是枝裕和監督の映画『万引き家族』が、カンヌ国際映画祭で最高賞・パルムドール受賞で話題になっています。
タイトルを聞いて「どうしてこんなタイトルの映画が?」と思ったのは私だけでしょうか。
映画を見ていないので分かりませんが、テーマは絆だとか。
15年ほど前のことを思い出します。
5年生の担任でした。一人のかわいい女の子が転校してきました。
明るくおしゃべりで人なつっこい、身ぎれいな子でした。
生意気にも「先生はブランドのバッグを持ってる?」などと話しかけてくったくがありません。
彼女の持っている文具、身に付けているものはよく見ると、高級ブランドのものばかりです。
おすましの彼女が来てから数ヶ月、ある日突然、教室に母親がやってきて「今から連れて帰ります」と荷物を全部持って帰ってしまいました。
その数時間後、警察官が子どもの所在を確かめに学校へやってきました。
「万引き家族」を捕まえにきたというではありませんか。
驚いて事情を聞くと、祖母(まだ40代で私より若いおばあちゃん!)、母(その実の娘、まだ20代)、娘(小5の娘)が連携して万引きをしている常習犯だといいます。
ブランド品を売買する店で3人は役割分担をし、巧みに盗みを繰り返し、危なくなるとさっさと転居を繰り返しているらしい。
ええっ! ではあの子が身に付けていたのは全部盗品だったのか! 私は唖然としました。
家を訪ねると、すでにもぬけの殻でした。どこへ行ったのか分かりません。
その後、全く音沙汰もなく行方しれずとなりました。
映画『万引き家族』の報道を聞いて、思い出しています。あのときのことを。
自分の想像を超える様々な人生を生きる人々がいる。
直接遭遇することもあれば、日々のニュースで知ることもあります。
はたまた映画や書物の中で出会うこともあります。今はネットの中での遭遇もあります。
なんびとも懸命に生きているには違いない。
数ヶ月、縁のあったあの『万引き家族』は、今、どこでどんな暮らしをしているのだろうと、思いめぐらしている私です。