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神のためになさんと欲せば、まず自己に死せざるべからず。党派心なり、愛国心なり、いまだ自己のその中に混合するあり。自己に死して後、われははじめて神において生く。
神に生きて、われに恐怖心なし。恐怖去って、われに明通あり。神のためにする伝道に、憂慮、政略、方法のわれの事業を混乱せしむるなし。
世界はわれに化すべきものにして、われは世界に屈服投合すべきものにあらず。世は同音一斉にかなたに立つも、われは断々乎としてひとりこなたに立つべし。
われに松柏の霜雪にしぼまざるあり。われに大嶽の厳として動かざるあり。われの存在は万人を利し、われの一声は波涛をしずむ。神のためにするありて、伝道ははじめて世を益するにいたる。 (内村鑑三)
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