司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

相続放棄に関するあれこれ②【香典、お墓など】

2021-08-03 16:03:43 | 相続

相続放棄に関する相談のうち、「香典を受け取ったら相続放棄できないのか」「相続放棄をしたらお墓は引き継げないのか」というものもあります。

先ず香典についてですが、「香典とは喪主への贈与」とされているため、被相続人の相続財産を構成するものではありません。そのため相続放棄をしても香典を受け取ることは可能です。さらに香典が余った場合、それを使ってしまったら相続放棄に影響するか、ですがそもそも被相続人の相続財産ではないので問題ありません。

次にお墓等についてはどうでしょうか。

墓地、墓石、仏壇仏具といったものは「祭祀財産」とされています。

祭祀財産は法定相続人が相続するものではなく、民法上「祭祀承継者」が承継するものとされています。

そのためお墓についても、被相続人の相続財産にはならないため、相続放棄をしたとしても承継することは可能です。


相続放棄に関するあれこれ①【生命保険金について】

2021-07-30 11:56:31 | 相続

もうすぐお盆ですね。

地域によっては7月にお盆というところもあるようですが、お盆ということで相続、相続放棄に関する相談でよくあることについて、知識の整理も兼ねて数回にわけて纏めてみたいと思います。

今回は生命保険金について。

よくある相談が「相続放棄をしても生命保険を受け取ることができますか?」

答えは受取人が誰になっているかで違います。

先ずは受取人が指定されているものについては、相続放棄をしていても受け取ることができます。

なぜなら生命保険は、生命保険契約に基づいて受取人が保険会社から受け取るものであるため、「受取人固有の財産」となり、民法上の相続財産とはならないからです。ちなみに民法上の財産とは「亡くなった人の財産に関する権利義務」となっています。

それでは、受取人が亡くなった被相続人となっている場合はどうでしょうか。

これは民法上の相続財産「亡くなった人の財産に関する権利義務」に当たるため、相続放棄をしたら受け取ることは出来ません。

他にケースバイケースとして、受取人の指定がない場合、保険約款に「保険受取人の指定のない時は、被保険者の相続人に支払う」という約款があれば、保険金受取人を相続人と指定したとされ受取りが可能とされています。

というわけで、受取人が指定されていれば相続放棄をしても生命保険金を受け取ることは問題ないのですが、相続税法上の生命保険金等に関する非課税枠の制度が使えなくなるようです。この辺りは税理士等の専門家に相談した方が良さそうです。

どうやら税法上は相続放棄した人も相続人としてカウントされるようで(もちろん財産を相続することは出来ませんが)、考え方が違うようですね。

 


直系尊属に代襲相続はない

2020-12-18 14:36:51 | 相続

先日、とある相続で、被相続人に配偶者及び子供はなく、直系尊属である母親が相続人になるケースがありました。父親は既に他界していましたが、その時ふと、父親の上の世代、つまり被相続人からみて祖父、祖母に相続権がいくのでは?と考えてしまいましたが、答えはNO!

相続人の子供が先に亡くなっているのでその子供が相続人になるという代襲相続人の規定は、直系尊属が相続人になる場合には規定がなく当てはまりません。

そのため、今回のケースでは母親だけが相続人となり、亡父の上の世代が代襲相続をすることはありません。

年齢からいって祖父母も既に他界していると思いますが、代襲相続しないので祖父母の出生から死亡までの戸籍謄本を集める必要はありませんでした。

あまり頻繁にあるケースではないかと思いますが、配偶者及び子供がないまま比較的若くして亡くなってしまうと起こりうる話かもしれません。

 


新しい遺留分制度

2020-10-05 09:44:46 | 相続

9月26日(土)の会員研修会第2講「新しい遺留分制度」のまとめ。

相続法改正で変わったところ。

☆まず遺留分を算定する財産のうち、生前贈与について

①一年前の贈与

②贈与者受贈者双方が遺留分を害すると知って贈与したものについては、一年以上前の贈与も含む。

③相続人に対する贈与は、10年前のものまで含む。但し、婚姻や養子縁組、生計の資本といった特別受益に該当するものに限る。

☆生命保険の扱いについて

受取人が第三者である場合には遺留分算定に含まれないが(平成14年判決あり)、相続人が受取人の場合には、特別受益として遺留分算定に含まれる(平成16年決定あり)。

☆死亡退職金についてはケースバイケース

その他、遺留分請求の除斥期間は10年だが、金銭債権は5年の時効にかかること、金銭にかえて代物弁済で遺留分を代物弁済で支払った時は、譲渡所得税がかかること(国税庁の通達あり)など、論点がたくさんあり、とても勉強になりました。

 

 


配偶者居住権

2020-10-02 10:11:07 | 相続

9月26日(土)、静岡県司法書士会の研修会に参加しました。

テーマは「配偶者居住権」「新しい遺留分制度」についての2本立てでした。

本来なら昨年度の研修会で行うはずだったところ、新型コロナウイルスの影響で研修会が中止になってしまったため、録画配信での研修会となりました。

どちらもとても内容が充実したもので、知識の整理にとても役立ちました。

先ずは「配偶者居住権」について簡単にまとめておきます。

「配偶者居住権」とは、建物所有者である配偶者の死亡後において、もう一方の配偶者が引き続き住み続けられるよう、もう一方の配偶者を保護する制度です。

二次相続で節税の効果があるとかで、税理士も注目しているとか。

令和2年4月1日に施行され、令和2年4月1日以降に発生した相続について適用。また令和2年4月1日以前に作成された遺言書がある場合には、この制度は適用されません。

なお、「配偶者居住権」には「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2種類があります。

☆配偶者短期居住権

民法1037条の規定により当然に発生する。

無償で居住していたことが必要。被相続人が配偶者以外の者と共有の場合でも成立する。相続放棄をした場合でも権利は消滅しない。使用する権利のみが認められ、収益する権利(家賃を受け取るなど)は認められない。また、この権利は登記できないため、第三者に対抗することは出来ない。存続期間は、相続開始から6か月または遺産分割協議が成立した遅い日までの間。

☆配偶者居住権

遺贈または遺産分割協議で成立する。

被相続人が配偶者以外の者と共有の場合には成立しない。店舗併用住宅の場合には、建物全体について成立する。存続期間は、配偶者が生きている間または期間を定めた時はその期間。登記は出来る。

他にも細かいところはありますが、忘れないように簡単にまとめてみました。