新刊チェックをしているときに見つけたものである。案外気張らず暇な時にサラッと読めそう、と思ったらもう買っていた。いつかは荷風のような、「金をたんまり持っている」のに全く金持ちの気配がしない、飄々とした明るい老人になってみたいものである。これは荷風という「人間」に興味を持った、一種の「タブロイド風の」三面記事的見方であるから、興の赴くまま「つまらないところは読み飛ばしつつ」、面白そうな所をザックリと読めばいいのかと思う。よって読了予定は1年位か。

10、悪の華(ボードレール)

以前から興味のあったボードレールの代表作。その後のランボー・ヴェルレーヌ・マラルメがリードする、「フランス象徴詩」の巨大なうねりを彼がどのようにして準備し発展させたのか、その美への「鋭い審美眼の秘密」を探ってみたいと思ってランクインさせた。ボードレール個人にも大いに興味があり、流行を牽引する「ダンディ」の颯爽たる姿も、同時に紙背から眺めてみたい。ボードレールの考えていることは素人には難しくて正確に理解するのは困難だが、まあ「いいじゃないか、ミーハーで」ということで諦めて、取り合えず読んでおくことにした。一冊読み終わっても「何のことだかサッパリ分かんねぇべ?」と成りかねないが、気にしない気にしない。とにかく20世紀の「パリ」に花咲いた、詩歌・小説と絵画・オペラ(後に映画)の「絶頂時代」が如何にして醸成されたのか。その一部始終を人間関係も含めて読み解いてみたいと思う。その手始めとしての「悪の華」である。それに何と言っても、Amazon Kindle 読み放題で「無料」で読めるのが嬉しい。今まで「月下の一群や海潮音」などでしか知らなかったフランス文学の精髄を、その「源流に遡って」尋ね見ようという壮大な試み。読了予定はちょっと頑張って2年ということにしたい。

以上でした。

PS:自分で選んだ10冊を毎日テーブルの上に並べて、手当たり次第に読んでます(眺めてるだけの日もあるけどなぁ〜)。

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一応初めて読まれる方のために「前編」をコピーしておきます。ご参考までにどうぞ。

1、新古今和歌集(藤原定家)

詩歌の最も華やかで雅な時代の頂点を極めようと意気込んで、若き後鳥羽天皇と新進気鋭の藤原定家がタッグを組んで集めた、渾身のアンソロジーである。残念ながら御鳥羽院は承久の乱で隠岐の島に配流になってしまったが、この新古今については最後まで「切り継ぎ」をやめなかったという。それだけ愛着が深かったのだろうが、定家にして見ればエラい迷惑だったとも言える。何れにしてもこの和歌集が古今東西の詩歌集の中の最高傑作であることは論を待たないであろう。明治の一時期、正岡子規や斎藤茂吉などの「ヘタレ歌人」のヘンテコな主張に乗っかって、何でもかんでも万葉万葉と騒ぎ立てるバカが続出したことがあった。今はそれも落ち着いて、やっと「まとも」な和歌鑑賞の時代が来たと陰ながら嬉しく思っている。勿論、決して万葉が悪いと言っているのでは無い。ただ、和歌が一時期廃れて漢詩の時代がしばらく続き、伊勢物語などで細々と息をつないでいる状態だったのが「古今和歌集」の編纂で一気に宮廷の表舞台に登場し、源氏物語などの女流文学の発展も相俟って、ついにこの新古今和歌集の編纂・上梓を機に「和歌全盛の世の到来」となった訳である。新古今の作風は「余情・幽玄」を描くことにあるなどと指摘されるが、細かいところはおいおい勉強するとして、まず「百人一首止まりの素人」から本格的に和歌の真髄を極めてみよう、という大それた考えを実行するために一度は読んでおきたい古典であろう。まあ多分、これ一冊読んでみれば、大概の事は分かってしまうんじゃないかな?、と期待している。読了予定は3年後だ。

2、法然上人絵伝

日本仏教の教えをそれまでの「特別に修行した」僧=専門家集団のみのものから、あまねく一般大衆の救済へと間口を広げたのが法然である。誰でも、例え女人だとしても、念仏を唱えさえすれば必ず救われて浄土に生まれ変わることが出来ると説いた。これは宗教における「コペルニクス的転回」と私は考えている。つまりなんと言うか、何しろ「すごい」なのだ。私はその法然の「分け隔てない救済」という考えには、心の底から賛同するものである。学問は勿論法然は「ピカイチ」だろうけど、無学な民衆をも受け入れて救済しようという無尽蔵の優しさを思う時、宗教というのは「かくあるべき」だとおしえさとされるのである。法然上人の教えは、現在「浄土宗」として受け継がれているが、そういう教義の細かい話は私の興味の外である。以前、会社の先輩に創価学会員がいたが、法然の教えを「ボロクソ」に貶していた。彼等の崇拝する宗祖「親鸞」は終生法然を師と仰いで愛慕し続けたと言うのに、なんで末端の学会員ごときが宗派の勢力争いで他派の悪口を言わなければならないのかと思う。親鸞が聞いたら「激怒したんじゃないか?」などと想像すると楽しい。これは挿絵も入っていて子供にも楽しめる本だから、誰と言わず「座右の書」にして適時参照すると良いと思う。短い本なので、一応の読了目標は来年中である。

3、今鏡

文庫本で割と厚みのある上・中・下の三巻セットだから相当な大作である。同じ鏡シリーズの「大鏡」は一冊に収まっているから、色々「大意」だとか「現代語訳」とかその他諸々がついているとはいえ、内容がたっぷりあるのは想像がつく。中身は短く章立てして読みやすいが、それほど感動するような内容とまでは行かない「ゆるーいエピソードトーク」のオンパレードだから、ちょっと暇な時にサラッと読む程度が相応しいと思う。それでもこの「鏡シリーズ」は平家物語とか太平記などに見られる「美文調で語る大上段の歴史書」と違い、庶民にも分かるような平易な文章で面白く書いているので読み飽きない。取り合えず平安時代から鎌倉まで、歴史を語る上での「基礎知識」を知っておく目的で、押さえておきたい書物である。読了予定は3年としておこう。これは、他の「読むべき本」の進捗状況によっては、しばらく放っておかれる可能性があるからだ。まあ、それほど真剣にならず、気長にのんびり読んで行きたい。

4、明の太祖 朱元璋(檀上寛)

何と言ってもあの「広大無変の中国」を股に掛けたスケールの大きさという点では、チンギス・ハーンに勝るとも劣らない興味ある間だ。朱元璋は元末の混乱に乗じて貧困の中から頭角を表し頂点まで上り詰めた一代の風雲児である。中国では統一王朝が倒れる時に大体民衆の蜂起が起こる。漢が倒れる時は「黄巾の乱」が起こって大混乱に陥り、三国入り乱れての争いの末「曹操の魏」が勝利して晋朝が引き継ぎ、五胡十六國・南北朝時代が続いて隋唐統一王朝への道筋をつけた。唐が倒れた時、五代十國の乱世になりその中から「宋」が300年程続いたあと、中央アジアの遊牧民からチンギス・ハーンが出て「元」が統一王朝を打ち立てたというのは誰でも知っている話である。だがその強大な元がもろくも倒れたあとどうなったかは、実はあんまり日本人の興味を惹かない「地味な」物語になっているみたいなのである。私はここに興味を持った。日本ではようやく戦乱の世が収まり、足利義満が天下を支配した時代である。この時「紅巾の乱」で全土が大混乱状態をなった。果たして「天下の帰趨」は如何に?、というのが読みたくなった理由である。Amazon で探したのだがやはり適当なものが見つからなくて、ちくま書房で文庫化されているのが一点あっただけだった。私は朱元璋個人というよりは「元」の崩壊から「明」の建国までの「大きな歴史の流れ」を読みたいので、もう少し「歴史中心の乱世」という視点で探してみたい。一応 Amazonでは「買いたいリスト」に入れておく。

5、紅楼夢(曹雪芹)

中国には四大奇書というのがあって、水滸伝・三国志演義・西遊記・金瓶梅を言うのだそうだ。勿論、これらの奇想天外な長編小説はどれも「世界レベル」の作品に間違いはない。だが、私は英雄妖怪の跋扈するファンタジーより、市井の人々の日常を細やかに描く「紅楼夢」の方が心の琴線に触れるのである。昔、私が若い時に会社で取引している腕時計メーカーの招待で「台湾」に行ったことがあった。その少し後に今度はメガネメーカーの招待で「シンガポール」にも行ったりしたので、これは昭和バブル世代の役得かも。その台湾では、お決まりの故宮博物院に行って古い陶磁器などを鑑賞したりして日程を消化したが、やはり一番の思い出は「グルメ」である。短い滞在期間をあちこち食べ歩いては休み、また食べては休みの繰り返しで、旅行から帰ってきてしばらくは「ズボンがキツくて」相当難儀した。ただ、旅行は楽しい思い出でいっぱいであり、出来たら「中国に取り込まれる前」に旅行して、若い頃の夢をもう一度満喫してみたい。丁度宿泊しているホテルが台湾最高級の「グランドホテル」だったので、九階のベランダから下を見下ろすと「朝靄にボーッとかすんだ飲食店街の屋台の列」が見えて、何故か「暖かい懐かしさめいたもの」を心に感じたのが記憶に残っている。そんな感情を思い起こさせてくれるのが、この「紅楼夢」じゃないかな?。もし期待通りでなかったら、即中止して他のにするつもり。幸い、文庫版が柏図書館にあるようだから今度散歩がてらに図書館に行って、閲覧室で定期的に読むのがベターだと考えている。一応、読了は2年後ぐらいを予定している。


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