司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

(根)抵当権設定契約書を抹消登記の登記原因証明情報とする場合

2024-01-12 10:29:44 | 不動産登記

(根)抵当権の抹消登記をする際に、設定契約証書を登記原因証明情報とすることも可能です。

登記識別情報通知が発行されなかった登記済証時代のものであれば、法務局の登記済の印鑑が押印され受付番号も特定されているので、設定契約書に「年月日、本契約は解除した。(根)抵当権者の表示、印鑑」の旨が記載されていれば、登記原因証明情報として使用できます。

これに対し登記原因証明情報通知が発行されている場合には、法務局の登記済の印鑑が押印されていないので、受付番号もわかりません。その場合には「本証書に基づく(根)抵当権設定契約(令和〇年〇月〇日〇〇地方法務局受付〇号登記済)は、令和〇年〇月〇日解除した。(根)抵当権者の表示、印鑑」のように受付番号が記載されたものであれば、登記原因証明情報として使用できます。受付番号で特定されていないものは、登記原因証明情報の適格性を欠いてしまうので、別途司法書士の方で、「年月日〇〇地方法務局受付〇号登記済」といった旨の記載をする必要があります。また受付番号で特定するのではなく、不動産の乙区順位番号で特定することも可能です。


分筆登記前の売買契約

2024-01-11 09:54:55 | 不動産登記

土地を分筆する前の売買契約も有効な契約として成立します。

契約書には「〇〇市〇〇1-2の一部、宅地、100㎡(分筆予定の地積を記載)」のように記載されているかと思いますが、この状態で登記手続きは出来ませんので、売買の登記は分筆登記が終わってからになります。

そこで分筆登記前の日付を売買の日付と出来るかどうかですが、これも問題ありませんので、分筆登記前の日付で売買の日付とすることは可能です。


売買の日付(農地法の許可が必要な場合)

2023-12-28 10:16:03 | 不動産登記

登記簿上の地目が農地(田、畑)の場合、農地法の許可を得なければ売買の契約の効果は生じないため、登記手続きは出来ません。

通常は売買代金の支払い前に許可を得ている場合がほとんどなので、売買の日付は契約日または売買代金支払日になることが多いと思うのですが、今回は代金支払後に農地法の許可を得ているケースでした。

その場合の売買の日付は「農地法の許可が当事者に到達した日付」になるわけですが、その到達した日付はいつになるのでしょうか。登記研究第190号で「許可書の日付を原因日付として登記申請されても受理される」というものがありますので、許可書に記載された日付(許可した日)が売買の日付となります。

農地法の許可ではなく届出の場合は、届出をした日(受理された日)となります。

 

 


相続による免責的債務引受(その2)

2023-12-27 09:38:14 | 不動産登記

債権者と債務引受人との間の免責的債務債務引受については、以前ブログに記載したとおりです。

https://blog.goo.ne.jp/xiangxiang/e/4ebb2bf99522c32a90f766df8ed9baaf

民法改正により「債務者が免れる債務の担保として設定された担保権については、債権者があらかじめ又は同時に引受人に対する意思表示をすることによって、引受人が負担する債務に移すことができる(民法第472条の4第1項、第2項)」とされました。

新民法の免責的債務引受は、債権者が免責的債務引受による担保移転の意思表示を引受人に対してしなければならないという要件が加わったのです。そのため登記原因証明情報にもその旨を記載する必要があります。改正前の雛型や金融機関による免責的債務引受契約書では、要件が満たされていないことが多いので、司法書士側で要件を満たした登記原因証明情報を作成する必要があります。

参考までに記載例(三面契約の場合、債務者Bは担保設定者)を記しておきます。

登記の原因となる事実又は法律行為

(1)令和〇年〇月〇日、債権者A、債務者B、債務者C及び債務者Dは、本件抵当権の被担保債権であるAに対する債務について、債務者Bが免責的に引き受ける旨の免責的債務引受契約(以下「本件契約」という。)を締結した。

(2)本件契約にかかる債務は、令和〇年〇月〇日債務者Eから相続した債務である。

(3)本件契約の際、債権者Aは、引受人Bに対し、本件抵当権をBが引き受けた債務に移す旨の意思表示をした。

(4)よって令和〇年〇月〇日、本件抵当権の債務者はBに変更された。


海外に住所がある日本人の住所を登記する場合

2023-12-26 15:53:49 | 不動産登記

外国人や海外に住所がある人の不動産登記をする場合、その氏名又は名称及び住所は、外国文字(アルファベット等)で登記することはできません。その外国文字をカタカナに引き直して登記することになります。

ただし中国や台湾、韓国などで漢字が使用されている場合には、法務省で登録されている漢字であればそのまま登記することが可能です。

今回は日本人でアメリカに住所がある例をとりあげます。

アメリカの住所の表記の語順は、次のとおりです。

1,番地、ストリート名(+アパート番号又はスイート番号)

2,市名や郡名

3,州名

4,郵便番号

5,国名

国名は原則正式名で登記するようです。また州については〇〇州としますが、市名や郡名は〇〇市などとはせず、そのまま〇〇と表記すればいいようです。StreetやAvenueも〇〇通りとはせず、〇〇アベニューまたは〇〇ストリートと表記するようです。郵便番号につては登記しませんので、記載しません。

以上から、「アメリカ合衆国〇〇州〇〇、〇〇1212」のように登記されることになると思います。

ちなみにカンマを入れる位置にも決まりがあるようです。①ストリート名の後ろ、②アパート番号又はスイート番号の後ろ、③市名の後ろに入れるのがルールのようです。

今回はストリート名やアパート番号はなかったので、市名の後ろにだけカンマを入れました。