自民党の派閥のパーティー収入不記載事件で、東京地検特捜部が安倍派(清和政策研究会)元会長の森喜朗元首相の関与の有無について確認を進めていることが31日、関係者への取材で分かった。安倍派が20年以上前からパーティー収入の一部を政治資金収支報告書に記載せずに議員にキックバック(還流)していたことも判明。特捜部は、安倍派に影響力を保持する森氏が還流のスキーム維持や議員側からの相談などに関わった可能性も視野に入れ、実態解明に乗り出すもようだ。
関係者によると、特捜部から任意の事情聴取を受けた一部議員は還流分の使い道を聴かれた際、使途先について「森氏が含まれていなかったか確認された」と周囲に説明。議員自身は森氏への資金提供について否定したという。
安倍派は20年以上前から所属議員にパーティー券の販売ノルマを課し、ノルマを超えた分は収支報告書に記載せず一部の議員に還流する慣例を続けてきた。
一時期は還流分だけでなく、一定額を一律に配布する夏の「氷代」、冬の「モチ代」も収支報告書に記載せず、記載が不要な党からの「政策活動費」名目で議員側に渡していたという。
森氏は平成10年に清和政策研究会の会長に就任。12年の首相就任時に小泉純一郎元首相に会長を譲ったが、13年に小泉氏が首相となって派閥を離脱したため、会長に復帰。町村信孝元衆院議長と代わる18年まで務めた。
安倍晋三元首相が令和4年7月に死去した後も、森氏は安倍派幹部らと面会するなどしており、安倍派の会長を空席とした複数の幹部による集団指導体制も森氏の意向が反映されたとされる。
安倍派は同年5月のパーティーで還流を停止するためパーティー券をノルマ以上販売しないよう議員側に通達したが、幹部が協議後の同年夏、撤回して還流。収支報告書にも記載しなかった。
森氏は産経新聞の取材に対し、期日までに回答しなかった。