F22
ロッキード・マーティン社とボーイング社が共同開発したレーダーや赤外線探知装置等からの隠密性能が極めて高い無敵戦闘機。
F22は、第5世代の戦闘機でそのステルス性能が注目されるけれど、そこに使われている技術や性能を見ると、現代のゼロ戦と呼ばれるに相応しいようにも思える。
F22はF16、F15、F18と模擬戦闘をして、100戦無敗。しかもその結果はF15相手に144機撃墜、損害0。F16相手でも241機撃墜、損害2と圧倒的。
特に、超機動性と呼ばれる高い運動性能は他を寄せ付けない。上昇しながらの方向転換(Jターン)とか、水平姿勢を保ったままの急旋回(ペダル旋廻)、速度の急変更なんて仕様は、ほとんどゼロ戦の格闘戦時の運動性能を彷彿とさせる。ゼロ戦も大戦初期では、その運動性能、航続距離で他国を震撼させ、絶対に戦ってはいけない、見つけたら逃げろと言われていた。F22もその性能をみると同じかそれ以上の隔絶した性能を備えてる。
F35A
F22とF35では何処が違うかというと、エンジンの推力差が一番の違い。F22は双発エンジンを積んでいるのに対してF35は単発エンジン。F22の超機動性や超音速巡航機能はそのエンジン推力の大きさに拠るところが大きいから、諸元性能でもエンジンに依拠した差が出る。F35には超音速巡航(スーパークルーズ)機能はない。それでもステルス性とか基本設計思想はF22と同じだから、F35だってF22を除けばユーロファイターと並んでほぼ世界最強の戦闘機と言っていいだろう。
もともとF35は開発費を抑えるために、各国の次期新型機の開発を一本化して各国の要求を満たす共通の機体として共同開発をしている経緯もあって、汎用性が高い仕様になっている。
アメリカ空軍はF-16C/DやA-10Aの後継機として、アメリカ海兵隊はF/A-18A~Dの後継機として、そしてイギリスはハリアー戦闘機に後継機としているから、F35は通常離着陸(CTOL)型、短距離離陸垂直着陸(STOVL)型、艦載(CV)型の3タイプを製造出来る単座、単発機の開発計画を持って進められている。
その意味では、F22は格闘戦に重きを置いたスペシャル仕様で、F35は何でもかんでも使える汎用性の高い(マルチロール)仕様だと言える。
F/A-18E スーパーホーネット
国際共同開発を念頭に置いた、ボーイング社の発展型FA18スーパーホーネット。
発展型はFA18に改良を加えたもので、ミサイルを格納ケースに納めて機体の下に設置するなどしてステルス性を高めた。
さらに、ミサイルに対する警戒能力やエンジン性能を向上させ、航続距離も伸ばした。
◆産経ニュース
2013.4.14
F35、1機189億円 米国防予算案で判明 日本は財源難題
【ワシントン=佐々木類】米国防総省が発表した2014会計年度(13年10月~14年9月)国防予算案で、日本の航空自衛隊が調達を決めた最新鋭ステルス戦闘機F35Aの価格が、1機当たり約1・9億ドル(約189億円)であることが明らかになった。日本政府は12年度予算で最初の4機を1機当たり102億円で計上しており、90億円近い差額を米側から請求されるのは必至。価格高騰分の財源をどう捻出するのか、新たな難題を抱えた形だ。
F35は、部品の共同生産をめぐり、安倍政権下で武器輸出3原則の適用外とするなど、国際社会で兵器開発の主流となっている共同開発に道を開く効果をもたらした。一方で、開発遅れと価格高騰で、日本の調達計画への悪影響が懸念される事態となっている。
国防総省が予算計上した29機のF35のうち、米空軍が調達するF35Aは計19機で35億8200万ドル(約3564億円)。1機当たり約1・9億ドルの計算だ。
国防総省は13~17年度までの5年間で179機の調達先送りを決め、前年度は当初調達計画の42機より13機少なく、14年度と同数の29機に減らしている。
カナダやオーストラリアなど同盟国が軒並み、調達の白紙化や見送りを決めている中、日本政府は日本の会計年度で12年度に1機102億円で計4機、13年度は1機約150億円で2機調達する方針だ。
最初に調達する4機のF35Aは、米国の14会計年度で計上された機体に該当するため、1機当たりの価格は約189億円。13年度予算で1機約150億円を計上した価格は、米国の15会計年度に計上される機体に該当するため、さらに高騰する可能性がある。
国防総省は昨年5月の年次報告書で、開発の遅れと価格高騰が不可避と指摘した。だが、民主党の野田政権は同年7月、「防衛省の要求する期限までに、同省の要求する性能を備えた機体が納入される」と強気の政府答弁書を策定した。
実際には、最新ソフトウエア「ブロック3F」を搭載したF35Aの米軍への納入は17年8月だが、これ以前の同年3月までにF型を日本に引き渡すのは米軍の規定で原則、不可能だ。
武器輸出3原則の足かせははずしたものの、価格高騰と開発の遅れで財源問題と防空網に穴が空きかねない懸念は払拭できず、防衛戦略上の本質的な欠陥が見えにくくなっている。
◇
■F35 米英伊など9カ国が共同開発し、レーダーに捕捉されにくいステルス性が特徴。F35Aは米空軍及(およ)び航空自衛隊向け。次代のグローバルスタンダード戦闘機とされるが、開発の遅れや価格高騰で調達中止や見送りを決めた米の同盟国も多い。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130414/amr13041401000000-n2.htm
2013年05月15日
アメリカ海軍の無人攻撃機X-47Bが空母からのカタパルト射出試験に成功
5月14日、アメリカ海軍で試験中の艦載型無人攻撃機ノースロップ・グラマンX-47B UCAS(Unmanned Combat Air System,無人戦闘航空システム)が大西洋上で空母ジョージ・H・W・ブッシュからカタパルト射出試験に成功しました。X-47Bはその後パタクセントリバー海軍航空基地に帰還。次の試験は空母への着艦試験になります。
Naval Air Forces Commander Calls X-47B Catapult Launch from USS George H.W. Bush a Pivotal Moment in Naval Aviation - U.S.Navy
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=hknsbswLFwo
CVN77 UCAS Launch
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=9nwdIH_A9BI
X-47B Completes First Carrier-based Launch (Short) 1
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=p9W-nd1Hj3Q
X-47B Completes First Carrier-based Launch (Short) 2
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=_FMvNrkwmi0
CVN77 UCAS Launch 4
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=6vdll3FEaKU
X-47B Lands at Naval Air Staion Patuxent River (滑走着陸)
以上が5月14日の一連の試験動画です。
なおX-47Bは10日前の5月4日、パタクセントリバー海軍航空基地の地上施設でワイヤー制動着陸試験に成功しています。
カタパルト射出は地上からと艦上からであまり違いはありませんが、制動ワイヤーを用いた場合の着陸と洋上の空母への着艦では困難さに大きな差が有ります。これから行われるであろう着艦試験で成功すれば、艦載型無人攻撃機の実用化は大きく前進するでしょう。X-47Bは従来の遠隔操縦を行う無人攻撃機と異なり、有人戦闘機の指揮官機から簡単な指令を送った後は半自律的に行動出来る上にステルス性も高く、実用型は敵正規軍への作戦を実施する事が可能になります。これまでの無人攻撃機はゲリラ対策の不正規戦への投入用で正規軍へは通用しない代物でした。アメリカ海軍のX-47Bは今後の戦争の形態を変える存在となり得るもので、イギリス、フランス、ロシアでも艦載型ではないですが同様の性能を持つ無人攻撃機を開発中です。最近では中国も同様の無人攻撃機を試験中であることが分かっています。
(2012年12月02日)アメリカ海軍の無人攻撃機X-47Bがカタパルト射出試験に成功 (地上射出試験)
http://obiekt.seesaa.net/article/361350898.html
無人偵察機、無人爆撃機
米軍や米諜報機関では、パキスタンやアフガニスタン、イエメン、ソマリアなどで無人武装偵察機を出撃させ、テロリストや反政府勢力の幹部暗殺を敢行している。無人機の進化に終わりは無いようだ。
■北朝鮮も実戦配備進める
きな臭さが漂う朝鮮半島では、韓国軍が全天候型無人戦術飛行船(全長39メートル)を導入する。飛行船は海上監視能力に優れた最先端レーダーを装備。1.5キロ上空と地上基地をケーブルつなぎ、気象が悪化しても、映像・レーダー情報を安定して送信できる点が強み。10キロ~数十キロ離れた北朝鮮軍の動向を24時間監視するためだ。
これに対し、北朝鮮軍も偵察飛行船ではないが、自爆攻撃用無人攻撃機を配備しつつある。
無人攻撃機は、地対空ミサイル演習などの際、標的として使われる米国製高速無人標的機(全長5.5メートル/翼幅3メートル/時速925キロ/最高高度12.2キロ)をシリアから密輸入。改造中と観測されている。
改造後は小型爆弾を装填、250キロ離れた目標に自爆攻撃を加えられるようになるだろう。完成すれば延坪(ヨンピョン)島砲撃(2010年)の担任部隊・第4軍団への配備が危惧されている。
北はロシアから輸入したプロペラ式無人偵察機の攻撃機への換装を進めている他、中国製無人機をベースにした無人偵察機は、既に実戦配備についているといわれる。
ところで、日本は広大な領海・EEZ(排他的経済水域)を有し、おびただしい数の島が浮かぶ。自衛隊や海上保安庁の航空機・艦艇の現数が「飛躍的に拡充」されなければ、主権侵犯監視と、それへの対抗には限界がある。「飛躍的拡充」を進める一方で、無人機の本格導入は不可避な時代に入った。
◆米軍の軍用機のうち無人機が占める割合は、2005年には5%だったが、現在は31%にまで上昇している。「1991年の湾岸戦争中に米軍全体が使った帯域幅」の500%を1機が使う。
米国議会調査部(CRS)の報告によると、2005年には軍用機のうち無人機は5%しかなかった。それがわずか7年後の現在、米軍には7,494機の無人機がある。旧来型の有人機の総数は10,767機だ。
7,500機近くある無人機のうち有名なのは、パキスタンやイエメンなど広範囲で用いられた無人攻撃機『RQ-1 プレデター』と、プレデターを大型化して装備も強化した『MQ-9 リーパー』だ[米国にある空軍基地から、衛星経由で中東への攻撃が可能]。米軍はこれらを161機所有している。
米国防総省の調達予算では、有人飛行機が92%を占めている。とはいえ議会の報告によれば、米軍は2001年以降に260億ドルを無人航空機に投じている。
http://www.youtube.com/watch?v=gnjAvxRpS5g&feature=related
米空軍による新規調達航空機数は来年にも無人航空機が初めて有人機を上回る見通しであることが2012年1月12日、ノーマン・セイップ米空軍中将の発言により明らかとなった。
同日、米国防総省で行われた会見の席上で明らかとされたもので、セイップ米空軍中将は「米空軍が保有する全航空機の85%は、南西アジアでの任務に、残りの15%が米国本土でのパイロットの訓練用途に配備されている」とした上で「今後は更に無人機の任務活動を増やしていくことになるだろう」と述べた。
2011年6月には無人機の運用拡大の方針を打ち出したゲーツ国防長官に対して、有人機を優先させるべきだとする米空軍トップとなる空軍長官、空軍幕僚長司令官が対立。その結果、背広組みトップとなるマイケル・ウェイン空軍長官と、制服組みトップとなるマイケル・モーズリー空軍幕僚長司令官の両名が事実上の更迭となる事態も発生していた。
米国海軍の無人攻撃機 x-47
米国ノースロップ・グラマン社によって開発された無人航空機「RQ-4グローバルホーク (RQ-4 Global Hawk)」
http://www.youtube.com/watch?v=AC8ORgWDelw&feature=related
◆日本も実はこの無人機を開発し実験を繰り返している。
防衛省技術研究本部が開発した高速ジェットUAV「無人機研究システム」の試作機
この無人機は空自F15戦闘機に搭載されて上空で発進し、可視/赤外線カメラで撮影した地上目標の画像情報を即時伝送することができる。
ステルスにも配慮した全長5・2メートルの機体はすでに4機が試作ずみで、今後、空自と協同して硫黄島基地で自律飛行試験が行われる。写真はUAVの02、04号機。
◆支那人民解放軍の「利剣」ステルス無人攻撃機
「利剣」の技術検証機はこのほど、某地の空港で地面滑走テストを開始した。
これは同機が間もなく初となる試験飛行を実施し、支那が米国やフランスに続き、
大型ステルス無人攻撃機の試験飛行を実施する世界3番目の国となることを意味する。
これは中国航空技術にとって大きな進歩であり、
支那が無人機の研究開発で世界トップ集団に加わったことを示し、節目としての意義を持つ。
ただ、ジェット排気の赤外線対策や、ボディの設計そのものが30年前の初期ステルス段階のようにもみえる。おそらくイランで捕獲された米国の無人ステルスを真似たのかもしれないが、実用化にはまだまだ時間が掛かりそうである。
◆日本による最新鋭戦闘機F35導入をめぐっては、2011年12月の選定前から、米国防総省幹部らが機体の不具合など開発遅れに関する懸念を表明、価格の高騰や納期の遅れを危ぶむ声が高まっていた。今回明らかになった、導入見直しもあり得るという日本側の働きかけは、選定条件である価格と日本企業参加への確証を米側から得ないまま、見切り発車的にF35導入を決めた可能性が高いことを裏付けた形だ。
しかし、3機種の開発と生産を同時並行で進めた米軍の調達方法がもはや限界に達し、価格高騰(2~3倍)と納期の先送りが不可避という厳しい現実は、日本を除く同盟国間では周知の事実だ。
F35の開発と生産に責任を持つ内局トップのケンダル米国防次官(調達・技術担当)代行は「試作機の試験飛行前に生産を決めたことは失敗だ。生産ペースを遅らせるため、機体価格は高騰する。同盟国の買い控えも価格高騰の原因」と指摘。シュワルツ空軍参謀総長も「量産計画の決定時期は未定」と語っている。
米国自身、2013会計年度予算案でF35の一部取得を遅らせ、13~17年度までの5年間で179機分の先送りを発表した。
財政難に悩む共同開発国のイタリアは当初調達予定の131機から41機減らし90機に修正し、7年間で65機を調達予定のカナダ、18年までに14機調達予定のオーストラリアも計画の見直しを表明した。
F35の選定後になって価格維持と日本企業参加の確証を求める日本側だが、米関係筋は「契約にもないのに米側が価格上昇分を米国人の税金で穴埋めしてまで日本に売却することはあり得ない」と言う。
豪州のスミス国防相は1月30日の記者会見で、調達計画を見直す考えを示した。豪空軍は調達予定の14機のうち2機の契約を締結、2014年に納入予定だ。15年から3年かけて調達する残る12機については、購入価格が高騰する恐れがあるため見直す方針だ。価格は当初の6500万ドル(約49億円)から「2~3倍になる」(関係者)との見方まである。
一方、日本政府は16年度に4機、17年度に国内で最終組み立てした4機を導入するとしており、「F35の日本への配備時期に一切変更はない」(民主党政権時)
米軍のF35の運用開始は当初予定の17年から19年にずれ込む可能性がある。仮に期限内に納入しても、米軍の運用開始前は米国内条項が適用され、不具合が生じた場合でも部品交換すらできない危険性がある。
要するに、米国や同盟各国との調査も調整もせず、日本がどこまで企業参画できるのか、そもそもF35を購入出来るのかも確認もせず、「何が何でもF35購入」と決定した、防衛省と民主党政府が馬鹿なのである。
実は防衛省は密かに2030年ぐらいに正規空母の導入を目論んでいるからである。
そのためには艦載機としても使える機体の運用実績が欲しい。だからF35かスーパーホーネットという選択肢が本命だったのだ。
で、欲張って、どうせ買うなら最新型をといったらこのザマである。
今の状況からするとスーパーホーネット購入が一番ベストなのだが、馬鹿な民主党政府と防衛省は一度決定したことを変更するという作業すらしなかった。
たぶん、F35が完成したときは、有人戦闘機の時代は終わっている。米国がラプターの調達を終了したのは、何もその価格の高さだけが原因ではない。
それに米国が開発中の航空機搭載型レーザー砲システムが実用化されたら、戦闘機の出番なんて完全になくなる。ロックオンされたら回避不能。遠距離から光の速度でやってくる砲弾にジュ♫だから。
英国製の無人ステル戦闘機「タラニス」 (Keystone)
フレデリック・ビュルナン, swissinfo.ch
2013-05-20 11:01
無人戦闘機と殺人ロボット開発への「反撃」
無人航空機の軍事使用は米オバマ政権発足以来激増。それは、国内外で抗議と非難の嵐を巻き起こし、ジュネーブにも及ぶ。国際人道法の下に結束した国際的NGO連合が、完全自律性を備えた殺人ロボットのテクノロジー開発にストップをかけようとしているのだ。
戦闘兵器のロボット化が進み、戦闘の形態は予想のつかない憂慮すべき方向へと向かっている。この流れを変えようと、人権擁護団体とジュネーブ条約の監視役的組織が、二つの異なるアクションを起こした。
そのうちの一つは、国際テロ組織アルカイダに対する作戦での無人機使用に関するものだ。9・11米同時多発テロを契機に開始された無人機攻撃作戦は、オバマ政権の発足以来さらに強化されている。ロンドンに拠点を持つ英国非営利団体「調査報道ジャーナリスト協会(TBIJ)」によると、2004~13年の間に行われた無人機攻撃では、パキスタンだけでも2500~3500人が死亡(そのうち民間人は数百人、子ども約200人)、千人以上の負傷者を出している。
オバマ政権への圧力
これまでの無人機攻撃のうち、数ケースがジュネーブ条約に違反しているかどうかを検討するため、国連人権理事会はテロ対策や人権問題を担当するベン・エマーソン国連特別報告者に実態調査を依頼した。この英国人弁護士によると調査の第一の目的は、無人機攻撃によって既存の国際人道法が禁止する過度の民間人犠牲者が出てないかどうかを明確にすることだ。
その調査結果は今年9月に開催される第68回国連総会で報告される。米電子版ニュースメディアのニューズウィーク・デイリービーストによると、国内世論の圧力を受けてオバマ政権も問題の重要性を認識し始めたとみられる。なぜなら、これまでは全く不透明な米中央情報局(CIA)の完全指揮下にあった無人機攻撃作戦を、より透明度の高い国防総省に移管する意向だからだ。たとえ、米政府は今後その対テロ政策について議会で定期的に説明を余儀なくされることになるとしても、だ。
「この移管計画はまだうわさの段階だ。公式には何も発表されていない。しかし、この変化は私たちの要求の流れに沿っている」と、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)でテロ対策を担当するアンドレア・プラソーさんは明言する。
他方では、ジュネーブで開催予定の第23回国連人権理事会中の5月29日、もう一人の専門家、超法規的・即決・恣意的な処刑問題を担当するクリストフ・ヘインズ国連特別報告者が別の新たな報告書を提出する。致死力を備えた完全自律型武装ロボットに関するこの報告書は、この種の兵器開発の国際的モラトリアムを呼びかける。
先制的措置
一方、人権理事会の枠外では、国際NGO連合によって4月23日に発足したキャンペーン「ストップ・キラー・ロボット」が国連ヨーロッパ本部であるジュネーブで記者会見を開き、武装ロボット開発の全面的な禁止を訴える。そして、1999年に施行された対人地雷禁止条約(オタワ条約)にこぎつけた交渉プロセスに倣って国際条約の制定を目指す考えだ。ただ一つ(オタワ条約などと比べ)新しいのは、このキャンペーンがまだ存在しない兵器の追放を目的とした先制的な措置だという点だ。
「無人機のような半自律型攻撃システムは、まだしも遠隔地から人間によって操作されるため、既存の国際人道法を適用出来る。ところが、完全自律型攻撃システムはますます人間の介在を排除する」とジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)のアンドレア・ビアンキ教授は強調する。
取り残される人間
ヘインズ特別報告者の報告書も同じ趣旨だ。「戦争が急速に展開する中、ある意味で人間が戦闘手段における一番の弱点となっている。そのため、戦場での意思決定プロセスから人間が取り除かれつつあるのが現状だ」
しかし、治安問題の専門家であるアレクサンドル・ヴォトラヴェールさんは、まだその段階には来ていないと考える。「(殺人ロボットなど)センセーショナルなものと、ある程度の自律性は持つが人間の補助が必要な攻撃システムとを区別して考える必要がある。
例えば、ミサイルの中には多種多様のセンサーを搭載しさまざまなアルゴリズムを用いて、人間のオペレーターなしで装甲車やその他の標的を追跡するものもある。『ファイアー・アンド・フォーゲット(Fire and forget)』式と呼ばれるミサイルだ。もしもミサイルが標的とする装甲車両やレーダー装置を見つけられなかった場合、ミサイルは自己破壊する。この種の技術は20年も前から存在する」
「今日では、ミツバチの群れのように飛ぶことにより、中継地を介して無線を供給したり、目標地点を完璧に見渡せるシステムも存在する。連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)にはそのシステムを開発する研究所がある。しかし、映画『ターミネーター』に出てくるような殺人ロボットがすぐに誕生するわけではない。兵器開発の進んだ国では、米国を筆頭に軍事予算が削減されてもいるからだ」
一方、ヘインズ特別報告者はその報告書の中で、完全自律型の兵器開発を緊急に規制する必要性をこう説いている。「兵器開発の技術は指数関数的に進歩しており、その将来を予想することなど誰にも出来ない。それに、完全自律型兵器の使用がどの程度実行可能かを明らかにすることは、ほぼ不可能だ。(中略)各国の軍事資料を見ると、複数の国がかなりの自律稼動性を備えた航空・陸上・海上のロボット兵器開発プログラムを有することが分かる。そして、そのために相当な額の資金が割り当てられている」
終わりなき戦い
一つだけ確かなことがある。戦争の形態が根本的に変化しているという事実だ。それは90年代初め、戦争に無人機が登場してからさらに顕著だ。「パイロットのいらない戦闘機の経験から、この種の軍事技術は公式の紛争地域外でも容易に利用できることが証明された」
「こうした状況で懸念されるのは、世界を一つの広大で終わりのない戦争の舞台だとみなしてしまうことだ」とヘインズ特別報告者は危惧する。「ロボット工学の発達は、一般的に規制を加えるのが難しい。兵器に関しては更にそうだ。その上、軍事、非軍事テクノロジーの間には境界がない。一つのロボット・プラットフォームが軍事、民間の両目的で使用され、非致死性兵器として使われたり、反対に致死能力を備えることも出来る」
フレデリック・ビュルナン, swissinfo.ch
(仏語からの翻訳 由比かおり)
スイスと軍用無人機
スイス軍は2001年から使用している無人機「ADS 95レンジャー」に代わる新型無人偵察機の採用を検討中だ。
連邦国防省武器研究局「アルマスイス (Armasuisse) 」によると、イスラエルの航空機メーカー、イスラエル・アエロスペース・インダストリーズ(IAI)とエルビット・システムズ(Elbit Systems)製造の二つの無人機操縦システムが候補に挙がっている。
「審査は2014年半ばには終了し、二つのうちどちらかが採用される。スイスはこの種のシステムの開発には関わっていない」と、アルマスイスの広報担当者フランソワ・フュレーさんは明言する。
一方で、政府が100%保有する軍需・航空宇宙大手のルアグ(RUAG)は、フランスのダッソー・アビエーション(Dassault Aviation)が中心となって開発を進める半自律型無人戦闘機「ニューロン(nEUROn)」計画に参加している。
ダッソー・アビエーションのウェブサイトによるとルアグは、低速風洞試験と、プラットフォームと兵装間のインターフェイスを担当する。
赤十字国際委員会と無人戦闘機
5月10日赤十字国際委員会(ICRC)のウェブサイトに掲載されたインタビューで、ペーター・マウラー総裁は国際人道法(IHL)が無人戦闘機の使用にどのように関わってくるかを説明している。
その中で、武力行使の際には民間人と戦闘員を区別することや、必要かつ軍事目的に比例した武力の行使でなければならない、といった国際人道法の基本原則について触れた後で、マウラー総裁は無人戦闘機のような兵器の特性をこう示す。
「国際人道法の観点から言えば、標的をより正確に定める兵器は、一般市民が偶然紛争に巻き込まれたり民間施設が破壊されたりするケースを最小限に抑えるため、標的を定められない兵器より優先されるべきだろう」
しかし、武力紛争地域外での無人戦闘機の使用については、「武力衝突のない状況で無人機が使用される場合、適用されるのはその国の国内法と人権法(中略)であり、国際人道法ではない」と言及する。
マウラー総裁は明確に名指しすることは避けながらも、アフガニスタン国境付近のパキスタンにおける米国のテロリスト殺害計画を非難する。
「状況が非常に複雑になるのは、紛争国外から来た個人が直接紛争に参加したり、また紛争に関与した後紛争国外に出たりしたケースなどだ」
「問題は、このような個人に対して致死武力の行使が出来るのか、出来るとすればどの法律が適用されるのかということだ。これにはさまざまな意見がある。ICRCは、このような個人には国際人道法が適用されないという立場だ。つまり、いかなる戦争法においても、こうした個人を攻撃の標的とみなすことはできないということだ」
「もし国際人道法が適用されるとするなら、世界を移動する個人が、どこにいようとも合法的な攻撃の標的となり、世界中が潜在的な戦闘地となり得ることを意味する」
http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?link=tdj&cid=35875096