明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

ニュースに一言(15)白井審判の問題は野球界のルールの問題

2022-05-01 20:57:53 | スポーツ・ゴルフ

① 審判は判定は「絶対」という神話

問題点の一つには、審判の判定は絶対だという「規則」にあると思う。審判だって人間だから、思わず勢いで間違った判定をしてしまうことだってあるだろう。例え内心では「しまった」と思っていても、審判は「間違えました」と言うことは出来ない。確かに規則には、ストライクゾーンの外を通った球は「ボールだ」と書いてある。投球はストライクかボールか、二者択一しかない。実に明快である。ところが、球がストライクゾーンの「内側を通ったのか外側だったのか」を判断するのは、「人の眼」なのだ。つまり、実は「誰が判断するのか」で結果が左右されるのである。ここに全ての問題がある。

そこで、どちらのチームにも属さない、「中立の立場」の審判が必要になった。審判は勿論中立の立場で判定する。しかし審判も人間だから、誤審がない訳じゃない。もし審判が誤審したら、判定に不服のチームは自分達の主張通りに判定が変更されるまで、執拗に食い下がって諦めないだろうし、相手だって同じである。そうなれば試合が中断してクレームが延々と続き、とても試合どころではなくなるだろう。それに、やたらと誤審を追求し責任を取らせていたら、審判を引き受ける人がいなくなってしまう。そこでお互い一定の範囲の誤審には「目を瞑り」、一度下した判定は絶対に「覆らない」と言う「暗黙のルール」を取り決めたのである(これは私の想像)。だから野球のルールでは、審判だって間違うこともあるとした上で「これを受け入れ」、審判の判定は「これが最終決定」と決めているのである。

これは、正しいとか間違っているとかの「事実」ではなく、あくまで「審判がそう思う」ことを「両チームが受け入れる」ことで試合が成立するようにした、ということだ。例えば、打球が両翼のポールの「どちら側を通ったか」で本塁打とファールが分かれる。本当は内側を通っていたのにも関わらず。審判が「ファール」と判定すれば、どんなに選手や監督が抗議しても「ファール」なのである。事実は確かに「内側を通った」から、規則によれば本塁打になる筈なのだが、審判が「いや、外側だ」と言えば「外側なのである」。事実は内側だけれど、審判の目には「外側に見えた」と言うこと。だから、記録はファールになる。今回のケースで言うと、佐々木投手の投げた球が「規則にあるストライクゾーンを通過しているかどうか」について、佐々木投手と白井審判の見方が違っていたという、よくある話なのだ。

白井審判にしてみれば、「審判である私」がボールと判断したのだから、誰が何と言おうと「ボールである」と規則に従って主張するだろう。これは相談して決めたり、投手や打者の意見を聞いて判断することではない、という信念でもある。白井審判の判定は、規則に則って「ボールと宣告」された。世論も判断自体をどうこう言っている訳ではないようである。佐々木投手が不服であろうとなかろうと、白井審判がボールとコールすれば、結論はボールなのである。ここまでは正しい流れだ。

○ ストライク・ボールの判定は事実がどうであるかの前に、「審判がどう思うか」で決まる

② 審判の人格

問題は、佐々木投手が判定に不服な態度を示したのに怒った白井審判が、マウンドの方に詰め寄って注意したことにある。なぜ彼はこれほど怒ったのか?。これは間違いなく「白井審判の過剰防衛反応」である。審判の判断は絶対優位なのだから、佐々木投手が不服だろうが何だろうが、お構いなしに自分の仕事を粛々としていればよかったのだ。いちいち感情的になって行動する時点で、白井審判の「審判失格」である。佐々木投手が不服そうな顔をしたとか、マウンドを降りて審判の方に歩いたとか、色々報道されているが、別に文句をつけに白井審判のところに行った訳じゃなく、「自分はストライクだと思う」と正直に態度に表しただけのようだ。野球では「態度に出すだけ」でもダメだそうだが、私などサッカーを見ているものにしてみれば、審判の判定に不服な態度などは「日常茶飯事」だから何とも思わないのである。むしろ選手にしてみれば、ファンの前で一生懸命プレーしていることをアピールする意味でも、審判に抗議することは「当然必要」なことではないだろうか。特にゴール前の「ハンドの判定」には、選手たちの猛抗議があって当然だし、ファンもそれを望んでいる。しかし、判定は覆らない。審判は自分の判断に絶対の自信を持つ必要があり、だからこそ誰が何と言っても耳を貸さない冷静さが求められるのだ。それがスポーツの原点であり、それだから「成立する」とも言えるわけで、結局は、ファンは審判の判定も含めて「サッカーを楽しんでいる」と言うことなんだと思う。判定は判定。感情的になる理由は、何も無い。

○ 白井審判は、自分の判定に自信を持っていなくてはならない。だから佐々木投手が不服の態度を表に出しても、「平気の平左で黙殺する」べきだったのである。それが出来ないで感情のままに行動してしまうような人間は、審判をする資格はない。

③ 審判をロボットに任せる

ここでの問題は、判断に疑問が出たときに「当事者同士で決着させる」というやり方が正しいかどうかである。佐々木投手が判定に不服の態度を表に出した点が問題なら、その原因である白井審判が注意をするのではなく、「第三者の裁定者」が判断して注意するなり退場にするなり処置すれば良いのでは無いだろうか。白井審判員は何も間違ったことをしているわけでは無いので、淡々と試合を続ければ良いだけである。ところがマウンドの方に自分から詰め寄るという問題を起こしてしまった。ところが野球規則では、問題を起こした張本人の白井審判に相手投手を退場にできる権限を与えている、というのは問題ありすぎだろうと私は思う。今回の場合を裁判に例えるなら、佐々木投手が被告で白井審判が原告という役回りだ。ならば、別に「裁判官」が必要なのは当然である。サッカーでもそういう問題が前からあって、ゴールに入ったかどうかの判定に「カメラとビデオ」が導入された。そのほかにも特に重要な判定については、近年「 VAR 」というビデオ・アシスト・チームが別室でサポートして、審判の判断に「より多くの情報を提供」して、場合によっては審判が判定を「修正」することが「可能になった」という経緯がある。

審判が「ハンド」と思っても実際は「セーフ」の場合もあり、この仕組みが導入されてからは、判定を変えることが「誰も傷つけることなく」可能になったのである。この誰も傷つけることなくと言うのが大事なことで、審判が VAR を参考にすると宣言すれば、自由にビデオ映像を見て、改めて自身の判断の正しさを「検証」できるのだ。勿論、場合によっては判断を修正して「より正しい判定」を行うことが出来る。これは審判の「見ている位置」が問題の起きた場所と離れていて、むしろ会場内のファンが見ている「大型画面の映像」の方が、より正確に状況を確認出来る、という事実が頻繁に出てきたからだ。サッカーは見ている角度によっては、ラインを越えたかどうかという判定も「カメラのほうが審判より正確に」判定出来るのである。これはテニスやバドミントンの試合でも「人の目よりカメラの映像」を信用する時代になって来たことでも分かる。だから野球でも「ビデオ審判を要求出来る」とし、その権利を一試合に2回とすれば良いと思う。要求が正しければ、回数は減らない仕組みである。人間の目は信用出来ないから、映像を見て判断しようという「一つの時代の流れ」であろう。勿論、サッカーの「ハンド」という違反は、あくまで「意図して手や腕でボールに触った場合」という条件が付く。ただ手に触っている映像があるからといって、それが反則とは限らないのだ。だから最終的には、「審判の判断」が優先される。

しかし大事なことは、審判も間違いを認めて「判定を修正できる」道をつけた、という点だ。これにより我々ファンも「誤審に対する不満」が大幅に解消された。審判を「神」から「人間に戻した」瞬間である。しかしサッカーと違って、野球の審判は「一番近くで見ている」唯一の裁定者である。審判以外に正しく判断できる人間が「理論的にいない」というところが、ちょっと問題を複雑にしている。とにかく「ストライクとボールの判定以外」については、ビデオ判定方式を導入すべきだろう。

○ 人間は間違えるが、機械は間違えない。これは現代人共通の認識である。どんなに紛糾している判定も、映像を見せれば「答えは一発で」出る。

結論として、今回の白井審判問題は「白井審判の5試合出場停止」で決着!、ということに落ち着きそうだ。今に「審判などいらなくなってしまうんじゃないか」と心配される方もいるかもしれないが、アマチュアでスポーツを楽しむ場合にはそういう機器の完備している試合場ばかりではないと思うので、まだまだ「審判の需要」は十分にあると考えられる。審判もプレーヤーの一員として「試合を上手く作り上げる」役目があることを自覚し、自分の判断が絶対だなどと思わないで、選手たちにも自分の判断の根拠をしっかりと説明出来なきゃいけないと思う。高圧的に判定を押し付けるのではなく、もし間違っていたら「訂正する」くらいの勇気を持ちたいものだ。もし審判がそういう真摯な態度で笛を吹いているのなら、選手も審判を尊重して「質問なり疑問点の確認なり」をするように変化していくはずである。そして、審判の「正義」を追求する姿勢はいずれ周りの人をも巻き込んで、戦っている選手達からも「信頼できる人間」として認められる存在になることと思う。そうなれば本来スポーツが持っている「楽しさ」が、十分に発揮されることであろう。

今回の問題は、白井審判員はすぐカッとなる「信頼出来ない」人間だった、ということのようだ。何より、楽しい筈の野球が「つまらないもの」になったことは、白井審判員の重く反省すべき点である。なお、佐々木投手に「不服顔をするな」というのは、彼に「人格者たれ!」と言っているようなものであり、20歳そこそこの若者に要求するには「それはちょっとお門違いでは無いか」と私は思う。いくらルールブックに「不服顔はダメ」と書いてあっても、そういうワケ知り顔の道徳論者の注意では、佐々木投手の心には「刺さらない」のではないだろうか。それよりむしろ、野球というのは「審判によって、白黒どちらにもなるゲームだ」ということを諄々と教えさとし、その審判を味方につける方法を「コッソリ教えてくれる人」の方が、よっぽどプロ野球選手としては有難いと思う。

まあ、そういう「現場での心理テクニック」の必要性・有効性は確かにその通りだとは思うが、正々堂々とスポーツマンシップを発揮するはずの野球人が、そういう「人間の操縦法」を覚えるべきだと言うのはどうなんだろう?。なんか、そういう「現場ではこうだ」的な意見をいう人には「つまらない世渡り術」を後生大事に考えているように思えて、私なぞはついついガッカリしてしまうのである。世の中いろいろ意見が飛び交っているが、そろそろ野球もデジタル化の恩恵を受けても良い頃では無いかと思う。

それで私の提言をいくつか書いてみた。

1、審判も試合の1プレーヤーという立場をはっきりと認め、審判と選手・監督との「上に立つ裁定者」を設置して、審判に関わる揉め事の「裁定」をその場で行うものとする。今回のことで言えば、白井審判には「注意」を出すのが正しい。審判には感情はいらない。機械のように正確に、が審判のモットーであるべきだ。

2、審判もプレーヤーであるから、両方のチームで「この審判がいい」という指定推薦方法を取り、両者が一致する「技術や判断力の高い、信頼できる審判」を選んで試合する。元々自分達の選んだ審判だから、文句言う回数も自然と減るだろうという考えである。今回のことで言えば、白井審判はそもそもカッとなりやすく、多分どちらのチームも「選ばない」であろう。こういう不人気な審判は要らない。

3、イエローカードとレッドカードを導入し、一枚で「注意」、2枚で「退場」とする。勿論、一発退場もあるし、当然「審判も対象」になる。イエローカード5枚で出場停止5試合なんて言うのも良いと思う。今回のことで言えば、審判の判定が問題になっているわけで、白井審判員が「当事者」である。当然、イエローカードの対象であろう。

4、判定は「審判がどう見た」かであるから、どうしても「視力」が重要になってくる。年を取ってくれば「動体視力」だって衰えて不思議はない。80歳になって家族が旦那の運転免許を返納させようとすると、急に怒り出す「老害親父」がまだまだ多いという。今回のことで言えば、白井審判員が審判としての能力に問題があったとは思はないが、それでも可能な限り「ビデオで判定できるシステム」を導入するのがベターだ。審判は目に見える事実「以外」の、妨害行為などの「選手の意図」を判定することにすればいい。

5、そこで、ビデオ導入に障害になるのが、「ストライクゾーンのバラツキ」である。現行ルールでは「打者の体格・構え」によってストライクゾーンが違っているのが問題だ。これからは打者ごとに変えるのをやめて、ストライクゾーンの「上下の高さを固定」にすると良いのではないか。これは、打者の背の「高い低い」によって「有利不利」が出るので一見不公平なように感じられるかもしれないが、バスケットでもバレーでも、何なら陸上競技の殆どが「そういう不公平を乗り越えて」試合が成り立っているのが現状である。だから野球もストライクゾーンを「物理的に固定」すれば、カメラと AI で「簡単に」ストライクの判定できる理屈だ。むしろ「人間の目以上に正確に」判定できると思う(1mmの千分の1の精度で判定可能だと思う)。そうすれば誰だって「納得」して、文句を言う人は「いなくなる」と思うけど、どうだろう。

以上、ざっと思いつくままに挙げてみました。私は野球は殆ど見ないのですが、こういう「つまらないこと」で話が盛り上がるのでなく、選手のスーパープレイで盛り上がって欲しいものです。そういう意味では白井審判は、自分のことを「なんか立派な仕事をしている偉い人間」と勘違いしていたんじゃ無いでしょうか。誰も審判のことなんか見ていませんよね。見たいのは選手のスーパープレイです。審判はフィールドに落ちている「石ころ」だ、という言葉があります。この言葉の重みを受け止めて、彼には今後の審判の「信頼回復」に邁進してもらいたいと思います。


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