司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

一括申請の可否(所有権登記名義人住所変更登記)

2024-07-29 16:50:44 | 不動産登記

登記簿上の住所や氏名が現在のものと相違している場合には、所有権登記名義人住所変更登記をするのですが、これが簡単なようで奥が深く判断に迷うケースに度々遭遇します。

今回もそんなケースに遭遇したので、備忘録として残しておきます。

甲区

1番 A(持分30の6)※登記簿上の住所B(現住所はC)

2番 A(持分30分の5)※登記簿上の住所B(現住所はC)

Aが2回にわたり所有権(持分)を取得しているケースで、甲区1番につき、登記簿上の住所Bから現住所Cへ所有権登記名義人住所変更登記、甲区2番につき、登記簿上の住所Bから現住所Cへ所有権登記名義人住所更正登記をする場合、一括申請申請は出来ず、格別に申請する必要があります(登記研究182号160)。

ちなみに甲区1番、2番ともに所有権登記名義人住所変更登記であれば、「1番、2番所有権登記名義人住所変更登記」として一括申請は可能です。


ローカルルール

2024-07-10 15:13:19 | 不動産登記

相談者が遠方の不動産を所有していてその相続登記を司法書士に依頼する際に、相談者の近くの司法書士か、不動産の所在地にある司法書士に依頼した方がいいのかという相談が時々あります。相談者の都合がいい方でというのが答えですが、今はオンライン申請や郵送申請も可能なので、全国どこでも対応は可能です。なのでわざわざ不動産の所在地の司法書士に依頼しなくても、相談者の近くの司法書士に依頼した方がスムーズなのではないかと思います。ただ実家が遠方にあり、度々帰省することがあるようでしたら、不動産のある遠方の司法書士に依頼することもあるかと思いますので、本当にケースバイケースで相談者の都合がいい方でということになります。

先日、実家(遠方)の20年近く前に死亡した父親名義の相続登記の依頼がありました。母親をこちらに呼び寄せてしまったので、ずっと空家状態のようです。

評価証明書を取り寄せようと思い、そこの役場のHPを見たところ、司法書士が請求する際には、そこの県司法書士会指定の様式の書式を使用すれば無料で取得できるとのことでした。私はそこの県所属の司法書士ではないためその様式を入手できませんので、他県の司法書士が無料で取得する方法はないのか役場へ電話で確認したところ、やはり県司法書士会指定の様式でないと無料にはできないとの回答だったので、有料の評価証明書を入手するしかありませんでした。

評価証明書やその他市町村が発行する書類の中には、全国一律ではなくローカルルールがあるものがいくつかあるので、地元以外の書類を取り寄せる場合には、事前にしっかり確認する必要があります。


根抵当権の追加設定登記をしようとしたところ、、、

2024-07-04 14:05:09 | 不動産登記

根抵当権の追加設定をしようとしたところ、よくよく登記簿を見ると当該根抵当権は20数年前に既に元本確定の登記が入っていました。その後保証協会に一部代位弁済がされ、さらに数年後保証協会に代位弁済された部分は解除されていました。当該物件には担保が多数設定されており、追加設定するのに元本確定はないだろうという先入観もあったりで、うっかり見落とすところでした。

元本が確定している以上追加設定は出来ませんので、追加設定しようとした物件には新規で根抵当権を設定することになりました。

いつもの当たり前や先入観が時として違うこともあり得るので、常に慎重であるよう戒めとして記載しておきます。


監査役設置会社を廃止する際には

2024-07-03 10:17:34 | 商業法人登記

監査役を置くのをやめる場合には、定款変更をして「監査役設置会社の定めの廃止」の手続きをする必要があるのですが、その際に「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨の登記がされている場合には、そちらも併せて廃止の登記をする必要があります。監査役設置会社の定めの廃止をすれば自動的に抹消されるわけではありません。

うっかり忘れそうだったので、備忘録として記載しておきます。

なお平成27年5月1日以降最初の監査役の退任の登記である場合には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨の登記及び廃止の登記をする必要はなく、当該監査役の退任登記だけをすればよし。


相続開始前の遺産の使い込み

2024-05-13 10:09:58 | 相続

相続登記手続きのご依頼を受けた中で、共同相続人の一人が被相続人の預貯金を被相続人の生前に勝手に引き出していたケースがありました。引き出した本人(相続人A)はその後亡くなり、Aの相続人であるBが引き出した分を戻すということで合意をし、その点については全く争いはありません。しかし引き戻した分を遺産分割で相続した相続人に振り込む場合、贈与と見做されないようにするため、遺産分割協議書の中に、次のことを盛り込むことにしました。

①共同相続人全員が、引き出した本人(相続人A)が〇〇円引き出して受領している旨の確認

②共同相続人全員が、引き出した金額が被相続人の遺産である旨の確認及びそれを相続人Cが取得する。

次のとおり記載

「〇〇銀行普通預金 口座番号の相続開始前の出金〇〇円に係る返還請求権」

③BがCに対し、〇〇円(引き出された金額)を支払う。

預貯金等の遺産の使い込みを取り戻す法的根拠は、不当利得返還請求権(又は不法行為)になります。

被相続人が行使するはずだった不当利得返還請求権を相続したという構成です。