律ゾリステンというところ~演奏会によせて~
コートの襟を立ててマフラーをぐるぐる巻きにしても、一歩外に出ると寒さが体に染み込んで来て思わず急ぎ足になってしまう季節、そんな季節がやって来ました。
小さい頃私はサンタクロースの存在をかたく信じていて、寒さに反比例するように毎年この季節になると気持ちはどんどんわくわくして来たものです。あの頃の気持ちの高まりは今ではちょっと不思議な気もするのですが、多分信じられる何かがあったこと、そしてささやかな想像力が生み出した魔法だったのでしょう。
あれから何年も経って、魔法は少しずつとけていき、ある日気がついてみると自分が何かを見失ったようなたまらない寂しさにつかまっていました。でも今、私は昔信じていたもの、ちょっと前にいっとき見失ったものが何だかはっきり分かるのです。そして、私達の小さなサークルはその何かに包まれていることを感じます。
「律ゾリステン」とはソリストたちの音という意味だそうですが、その名のとおり、ここに集う人たちの音は個性が強くてみんなの性格を表すかのような実に様々な音がします。(お聞き苦しい点もあるかと思いますが…)それもそのはず、みんないろんな学校から様々な経過をへてここにやって来ているのですから。好みの音楽ひとつとってもバッハから現代音楽、はてはロックまで、中には「余暇には音楽を聞かない」という人もいます。そんないろんな人たちが自分の個性もそのままに、その一瞬に、同じものに向かって一生懸命になって心を通わせているのは、やっぱり不思議というほかありません。
みんなと弾いているのは本当に楽しくて、演奏会なんて来なければいいとも思っていたのですが、本日来ていただいた皆様にこの半年間の思い出の一部分でもお伝えできればとてもうれしいです。
(M・A)