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【書評】「サボり上手な動物たち-海の中から新発見」

2013年09月20日 | 書評

私たち人間が直接目で観察できる動物たちの姿は、彼らの生活の一部だけ。まして、海の中に棲む動物となると、水中での様子を観察するのは、容易なことではありません。本書では、そうした水生生物に記録計を取り付け、動物自身に行動を記録させる「バイオロギング」という研究手法が紹介されています。

             

動物たちに記録計をつけると、どこまで速く泳げるのか?どこまで深く潜れるのか?といった最大記録が気になってしまいますよね。誰だって「エンペラーペンギンは最大564 mの潜水記録がある。」と、言われると、じぇじぇっと驚いてしまいます。

ところが、研究者は最大記録に捉われてばかりではいけないそうです。普段どの程度の深さ、速さで潜っているのかを知ることで、その動物の日常を知ることが出来るのです。確かに、陸上の動物だって常に全力疾走はしていないですよね。バイオロギングによって動物たちが非常に効率よくエネルギーを使って行動している様子が分かってきました。彼らはとても上手にサボっていたのです。

           

 本書は研究者ご自身によって書かれているので、長年行われてきた研究を体感することができます。イキイキと紹介される様々なエピソードは、まるで、著者が友人に楽しく語りかけるかのようです。

特に研究者の視点から記録計のデータを読み解くところは印象的でした。私たちはついつい人間の常識を動物たちの行動にも当てはめてしまいがちですが、それが動物たちにとって常識とは限らないのですよね。研究者の方の視点を知る、というのはとても刺激的です。

             

技術の発達によってより詳細な調査が可能となっていくバイオロギング。記録計から得られたデータを研究者はどのように選別して、動物たちの行動を解き明かすのか?読んだらきっと本書について誰かと話したくなりますよ。私もいつか本書から飛び出したようなサイエンスカフェを開催してみたいです☆

 

記事執筆 : 古垣内 彩

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今回ご紹介した本は・・・

書名:サボり上手な動物たちー海の中から新発見

著者:佐藤克文さん(東京大学大気海洋研究所准教授)

    森阪匡通さん(京都大学野生動物研究センター特定助教)

出版社:岩波書店

定価:本体1500円(税別)

発行:2013年2月

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