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特養で雛祭りのハワイアンコンサートが開かれた。
廊下に椅子を並べて老人たちを座らせ、ボランティアの歌手と演奏家の夫婦が、小一時間プロ級の腕前を披露して行った。
しかし、客層に合わせるなら、ハワイアンよりも文部省唱歌であろう。午後のおやつの時間に掛かったこともあり、我が老婦人はすっかり「御冠(おかんむり)」であった。
演奏の合間々々に、「モウオ帰リクダサーイ」と小さな声で叫び、演奏が終了すると(頼まれもしないのに)猛烈な勢いで椅子を片付け始めた。昨年末まで「寝たきり」であったとは信じられぬ力強さであった。
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