Wカップの組み合わせを森保監督がいつ知ったのかは定かではないが、発表が4月1日なので、今年の早い時期には既に知っていたものと思われる。それまで代表を率いて4年間、4バックで練習していたのに闘莉王の言うように急に5バックに変更した理由は、組み合わせを聞いて「このままじゃヤバい」と真剣に悩んだからなのではないかと想像する。6位のスペインと11位のドイツという格上の2チームに挟まれて、唯一勝てそうなのは34位のコスタリカぐらいという「死のグループ」に日本は入った。このままでは2チームに対して「良くて引き分け」、悪ければ全敗するかも知れない「日本代表最大の危機」に早くも見舞われたのである。
これでは森保監督ならずとも「ああ、どうしよう?」と頭を抱えたのは無理もない。多分悩んだあげくに追い込まれて採用せざるを得なかったのが、例の失点しないで天佑を待つという、苦肉の策の「元寇以来の神風頼み」作戦であった。ところがこれが思いの外に上手く嵌り、「ドイツ戦で棚ぼた勝利」を挙げたことで作戦に余裕が出来たのだ。それで余裕が出来たコスタリカ戦は「引き分け」で良いと思っていたら(これが先発で5人を入れ替えの真実だ)、これが何とアッサリ1-0で負けたもんだから「マジ」うろたえたのである。それでもスペインが「ドイツに勝ってくれさえして」いれば、得失点差を利用して何とか「首の皮一枚」でGS突破は出来そうだった。ところがどっこい、あろうことか「ドイツがスペインと引き分けた」ので大混乱になってしまった。つまり、スペインも勝たなきゃならなくなって日本戦を消化試合に出来なくなり、最終戦は「勝ちに行く」最悪のシチュエーションになったのである。
日本は第3戦はスペイン相手だからまず勝てないとして、最低で引き分けにし「1勝1敗1分けの4点」になる。ドイツはまずコスタリカに勝つだろうから、これも「1勝1敗1分けで4点」で日本と同率になる(スペインは5点で一抜け、コスタリカは3点で敗退)。コスタリカがもしドイツに勝つようなことになれば2勝1敗で6点だが、これはもう考えないことにしよう(考えれば考えるほど悪夢である)。もしドイツがコスタリカをボコボコにして得失点差が日本を上回ったら、やっぱりベスト16に行くのはドイツとなって、森保監督「大ぁ〜いピンチ」なのだ(それでもドイツに勝ったというだけで満足かも)。
ところが「またまた二度目の神風」が吹き荒れて、日本がスペインに「まさかまさかの大逆転」で勝利するという大金星を挙げたのである!(神風は二度吹く、というのがお約束みたいだ。ちょっと関係はないが、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」という映画が昔あった・・・これ、ただの「知識のひけらかし」です)
閑話休題、森安監督の心中を推し測れば、「とにかく絶体絶命の山場は何とか越えた、良かった良かった」とホッとした気持ちだろう。選手たちは「偶然じゃない、必然だ!」などと血気盛んに大盛り上がりだったし、世間はもう「クロアチアなんか目じゃないぜ」と鼻息荒く猛り狂っている。太平洋戦争で真珠湾攻撃が成功して「日本中が湧きかえって」いた頃を思い出す(って言うか、おまえ「生まれてな」いだろが、ボケっ!)。唯一人冷静に戦況を分析していた監督は「このまま静かに終わらせよう」と密かに考えていたのではないかと私は想像する(何というブラックな筋書き!)。勿論クロアチアに勝つ事も充分有り得ただろう。サッカーは何が起きても不思議は無い。現にアルゼンチンが負け、ベルギーが姿を消している。ドイツも日本が引導を渡したではないか?
・・・しかし神風はそんなに何度も吹いてはくれない。当たり前だよね・・・
ドイツに勝った時は浅野のスーパーゴールで逆転した。見ていた人の99パーセントは、世界一のキーパー「ノイヤー」に阻まれるか、サイドネットを揺らして惜しかった、となるか、どっちかだと思って見ていたと思う。ノイヤーも「上」は予測していなかった筈である(構えがそうだった)。そこを浅野は上に蹴った。ボールが弾んで「浮いていた」のだと考えられるが、結果は弾丸シュートで天井を突き刺した。これは恐ろしく狭い所で「浅野も予期していなかった」ゴールだと思う(本人に聞いても、そうは答えないだろう)。テレビの解説者も「100回やって1回入るかどうか、ですよと言っていた。
また、スペイン戦の2点目は三苫のスーパーアシストを、これまたゴール際に詰めていた田中碧が押し込んだ奇跡的な一発である。ライン際の9割方出ているボールを「あの位置に返してくる」三苫も凄いが、それを「ディフェンスの後ろ」から入れるというのは信じられないプレーである。普通ディフェンスが田中の動きを感じ取っていれば、前にいるのだから「如何様にでも防げた」訳なのだ。ところがフィールドにいる「誰もが」ラインを割ったと思って、気持ちはゴールキックの準備に切り替えようとしていた所に、田中碧一人が「苫を信じて」ゴールに向かっていた。余りにも純粋無垢である(私が思うに、田中碧はボールがラインを割ったかどうか「見ていなかった」のではないだろうか)。これも奇跡という他ないゴールである。
考えてみれば、ドイツ戦とスペイン戦は「偶然(神風?)が齎した勝利」だった。むしろ負けたクロアチア戦の方が、良く見る普通の「入ってもおかしくない」枠内シュートがいくつもあったと私は感じる。日本が勝つ要素は、クロアチア戦の方が断然多かったのである。しかし勝ち切れなかった。・・・ここが日本の「今の実力」だろうと思う。
それで森安監督がやむなく取った「窮余の一策」が、PKだった。もう森保監督には「クロアチアを破ってベスト8に行く!」という手立ては、これしか残っていなかったのだと思う。それだけ実力の差は歴然としていたのだろう。剣道の立ち会いのように、見るものが見れば分かる。日本が「失点しないサッカー」を選択して必死で守ったからこそ、やっと「0−0のタイ」でPKに持ち込めたのだと思う。PKなら、弱者が強者を倒すという「下剋上」が可能だからだ。
しかし狙ったところに「確実に蹴り込む技術」が日本代表になかったのか、あるいは最後だからと思って「やりたい選手に蹴らしてあげよう」という森保監督らしい温情で選手任せにしたのか、真実は分からないが、結局負けてしまった。偶然は、今度は日本には「起きなかった」と言う訳である。森保監督としては、GSを突破した時点で満足だったのかも知れない。その意味では、森保監督に「お疲れ様」と言いたい。彼は、次回監督になる人には、もう少し実力がアップした「真の日本代表」を率いて、今度こそ「順当に」勝ち上がってベスト8、いや「ベスト4」を目指して戦ってもらいたい、と願っているに違いない(あくまで私の想像である)。
最後に私の考える日本代表の「目指すべき戦術」を書いておきたい。参考にするようなお人好しのファンはいないとは思うが、何か話題に使えれば幸いです。
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全体として感じることは、
・何としても「パススピード」をもっと上げること。
・当たり前だが、トラップは確実に「次に蹴り出すところ」に置くこと。
・パスするまでの「判断の時間」を短くすること。
・その前提として、受ける方も最適な位置に「常に」移動しておくこと。
○ ディフェンス陣は足が早くて、人に当たり負けしない大柄のガッチリしたタイプを選びたい(これはどこのチームもそうであろう)。例えばリュディガーとかミリトンみたいな、出来れば「闘争心と策略」に秀でたタイプが理想。今回の代表を見ていると、とにかくヘッドにしてもパスにしても、むやみに前に蹴るだけで「味方に渡らないで」相手に取られる場合が多々あった。少なくとも「自分たちのボール」にしたのなら、ちゃんと「味方のいる所」に蹴らないと意味がない。これは選手全員に言えることである。つなぐのなら正確に、だ。中途半端が一番いけない。
○ 中盤はプレスが掛けられてボール奪取か上手く、しかも前線に「正確な高速のパス」を送れる「カゼミーロとかクロース」のような選手が理想だ。なお、サイドバックの長友選手が、ライン際でパスを受けてもいつもそのままバックスに返していたのは、監督の指示なんだろうか?。私には無駄な動きに見えたし、もっと「前を向いたブレー」が出来るはずなのに、と思ってイライラしながら見ていた。
中盤で前を伺わないで、いつ前線にボールを送り込むのか?。ここはサッサと「ウィングに預けて」自分は裏に走り込むとかしないと、いつまで経っても局面は打開できないと思う。まず両サイドにボールが入らないとサッカーは始まらない。それをやるためのパス回しであるはずだ。そこに日本代表の問題点があった。
○ 私の考えは、ボールを持ったら「前は3人で、必ずゴールまで持っていってシュートで終わる」というサッカーである。今回の日本のような「一人で走ってシュート」という破れかぶれのカウンターではなく、キチンとブログラムされた「3人で連携してシュートまで持っていく」攻撃力を付けることが、日本代表を「ベスト4常連国」にするカギである。まずこれを身に付けて、それからアルゼンチンのような「ポゼッション・サッカー」を学べば良い。
まず最初は3人の攻撃を覚えること。例えばスペインに勝った「モロッコ」のようなアグレッシブなサッカーである。日本が目指すのは、こういう野性味溢れた「肉を切らせて骨を断つ」サッカーが一番適していると思う。幸い東洋人(特に日本人)は、最初の5mのダッシュでは「世界一速い」との評判がある。これを活かさないで何をやるというのだ。中盤でボール奪取したら、躊躇せず前線に送って「FWで点を取る」サッカーこそ、日本代表が目指すべきであろう。3人がボールを受けたらディフェンスの隊形が整う前に切れ込んで、めちゃくちゃにシュートするのである。下手な鉄砲も「数打ちゃ当たる」方式だ。そうすることで相手ディフェンダーの意識も、攻撃のサポートから「守備を固める」に変わって来る。
そこで必要になるのが何よりも「密集地帯でのシュート技術」である。ディフェンスはゴール前に「必ず密集している」と思って、そこを突破するのではなく「密集の状態」で得点まで持っていくのだ。例えばメッシの「地を這うような」正確なシュートを身につけろ、とは言わないが、少なくとも「キーパーのいない所に蹴る」技術位は覚えておいて欲しい。
以上、言いたい放題書いてしまったが、クロアチア戦でのPK失敗の鬱憤を晴らそうと、いつもより長めの投稿となってしまった。まあ、これで思い残すこともなくなったので、これから「最強の4カ国」による熱い闘いを見られるというものである。私の予想はフランス対アルゼンチンの決勝で、優勝はメッシ率いるアルゼンチンと見た。
今年のWカップは「最後はメッシ悲願の優勝」で幕を閉じたいと願っている(そうなればいいな・・・)。
前編と中編もよろしく!
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