司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

併存的債務引受による債務者変更

2023-12-14 14:57:57 | 不動産登記

抵当権の債務引受のうち、「併存的債務引受」について整理したいと思います。

併存的債務引受とは、近年の民法改正前の「重畳的債務引受」のことです。債務者を追加して連帯債務者とするものです。登記事項も年月日重畳的債務引受から年月日併存的債務引受に変わりました。

併存的債務引受は、①債権者、債務者及び引受人の三者による合意 ②債権者と引受人との契約 ③債務者と引受人との契約のによって成立するとされています。ただし③の場合には、債権者が引受人に対して承諾をした時に効力が生じます。②の場合には、債務者の承諾は不要です。

ただし併存的債務引受の効果は当然担保提供者にも及ぶわけではないので、担保提供者が契約当事者でない場合には、別途債権者と担保提供者の合意は必要となります。一例として登記原因証明情報の登記の原因となる事実又は法律行為の記載例をあげておきます。このケースでは、①の債権者、債務者及び引受人の三者による合意によるもので、債務者が担保提供者であるケースです。

(1)令和5年〇月〇日、債権者Aと債務者B、引受人Cとの間で、本件不動産上の抵当権(平成〇年〇月〇日〇〇地方法務局〇〇支局受付第〇号)の被担保債権である平成〇年〇月〇日金銭消費貸借契約に基づくBのAに対して負担する債務について、CはBの債務を併存的に引き受け、連帯して履行する旨合意した。

(2)よって、同日、本件抵当権の債務者は、連帯債務者B、Cに変更された。


相続登記後に相続放棄をしていることが判明し、錯誤により所有権移転登記を抹消する場合

2023-12-07 11:12:12 | 不動産登記

先日ある相続登記が完了したところ、相続した相続人が相続放棄をしていたことが判明しました。

そもそも相続が発生したのは3年前で、本人の意向で相続放棄をしたのではなく、税理士のアドバイスがあって相続放棄をした経緯があるため、税理士の指摘を受けて相続放棄をしていたことに後から気が付いたようです。

相続放棄の手続きをしたのは、その税理士の知り合いの司法書士だったようですが、当時、その司法書士から相続登記の手続きを一緒にしたらどうかという話があったものの、本人が急がなくていいのであれば今すぐにやる必要もないと判断してそのまま放置していたようです。私はその税理士とは面識はないので、そのような経緯を知る由もなく、本人も忘れていたのだから仕方がなかったとはいえ、登録免許税を2重に支払わなければならず、痛い出費となってしまいます。今回の登録免許税は2万円程度だったのでまだいい方だと思いますが、これが何十万だと思うとぞっとします。来年4月から相続登記義務化が始まりますが、やはり相続登記は速やかに手続きをした方がいいと思います。

ところで今回のように一旦相続登記をしたものの、後に相続人が相続放棄をしていたことを失念していたため、相続登記を抹消する場合ですが、登記原因は民法95条1項には該当しないので「年月日取消」ではなく「錯誤」になります。登記原因証明情報は、相続放棄申述受理通知書と権利者及び義務者の戸籍謄本を添付したのですが、法務局から報告形式の登記原因証明情報を作成してほしいと指摘を受けました。この辺りは、法務局ごと取扱いが違うのかもしれません。

参考までに登記原因証明情報に記載する「登記の原因となる事実又は法律行為」の記載例を記載しておきます。

(1)令和〇年〇月〇日、本件不動産の名義人Aの死亡により相続が開始し、Bが相続したとしたとしてB名義への所有権移転登記(令和〇年〇月〇日〇〇地方法務局〇〇支局受付第〇号)がなされた。

(2)しかしBは〇〇家庭裁判所に、Aの相続につき相続を放棄する旨の申述をしており、これが受理されていた。

(3)よって、Bは相続人ではなく、B名義の登記は無効であるので抹消する。


抵当権抹消登記における代理権不消滅

2023-08-04 14:10:06 | 不動産登記

住宅金融支援機構の抵当権抹消登記をご自身で手続きをしようと法務局へ聞きに行ったが、聞いても理解できなかったので手続きをお願いしたいという依頼がありました。

弁済日は昨年(令和4年)10月で本人宛に書類が届いたのもその頃でした。私が書類を預かったのは、先月7月でした。委任状の代理人の記載を見ると、前任者のものでした。現在の代理人とは違いますが、不動産登記法第17条の代理権不消滅の規定により、当時の代理人の委任状でも使用することは可能です。但し、申請書の義務者欄は、「代理人〇〇〇〇(本件申請時の代理人〇〇〇〇)」と当時と現在の代理人を表記する必要があります。他に申請書のその他事項欄に「登記義務者の代理人〇〇〇〇の代理権は消滅している。代理権を有していた時期は年月日~年月日である。」の記載をすべきか迷いました。会社法人等番号を提供すれば、代理権を有していた時期は確認できるのだから記載はしませんででした。結果、特に指摘を受けることはなく無事登記は完了しました。しかし法務局によっては記載を要求するところもあるようで、一律の取扱いでもないようです。

今回はそこまで古くはないものだったので良かったのですが、いくら代理権不消滅の規定が使えるからといってもあまり古いものだと、代理権を有していた時期を確認する手間がかかってしまいます。それならば住宅金融支援機構であれば書類の再発行をしてもらった方が早いように思います。

ローンが完済し、そのまま手続きを放置するケースはたまにみられます。放置すれば面倒や費用が重なってきますので、速やかに依頼していただきたいです。


利益相反議事録に署名した者の住所が登記簿上と違うとき

2023-07-06 11:13:03 | 不動産登記

最近不動産の売買で、利益相反に該当するケースが続きました。その中で代表取締役個人の所有する不動産を会社に売却するものがあり、その行為は利益相反に該当するため、第三者の承諾を証する情報が必要になります。登記簿上の代表取締役の住所が、現在の印鑑証明書の住所と一致していなかったため、先に会社の代表取締役の住所変更登記が必要?確かずっと以前に同じようなケースを取り扱った時、住民票を添付すればよかったと記憶していましたが、曖昧だったため、再度調べてみました。

登記研究531号に「有限会社の社員総会の議事録に添付する印鑑証明書の住所又は氏名と、有限会社の商業登記簿謄本の記載が一致しない場合、当該議事録に変更証明書を添付すれば、当該不動産登記の前提として、商業登記の変更の登記は要しない。」とありました。これは有限会社のケースですが、株式会社も同様です。そういうわけで、当該代表取締役の住所の変遷がわかる住民票を添付して登記手続きが完了しました。とりあえず備忘録として残しておきます。


長期相続登記等未了土地の登記原因証明情報

2023-05-15 10:36:35 | 不動産登記

先日、長期相続登記等未了土地の相続登記の手続きを行いました。

法務局の調査の結果、長期相続登記等未了土地とされた場合、法定相続人の中の一人に対し「長期間相続登記がされていないことの通知」が送付されます。今回はそれに該当し、突然法務局から通知が送られ相談を受けたケースでした。

長期相続登記等未了土地とされるくらいなので、当然、数次相続が発生しており、法定相続人は13名になっていましたが、幸いにも面識のない相続人はおらず、他に法的に問題になる相続人もなく、とてもスムーズに遺産分割を行うことが出来ました。

ところで長期相続登記等未了土地の場合には、法定相続情報が既に法務局で用意されているので、改めて一から相続人を調査する必要がない点ではとても助かりました。さらに登記原因証明情報や住所証明情報に法定相続人情報作成番号を提供することが出来ます。ただし登記原因証明情報については法定相続人作成番号だけでは、誰が相続したのかまではわからないので、別途遺産分割協議書等を添付してほしいと法務局から指摘を受けました。当初添付しようかと思いましたが、結局番号を提供しただけでしたが、それでは足りないのはそうですよね。