山南ノート4【劇団夢桟敷】

山南ノート4冊目(2008.10.3~)
劇団夢桟敷の活動や個人のことなどのメモとして公開中。

河原町劇場(7月10日)

2011-07-11 19:22:45 | モノローグ【エトセトラ】
■7月10日(日)ドキュメント

気象庁の発表によれば九州は梅雨明け宣言されていた。
一気に南国クマモトである。気温は35℃を超えていた。
与えられたパフォーマンスの会場はアスファルトの駐車場。
午前10時過ぎに会場に到着してステージなどの組み立てに入る。

問屋街は歩行者天国。道路はテントや椅子、テーブルが並ぶ。
この町では毎月の第2日曜日がアートの日。
スタッフや参加者たちの段取りは手慣れている。
私は立ちくらみしていた。少々、貧血気味。早くも熱中症?
水分補給を!・・・劇団員たちは私が何時生ビールに手を出すか、
目配りしていたらしい。・・・こんな状態で呑むと倒れる。
最近、肝臓も疲労していた。自覚している。
冷房の利いたギャラリーADOで、
生ビールの代わりにアイスコーヒーで喉を冷やす。
生き返った。

今年の3月「ねじ式」公演よりこの町と関わって、
この町の魅力にとりつかれた。
5月に「KAGUYA」公演と宣伝パフォーマンスと撮影会など、
今回で5回目の関わり。

拘りは、この町の劇場化にある。
町そのものを劇場にしようと企んでいる。
公共の税金を使って立派な箱物を作って、結果、赤字で喘ぐ、
行政の劇場とは違った劇場はできないものか。
そんな思いがこみ上がってくる。

アート?芸術文化?・・・大それたことは考えていない。
要は、日本古来からある「路地裏」の復活を試みたい。
この町には下敷きがある。
妄想と言われようが、この町が劇場に見える。
町民が役者に見えるのである。



正午過ぎにリハーサルに入る。
じりじりする。汗が噴き出る。
無事に本番を終えることができるだろうか。
顔面に痺れを感じる。
座長も気分悪そうにして顔色がさえない。
海千山千と言うものの、座長は若くない。
否、若いからと言って劇団員、出演者も油断は禁物。
倒れてしまっては代理がきかない。
太陽が恨めしい。
日陰育ちの私たちである。

水道の蛇口からステージに向けて放水した。
打ち水の効果あり!
この案はダンス出演のMAMIさん、DAISUKEさんのアイディア。
猛暑の中でのステージは計算済み。救われた。

午後1時。
予定通り、「訪問劇」の開始。
通行人に質問を投げかける。店に入り込んで
「あなたは岡本さんですよね。」と
突然に訳のわからない岡本さん探しが始まる。
「あなたにとって一番汚い言葉とは何ですか。」
質問された人たちは、思った通り困惑していた。
しかし、イベントだとわかるとニコニコして応える。
「死ね。」「キンタマ」「糞、うんこ」「ろくでなし!」
喜んでいる。笑って答えていた。
この汚い言葉をステージのパネルに貼り付けていく。
「この言葉を集めてRKKラジオで流します。」
台本通りのことを言って歩くと、
RKKとは別の放送局の方が来られていて、
「RKKさんは寛大ですね。」とびっくりしていた。
あなたの放送局でもやりましょうよ!
「考えておきます。」こちらもびっくりである。

汚い言葉が数限りなく収集された。
こんなことを一日中すると
汚い言葉でこの町は埋め尽くされたであろう。
30分で終了して、ステージで叫ぶ。
汚い言葉が健康的に見えるのは何故。



午後2時。
劇団では音作りと映像記録などでお世話になっている
タカハシユウジさんの路上ライブのハジマリ。
同時に劇団魂のはる君(主宰)が
身長3メートルのジャック(骸骨人形)で登場する。
タイミング良く、
熊本キャラクターのクマモンも町に現れる。
クマモンは人気者だ。誰でもが近寄ってくる。
ジャックが近付くと、いいコンビに見えた。
タカハシさんのBGMと融合する。
クマモンとは何も打ち合わせしていないのに、
まるで劇団員のようにふるまっている。

ジャックの人形は脱原発パレードのために
稽古場でお世話になっている牧師さんの手作りである。
この市街劇に出演することを快く受けてもらった。
はる君は徹夜明けでこの人形を背負っての登場。
仮面工房熊本支部のKAKUさん、ちくわさんも
仮面と衣裳をまとってジャックをアシストしてくれていた。
新人=KARENちゃん親子も楽しそうに眺めていた。

私はこの時点で顔の痺れが酷くなり、まっすぐ歩けなくなった。
冷房の利いたギャラリーに飛び込んで梅ジュースを呑む。
病院に運ばれたら洒落にならない。
まだ終わっていないのだ。



東京から来られた劇団を紹介された。
12月に100回記念公演を熊本でやるそうである。
紹介者は昨年、八千代座で上演されたコンテンポラリーダンス
で出会った横田女史。
いつか面白いことを企画しましょうと、
それからの付き合いが始まった。
話によるとその劇団の主宰者が熊本へ移住してくるとのこと。
なるほど。
仮面工房さんが福岡から熊本支部を作ってきたように、
演劇が熊本に近づいてきているような予感がする。
熊本へ草木はなびく。

塵蟲さんや徹夜明けの大ちゃん、久しぶりのみんみん、
陰でニヤニヤ笑って見ている旧友の顔など、
この暑さの故、見る側も大変だったろう。

午後3時。
みんなでやろうダンスワークショップの時間。
座長の進行で夕沈ダンスを紹介する。
田中幸太のリードでヲタ芸。
実はこれが心配だった。
冗談抜きで体力の消耗は絶頂期にあったのではないだろうか。
参加者の顔を笑っている。・・・大丈夫なんだろう。
ここでも水を撒き散らす。
暑過ぎてシャワーに飛び込んでくる人もあった。
クドシンの肌が赤くはれていた。
何故か、肥後丸はカレーの匂いがした。
サキはピンピンしている。劇団員たちは苦境に強い。

ワークショップに引き続き劇へ。
「新☆KAGUYA」のコマ送りバージョンで30分。
野外だとストリーや台詞は通用しない。
身体である。肉体が全面に出る。小細工も通用しない。
肉体言語。
この経験は10月大阪公演(野外ステージ)へつづく。



午後4時。
MAMIさんとDAISUKEさんのダンスで締めくくる。
このステージは客観的に見ることができた。
タップ、ポップである。カッコイイ。
生ビールが呑みたい!・・・打ち上げまで待て。
ラストの場面でシャワー。
稽古の段階で、水に濡れるMAMIさんを想像してわくわくしていた。
私は水に濡れた女性にエロチズムを感じる性癖がある。
雨や温泉、海水浴場が好きなのはその故だ。
イイ感じに濡れていた。
クラクラ~としたが、
暑さと精神的な趣味で貧血のクラクラ~だった。

終わって、スタッフさんたちに挨拶回りなどをしていると、
急に空が暗くなり、いきなりの豪雨である。
カミナリも響きだした。
熱くなった身体を冷やそうと雨に打たれたら気持よいではないか。
田中幸太は豪雨の中、一人で踊り始めた。
絵になるねー。まるで映画の一場のように見える。

出店の手羽先屋さんから大量のおにぎりを頂く。
肥後丸を除いて、みんな昼食をとっていなかったのではないだろうか。
腹が減っていたことに気づき、おにぎりを食べる。
美味過ぎる。
ふらふらになりながらも、生きている実感があった。

午後6時。
近くのお好み焼き屋さんで打ち上げる。
皆さま、本当にお疲れ様でした。
次回は8月14日(日)「夜の展覧会」。