中東情勢、10年の戦争の後に10年の無秩序
JB PRESS 2013.07.29(月)
一見すると、イスラエルとパレスチナの和平交渉を復活させようとするジョン・ケリー米国務長官の努力には、ほとんど騎士気取りのようなところがある。ケリー長官は確かに、この仕事にエネルギッシュに取り組んできた。長官がホワイトハウスの明確な支持を得ているのかどうかは、あまりはっきりしない。
また、いずれにせよ、米国はシリアの内戦やエジプトのクーデターなど、もっと差し迫った問題に専念すべきなのではないか?
和平交渉の復活を狙うケリー国務長官
長年、中東和平プロセスという実態にそぐわない呼び方をされている取り組みについて、悲観論を口にして愚かに見えた人はいまだかつて誰もいない。
多くの人は、ヨルダン川西岸の植民地化に対するイスラエルの支持が2国家共存に関する一切の議論を学術的なものにしてしまったと考えている。
バラク・オバマ米大統領に関して言えば、素晴らしい演説に見合うような大きな政治的リスクを最後に取ったのは一体いつだろうか? ケリー長官はどうか? シャトル外交は、突破口が開ける現実的な見込みよりも、むしろ過大な自信の表れだと見る向きもある。
しかし、違う見方もできる。もしケリー長官が実際に失敗すれば、2国家共存を目指す試みは本当に終わる。そうなれば、人々の関心はヨルダン川西岸の専用居住区に閉じ込められたパレスチナ人の権利に移るだろう。イスラエルは常に避けてきた選択肢に直面せざるを得なくなる。地中海からヨルダン川まで広がる国は、ユダヤ国家であると同時に民主主義国家であることは不可能なのだ。
イスラエル・パレスチナ問題以外の地域の優先事項については、米国はほかにどんなことができるのだろうか?
エジプトのクーデターをクーデターと呼べない米国
エジプトのクーデターの前の数日間、米国政府はムハンマド・モルシ大統領を排除しないようエジプト軍を説得しようとした。その要請は一蹴された。米国はそれ以来、選挙で選ばれた政府を倒すことは、どういうわけかクーデター以外の何かであるということに同意し、軍部の味方に付くことに腐心してきた。
オバマ大統領は挫折に慣れつつあるに違いない。オバマ大統領は2011年8月、シリアのバシャル・アル・ アサド大統領の退陣を要求し、「アサド大統領が退く時が来た」と述べた。それから2年経った今、アサド大統領はまだしっかりその座に収まっている。かつては、米国の大統領が誰かが退陣しなければならないと言うと、大抵、何らかの形で去った時代もあった。
米国以上に弱い欧州諸国
欧州諸国は米国以上に弱い。英国とフランスは、リビアのムアマル・カダフィ大佐の失脚がアラブの蜂起後の欧州の役割を定めると想像した。ところが実際は、リビアが武力衝突の大混乱に陥り、カダフィ大佐を退陣させるという戦術的な成功は戦略的な失敗に道を譲った。
英国政府とフランス政府は、シリアの反体制派勢力への武器売却に対する欧州連合(EU)の禁輸措置の解除を求めた。その後、アサド大統領の政府軍が前進したが、英国は今、反政府勢力に武器を供与する考えを放棄している。
モルシ大統領が解任された時、欧州各国の指導者は顧問たちに、どんな対応が取れるか尋ねた。気詰まりな返事は「できることは大してない」というものだった。
少し前までは、戦争に対する有権者の警戒心と欧州の利益の保護との折り合いをうまくつける介入主義の新たなモデルが議論されていた。西側諸国は地域の大国から成るオーケストラの指揮者の役目を果たす、というものだ。
地域の大国は今、それぞれに勝手な音楽を奏でている。時折、指揮棒を奪い取ることもある。クーデターをクーデターと呼ぶことを渋る米国政府の姿勢は、米国の軍事支援の自動停止を避けることで影響力を維持しようとする配慮で説明された。英国の場合、政府はエジプトの新体制にも資金を供給しているサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)からの圧力に屈するほかないと感じた。
オバマ大統領が鳴り物入りで打ち出したアジアへの「ピボット(旋回)」は、慎重に計算された中東からの転換を意図していた。後で分かったことだが、アラブ世界は事態の展開を予想するうえでホワイトハウスのずっと先を行っていた。驚くまでもなく、アラブ諸国は、もし米国が手を引くのであれば、自陣営のためにとっとと戦った方がいいという結論を下した。
西側の軍事介入では解決できない紛争
小さな亀裂は無数に存在するものの、中東は今、スンニ派とシーア派との断層線で定義されている。一方にサウジアラビアと湾岸諸国、他方にイランとその代理が存在する構図だ。
どんな形の西側の軍事介入も、この神政の対立が生み出す紛争を解決することはできない。米国は、一方ではシーア派のイランとヒズボラを封じ込める助けをし、もう一方ではスンニ派の聖戦主義と戦うしかない状況に置かれている。
多くの人は、なすべきことはほとんどないと言うだろう。米国統合参謀本部議長のマーチン・デンプシー氏は先日、限定的な作戦でシリア情勢のバランスを決定的に変えられると考える人々にバケツ数杯分の冷水を浴びせた。介入は戦争を意味し、それに伴う血と財産のコスト、予期せぬ結果が付いてくる、と述べたのだ。
とはいえ、西側諸国の力の限界を過小評価することは、過大評価するのと同じくらい間違いだ。先日、この点を雄弁に指摘したのは、冷静さで知られる英国の元外相で、国際救済委員会(IRC)のトップを務めるためにニューヨークに引っ越すデビッド・ミリバンド氏だ。
ミリバンド氏はディッチリー財団の年次講演で、西側が無関心だと、10年の戦争が10年の無秩序に道を譲ることになると警鐘を鳴らした。米国は今も地球上で最強の国家であり、どんな競合国をも大きく上回る政治的、軍事的な影響力を持つ。米国には、とてつもなく大きな経済的影響力もある。欧州は自ら招いた傷をたくさん負っているとはいえ、かなりの経済力と外交力を持つ。
欧米が果たさねばならない義務
そして言うまでもなく、欧米諸国には紛争がもたらす人道的な結果を食い止める義務があり、そうすることに利益がある。また欧米諸国は、政治的な決着を求める地域的、国際的な圧力を動員する類稀な力を持っている。
この役割には魅力はない。交渉は巡航ミサイルのように見出しを飾ることはない。努力は多くの場合、失敗に終わる。だが、ある英国首相がかつて述べたように、代替策となるものはほとんど存在しない。イスラエルが学んだかもしれないように、平和をもたらさない唯一のものは戦争だ。だからケリー長官は正しい。我々は長官を応援すべきだ。
By Philip Stephens
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38327
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欧米諸国の論理は、我々が世界の秩序を創り、それに逆らう者は正義の名において排除する。
独裁者で欧米に反旗を翻す者あらば、市民を解放するために武力でもって排除する。
そうして反政府組織を煽り、市民を装って傭兵を送り込み、市民運動と見せかける。国民がいくら独裁者を支持していようが、独裁=悪政と決めつける勝手な論理なのだ。
欧米の利権を認めない国は、独裁国家なのである。
その論理からリビアのカダフィは殺害された。
其れまでのリビアは豊富な石油や天然ガスのお陰で、国民には十分な恩恵を施す国であった。
◆リビアでは、家を持つことが人権と見なされていた。
新婚夫婦はマイホームを買うために5万ドルを政府から支給される。
電気代は全ての国民に対して無料。
これは作り話ではない。
カダフィはかつて、全てのリビア人に家を与えることを誓った。
彼はその誓いを守った。
彼の父は家を持てずに死んだからだ。
カダフィ以前は、リビア人の5分の1以下が読み書きが出来なかった。
現在は、教育は無料で質が高い、識字率は83パーセント。
医療も無料で質が高い。
リビア人が必要な教育や医療をリビアで見つけられない場合は、リビア政府が彼らが外国へ行けるように手配する。
ローンは全て利子0パーセントと法律で決まっている。
リビア人が車を買うとき、政府が半額を払う。
ガソリン代は0.14ドル/L。
農業化を志望するリビア人には、土地、家、器具、家畜、種子が無料で支給される。
中央銀行が完全国有であるため、リビアでは税金が禁止されていた。
税金が必要ないのだ。
また、不当な利益を生む元になりやすい不動産業も禁止されていた。
リビアの人口わずか620万人。金融恐慌の影響を最も受けていない国である。
カダフィ殺害の目的は、リビアの資産を強奪することだった。これまでリビアは、ロスチャイルドが支配する中央銀行を持たない数少ない国の1つであったのだ。
リビアの1300億超の外貨基金の名義人はカダフィ本人と彼の息子たちであり、またリビアの石油利権の名義に関しても同様である。
カダフィ殺害後、ヒラリー・クリントンが電撃的にリビアを訪問した。メディアは揃って「驚きの訪問」と報道したのだが、目的は明らかに「中央銀行」の設立状況の確認である。
◆アラブの春
2010年から2012年にかけてアラブ世界において発生した、前例にない大規模反政府(民主化要求)デモや抗議活動を主とした騒乱の総称である。2010年12月18日に始まったチュニジアでの暴動によるジャスミン革命から、アラブ世界に波及した。また、現政権に対する抗議・デモ活動はその他の地域にも広がりを見せている。各国におけるデモは2013年に入っても継続されている。
果たして全てが国民の意思なのか?何故に欧米からの傭兵が最前線に跋扈しているのであろうか?
★エジプト
チュニジアのジャスミン革命に触発され、2011年1月25日より大規模な反政府デモが発生した。ホスニー・ムバーラク大統領は2月11日にエジプト軍最高評議会に国家権力を委譲し、30年に及ぶムバーラクの独裁政権に終止符が打たれた。
その後はエジプト軍最高評議会による暫定統治が行われ、12月7日には同評議会から指名を受けたカマール・ガンズーリを首相とする暫定政権も発足したが、軍の統治などの現状に反発する民衆によってデモが継続された。
ムバーラク政権が崩壊してから1年目の2012年2月11日にはエジプト軍最高評議会(軍政)及び選挙で第1党になったムスリム同胞団への批判デモがあったが参加者は50人程度で散発的にシュプレヒコールをする程度であった。朝日新聞によると今のデモ参加者は不満を口する程度でデモから距離を置く市民も少なくないという。
2012年5月に大統領選挙が行われた。
結論から言うと、2013年7月28日現在
エジプトでは事実上のクーデターで大統領職を解任されたモルシ氏の支持者が抗議デモを行っていたところ、治安部隊と衝突して65人が死亡し、治安当局はデモ隊に対しさらなる取り締まりを警告したことから、双方の衝突が一段と激化する懸念が高まっている。
エジプトでは今月上旬の事実上のクーデターのあと、大統領職を解任されたモルシ氏の支持者が各地で抗議デモを続けるなか、27日未明、首都カイロでデモ隊と治安部隊が激しく衝突した。
保健省によると、この衝突でモルシ氏の支持者ら65人が死亡し、事実上のクーデターが発生して以降、最悪の事態になった。
これについて、モルシ氏の支持母体であるムスリム同胞団は、治安部隊がデモの参加者の頭などを狙って実弾を撃ったと主張し、あくまで抗議行動を続ける構えで、参加者の1人は「たとえ殺されてもここを離れない」と反発している。
これに対し、治安部隊を統括するイブラヒム内相は記者会見し「治安部隊はデモ隊と付近の住民が衝突したのを制止するために催涙弾などを使っただけだ」と述べ、対応に問題はなかったと反論した。
そのうえで、イブラヒム内相は「道路を不法に占拠するデモ隊を近く解散させる」と述べて、デモ隊に対するさらなる取り締まりを警告しており、双方の衝突が一段と激化する懸念が高まっている。
NHK NEWSweb 2013.7.29
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130728/k10013346781000.html
これのどこが欧米の言う「市民の開放」なのか。このどこが中東の民主化というのだろうか。かえってエジプトという国を混乱に陥れ、以来クーデターと内乱に明け暮れている。
手がつけられなくなるとサッサと引き上げ、傍観を決め込む。このどこが「正義」なのだろうか?
◆シリア国民はアサドを支持している
★シリアの現実は日本の報道とは全く「逆」
2012年1月15日、イギリス人ジャーナリストのリジー・フェラン女史は、シリアで起きている出来事の情況はいくつかのメディアが報じようとしてきた内容と完璧に異なるものだ、と語った。
シリア訪問中のフェラン女史は、現地の情況を見るためシリアのダマスカスに6日前ジャーナリストとして到着してみて驚いたと語った。シリアは安全な場所ではなく混乱が支配している、また軍が道路上に配置され、反政府デモが毎日のようにあらゆる場所で行われている、というメディアによって知らされていたイメージを持っていたのだ。
彼女はシリアのテレビ番組で、この訪問で見聞したことを語り、生活が普段どおりに行われ、人々は多少の問題はあれども、いつもどおり仕事や学校に出かけている、ことを強調した。
ダマスカス市は自分が一人で夜遅く移動する際も非常に安全で、何らの問題にも遭うことはないし、大きな反政府デモも見ることは無かったと語った。
フェラン女史は、ウマヤド広場で大規模な政府支持デモを見てシリアの情況の現実に触れて驚いた、と指摘した。これは彼女にとっては、欧米その他の国々で知らされている情況と完全に異なるものだったと語った。
http://www.sana.sy/eng/21/2012/01/15/394292.htm (既に削除されている)
シリア国民:外国の干渉を拒否しアサド政権を支持
http://www.sana.sy/eng/337/2012/01/16/394678.htm (既に削除されている)
http://blog.goo.ne.jp/yamanooyaji0220/e/d318dac91645c7321b0578ed736a9a2d
シリア情勢について、これまで同様に西側諸国の報道は胡散臭さ満点である。
それは恣意的な報道であり、”市民を虐殺する非道な政府軍”という、あそこでもここでもよく使われている構図で悲劇を映し出す。
本当に市民か?
本当に虐殺と言えるような非道か?
もし日本国内で武装集団が暴れ始めたらどうする?
当然、鎮圧するだろう。
武装集団が武器を使用し地域を占領するようなことがあれば、治安維持部隊も武器による制圧を行うだろう。
これを”市民虐殺”と言うか?
シリアのアサド政権の指導者らが集まる会議でおきた爆弾テロに欧米の情報機関が絡んでいることは間違いない。
犠牲者の中には、ダウド・ラジハ国防相、アサド大統領の義兄のシャウカト副国防相らがいる。18日午後、ダマスカスの閣僚会議の最中に自爆攻撃者が強力爆弾を爆発させたものだ。この他にハッサン・トゥルコマン副大統領も死亡した。
負傷者の中には、ヒシャム・イクチアール国家治安局局長、モハマド・イブラヒム・シャール内務大臣がいる。
これはアサド大統領の側近グループに対する最悪の攻撃であった。大統領がこの会議に出席することになっていたかどうかは定かでない。
二つのグループが犯行声明を出した-自由シリア軍と殆ど知られていない聖戦組織で自らを殉教主旅団と呼ぶグループだ。この攻撃の実行に欧米の軍事的支援が決定的に存在していることが証拠から示唆される。
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「自由シリア軍」と聞くと、自由を求めるシリア人が結成した民兵集団のように思ってしまうが、実際には傭兵と犯罪者集団が中心になっている。頻繁する住民虐殺事件は、彼らの仕業と見て間違いないだろう。
米国は、20年以上前から反米的な国々を叩き潰す計画を立てており、シリアもかなり早い段階からターゲットにされていた。政権交代後の鳩山-小沢政権が早期退陣に追い込まれたのも、反米的だったからである。
シリアの後ろ盾は中ロであるから、米国に睨まれて当然だが、この状況は今に始まったことではなく、唐突感は免れない。一体何があったのであろうか?
背景にはやはり、資源の問題があるようだ。昨年夏、シリアのホムス周辺に油田とガスが埋蔵されていることが判った。http://www.jp-opinion.com/archives/5176626.html
米欧の狙いは、シリアの天然ガス資源
中央アジアの天然ガスを、消費地であるヨーロッパに運ぶパイプライン・プロジェクトの中で、米国系Nabuccoが、ロシア系South Streamに負けた。Nabuccoが負けたのでトルコが外されたことになるが、正確には、ロシアが取りまとめたガスの一部を、Nabuccoが計画していたルートで流すことで、ロシア・トルコ間で妥協が成立した。
米国は、アフガン問題を利用し、トルコの協力を得ながら、ウズベクを経由して、中央アジアのエネルギー資源に再び干渉しようとしている。ロシアと中国は、エネルギー分野の相互依存を急速に高めている。
残るガス資源国のうち、輸送経路が確立していないは、イランと、シリア・レバノンの沖合である。
イランについては、イランからイラク経由でシリアの沿岸にパイプラインを建設することで、3ヶ国が合意した。ここでも、トルコが外された。
レバシリ沖合には、大規模なガス資源が眠っていると目されているが、開発はこれからである。両国、特にシリアは豊かな国になる可能性がある。フランスは東地中海を自らの勢力圏と捉えており、レバシリ沖のガス資源を、リビア同様に押さえたいと考えている。トルコも、トルコの視点から、影響力を確保したいと考えている。
シリア石油省は、まだ海底ガス田について、何もプランを発表していない。シリアの天然ガスを誰が押さえるかによって、21世紀の中東と世界政治の方向性が決まる。
http://blog.goo.ne.jp/yamanooyaji0220/e/4c1bdb3ef85ec94244b58bf2d5b5597d
◆米国の戦争請負会社ブラックウォーターがシリアにも入っている
米軍のイラク制圧後にファルージャで殺戮を行い、翌日抵抗住民によって吊るし首にされた事件はその後の米軍によるファルージャ殲滅戦へ発展した。
アフガニスタン、リビアにも入っている。
金さえ入ればどこの指示でも侵入し、殺戮する殺人傭兵会社である。
情勢から見て、シリアに入っているのは当然だ。
2012年8月2日 イラン国営放送
これまでに発覚した情報から、旧ブラックウォーター社として知られるXeサービシズLLCが、シリアで大規模な活動を展開していることが明らかになった。
プレスTVの報道によると、シリアの反体制武装グループがアメリカやサウジアラビア、シオニスト政権イスラエル、トルコ、カタール、他数カ国から支援を受けていることは公然の事実であるが、シリアの暴徒に訓練を施すための他の筋も存在している、ということだ。
XeサービシズLLCは、シリア国内で同国の暴徒に訓練を施す、悪名高い民間軍事会社として知られている。
もっとも、同社はイラクでの民間人殺害という不祥事を起こしてから、ACADEMI社と名称変更していた。
各種の報告から、同社がイラクからの傭兵をシリアに派遣していることが明らかになっている。
同社は、経験豊かな治安部隊や軍隊数万人を、全世界で最も危険な地域に配備できると主張している。
また、発見された証拠資料から、同社が傭兵をシリアでの活動に当たらせており、公然としたテロ活動を実施させ、シリアの治安部隊と衝突させていることが判明している。
トルコの複数のメディアも、新たにXeサービシズLLCがトルコ・シリア国境で新たに活動していることを明らかにしている。
旧ブラックウォーターの傭兵LLC
これらの報告においては、「XeサービシズLLC社のために活動するテロリストは、トルコとの国境に面した複数の県からシリアに入国している」と強調している。
シリアは、昨年3月中旬から情勢不安に陥っている。
しかし、国連はじめ欧米諸国は逆にシリア政権が自由を求める市民を虐殺し暴虐の限りをつくしていると宣言し、大手メディアで報道している。日本のメディアも当然取材もせずその報道を追随するだけである。欧米勢力のどこにも「正義」など存在しない。
この旧ブラックウォーター社はモンサント社が買収した傭兵企業である。そのモンサント社に投資しているのが、ビル・ゲイツである。この傭兵を雇用しシリア国内でテロを行わせ、自由を求める市民達と西側で報道するのである。それを鎮圧するために当然軍隊が出動する。今度はそれが、市民を弾圧し虐殺するシリア軍となるのである。
欧米の作られたニュースがそのまま、これがシリアの「自由を求める市民」の内戦と日本で流される。そのどこに正義があるのだろうか。しかし、国民の圧倒的に支持を受けたアサド大統領は強靱である。ただいつもはアラブの良心を伝えるTV「アルジャジーラ」はトルコやカタールが欧米側に回ったために、今回は欧米追随の報道しか流さない。
そんなシリアを支援するのがロシアと中国であるだけに、問題がより複雑になる。
それが冒頭にあるJB PRESSのニュースである。
オバマ大統領は2011年8月、シリアのバシャル・アル・ アサド大統領の退陣を要求し、「アサド大統領が退く時が来た」と述べた。それから2年経った今、アサド大統領はまだしっかりその座に収まっている。かつては、米国の大統領が誰かが退陣しなければならないと言うと、大抵、何らかの形で去った時代もあった。
中東は今、スンニ派とシーア派との断層線で定義されている。一方にサウジアラビアと湾岸諸国、他方にイランとその代理が存在する構図だ。
今や弱体化した米国や欧米が描く「正義」では抑制の出来ない時代に入ったと言えるのではないだろうか。
◆イエメン
イエメンでは、サーレハ大統領の退陣を求める反政府抗議活動が発生。2011年2月3日のデモでは2万人以上が集る大規模なものとなった。サーレハはその前日の2月2日、2013年に行われる次期大統領選に出馬しないこと、世襲もしないと表明した。
湾岸協力会議(GCC)が政権移譲を含めた調停を試みたが、サーレハは受け入れを拒否し続け、11月23日になってようやく30日以内にアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー副大統領に大統領権限を移譲することに同意。12月10日に暫定政権が発足し、2012年2月21日に投開票された暫定大統領選挙でハーディーが当選し就任。サーレハ体制は終焉を迎えた。
一方で、サーレハは退任する代わりにデモの弾圧などを含めて恩赦(追訴免除)することが条件となっており、2012年1月にはサーレハのこれまでの33年間の行いに対する全面的恩赦とその側近の政治に関する部分の恩赦を認める法律が可決したことから、サーレハの処罰を求めてデモが継続された。
イエメンのデモ活動に参加していたタワックル・カルマンは、女性活動家という名目ではあるが2011年のノーベル平和賞を受賞した。
◆イラク
ヌーリー・マーリキー首相が2014年に3期目の再選をしないことを発表しているが、公共サービスの公平性や安全保障の効果的な見直し、高い失業率への有効な対策、電気や水不足に起因する州知事の辞任などを求めて2011年2月以降デモが実行されている。これに対して、州知事や地元当局の辞任が発表され、また政府により電気代を補助することが約束された。
★自爆テロ相次ぎ47人死亡 イラク、宗派対立か
2013.7.13 産経ニュース
イラク北部キルクークなどで12日、自爆テロなどが相次ぎ、全土で少なくとも47人が死亡した。フランス公共ラジオが報じた。犯行声明は出ていないが、イスラム教の宗派対立を背景としたテロとみられる。
キルクークでは日没後、イスラム教の断食の時間を終えてにぎわっていたカフェで自爆テロが発生し、38人が死亡。これに先立ち各地で治安部隊を狙った攻撃があり、北部モスルでは警察官4人が死亡するなどした。
イラクでは、シーア派のマリキ首相に対する反発などを背景に、国際テロ組織アルカイダ系のスンニ派武装勢力の関与が疑われるテロが相次いでいる。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130713/mds13071314460002-n1.htm
◆クウェート、政府支持派が勝利 議会選の開票終了
2013.7.28 産経ニュース
ペルシャ湾岸の産油国クウェートで27日行われた国民議会(定数50)選挙は28日、開票が終了し、政府支持派が大半の議席を獲得して勝利した。野党勢力は選挙制度変更への反発から、昨年12月の前回選挙に続いてほとんどがボイコットし、数議席の獲得にとどまった。ボイコットしたイスラム組織「イスラム立憲運動」のムハンマド・ダラル元国民議会議員は共同通信に対し、「議会多数派から首相が選ばれる民主的な制度を目指し、今後も街頭デモなどを行う」と表明、政治対立は続きそうだ。
地元メディアなどの開票結果の分析によると、前回躍進した政府寄りのイスラム教シーア派が議席を17から8に減らし、スンニ派やリベラル勢力が増やした。女性は1減の2人。16人が新人。投票率は前回より高い52・5%だったが、ボイコット前の60%台には届かなかった。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130728/mds13072820150007-n1.htm
◆レバノン首都で爆発 少なくとも38人負傷 ヒズボラ標的か2013.7.9 産経ニュース
【カイロ=大内清】レバノンの首都ベイルート郊外にあるイスラム教シーア派組織ヒズボラの拠点地区で9日、車爆弾が爆発し、ロイター通信によると住民ら少なくとも38人が負傷した。ヒズボラを狙ったテロの可能性があるが犯行声明などは確認されていない。
ヒズボラは、内戦が続く隣国シリアのアサド政権と同盟関係にある。今年に入ってからはシリア各地に戦闘員を送り込むなどして本格的に内戦に参入、政権側の軍部隊とともにスンニ派主体のシリア反体制派への攻勢を強めていた。
このため、反体制派に近いレバノン国内のスンニ派勢力などとの対立も深まっており、同国内では宗派間抗争の激化を懸念する声が強まっている。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130709/mds13070920570005-n1.htm
◆アルジェリア人質事件で注目 日本人が知らない「民間軍事会社」の実態
今年1月16日、アルカイダ系組織の司令官モフタール・ベルモフタールに率いられたと見られるアラブ系の武装集団が、アルジェリア東部イナメナスにある天然ガス施設を急襲。約30人のテロリストで組織された犯行グループは外国人スタッフらを乗せたバスが施設内の居住区域から外に出た直後を狙い、そのまま居住区域を占拠した。施設内にいた800人以上が人質となってしまい、アルジェリア国内の報道によれば、そのうちの132人が外国人だったとされる。
事件発生後、アルジェリア軍は施設周辺を包囲。翌日の17日からは、ヘリコプターによる犯行グループへの攻撃もスタートした。アルジェリア軍によるテロリスト壊滅作戦は19日まで続き、最後は犯行グループが人質を巻き添えに自爆を決行。4日間でテロリストを含む70人近くが死亡する大惨事となった。
1969年からアルジェリアでプラント建設に携わり、長い年月をかけて現地スタッフや地元民との信頼関係を築き上げた日揮の関係者が犠牲になったことは、業界に少なからぬショックを与えた。
犯罪が多発する地域や紛争国で誘拐やテロの危険からスタッフを守るために、現在多くの企業が民間のセキュリティ会社と契約を結び、リスクヘッジに努めている。特殊部隊出身らを雇い、危険な地域で警備活動させるセキュリティ会社も少なくなく、10年ほど前から民間軍事会社という言葉が広く使われるようになった。
「プライベート・ミリタリー・カンパニー」やその会社に雇われたセキュリティ・コントラクターと呼ばれる契約警備員だ。民間軍事会社は重装備の警備員を使って要人や施設の護衛を行うだけではなく、兵站や情報収集と分析も業務の中心と位置付けている。
イラクだけで少なくとも2万人の武装した民間警備員が活動している。
「現在も中東地域で活動を行っているが、イラク出張の際には民間軍事会社とセキュリティ契約を結んでおり、10人近くの警備員が常時護衛してくれる。警備会社に支払う額は地域や内容によって異なるが、1日2500ドルの時もあれば、1万ドルかかるケースもある」
コンサルティング会社代表は、イラク国内の移動の際にかかる警備コストは各地域の安定度によって変動するが、爆弾テロなどが頻発する首都のバグダッドや南部と比べて、豊富な天然資源を背景に治安や経済に安定化の兆しが見え始めた北部ではセキュリティ料金も安くなるのだという。
「イラク出張では特殊部隊出身の元兵士らによって護衛を受けたが、彼らは全員軽機関銃を帯同し、我々が乗った車は防弾仕様となっており、地雷・仕掛け爆弾対策として車底には分厚い鉄板が取り付けられていた。後部座席には重機関銃も備え付けられる仕様になっており、軍用車両そのものだった」
南米在住の日系企業駐在員は、「こちらではテロよりも、誘拐や強盗といった凶悪犯罪から身を守ることが何よりも大切」と中東やアフリカとの違いを強調しながら、地域によってはセキュリティ会社に身を守ってもらわなければ、企業活動もままならいと語る。また、日本ではあまり馴染みのない国々だが、グアテマラやホンジュラスではアメリカやメキシコから流入した大量の銃がブラックマーケットに出回っており、出張の際にはテロとは異なる緊張感に包まれるのだという。
「メキシコやブラジルに出張する場合、現地ではほとんどの移動にタクシーを使うが、時と場合によっては社用車を使う。社用車は防弾仕様となっており、誘拐や銃撃に遭遇する可能性のあるエリアで使うのはやはり社用車だ。誘拐は大きな問題だが、ビジターとして短期滞在する場合には、逆に自分の素性も把握されにくいため、誘拐されるリスクは普段よりも低いのではないかと思う」
「新しくプロジェクトを始める国で民間の警備会社と契約を結ぶ直前、アメリカ政府の情報機関や軍の関係者から、特定の民間軍事会社を使ってくれないかと持ちかけられたことがある。そういった会社は特殊部隊の元メンバーらを警備員として雇っており、エリート軍人のセカンド・キャリアの受け皿としても使われている」
たしかにデルタフォースやSEALSといった、ハリウッド映画でも頻繁に描かれる米軍エリート部隊出身者が民間軍事会社に転職するケースは珍しくない。ワシントンDCにある軍のアウトソーシング化の拡大を目指すロビー団体「国際安定化事業協会(ISOA)」の創設者ダグ・ブルックス氏は、イラクやアフガニスタンで経験値の高い民間警備員を活用するメリットを強調する。
「たとえば、イラクで実際に警備を行うPMCスタッフの多くは、アメリカやイギリスのエリート部隊で経験を積んだベテランだ。プロフェッショナリズムに徹するという点では、一般の兵士以上の働きを見せてくれる」
「同一扱いは名誉棄損に等しい」 民間軍事会社と傭兵の違いとは?
傭兵と民間軍事会社スタッフの違いを説明するのは難しい。どういった違いがあるのだろうか?
2008年にイラク国内で活動する民間軍事会社の実態をまとめた『シャドー・フォース』を上梓し、米連邦議会公聴会でも証言を行った経験のある軍事アナリストのデービッド・アイゼンバーグ氏は、ブッシュ政権時代にイラクやアフガニスタンといった複数の国で大々的な軍事作戦が同時に行われたことが、冷戦終結後の90年代初頭に世界各地で作られ始めた民間軍事会社をより大きな存在に変貌させたと語る。
冷戦終結前にも、特殊部隊出身者らで組織された傭兵組織は南アフリカやイギリスなどに存在した。しかし、前出のブルックス氏は「メディアや知識人の間で民間のセキュリティ会社を傭兵と呼ぶ傾向があるが、はっきり言えば名誉棄損に等しい」と憤慨する。アイゼンバーグ氏は交戦規定を例に出し、傭兵との違いを説明する。
「傭兵集団との大きな違いは戦闘を行う際の判断基準にある。施設や要人の護衛目的で送られたスタッフにも交戦規程は存在するが、武器の使用はあくまでも自衛と(施設や要人の)保護のみに厳しく限定されている。例えば、要人を護衛するセキュリティ・チームのもとに、周辺に潜伏するテロリストや誘拐犯といった面々の細かな情報が送られたとしよう。構成員数や隠れ家の場所、使用する武器の種類といった情報を事前に入手したとしても、リスクヘッジのために民間軍事会社スタッフがテロリストの隠れ家を先制攻撃という形で急襲することはない。あくまでも護衛という範囲内で業務は遂行されるのだ」
イラク戦争開始から1年ほどで、民間軍事会社からイラクに派遣されたスタッフは2万人を超えた。早急に大量の人員を確保したい民間軍事会社側と、軍時代と比べて数倍の給料が保証されることに魅了され、応募に殺到する元エリート兵士たちの間で、細かい身辺調査が省かれる傾向が見られるようになった。この結果、人材面でセキュリティ会社間に大きなバラツキが生まれる。
アイゼンバーグ氏は業界の淘汰再編は近いと語り、軍や政府ではなく、民間企業から鉱山やプラントの警備業務を請け負うスタイルが主流になるだろうと予測する。しかし、それ以上に、セキュリティ会社が警備事業以外の分野も拡大させなくてはいけない時代に突入した事に注目する。
ライフルから情報へ 変わりゆく将来像
重武装した警備員を紛争地帯などに送り込む民間軍事会社によるセキュリティ・ビジネスは、テロや凶悪犯罪や頻繁に発生する不安要素を抱えた地域がいくつも存在する現状も手伝って、まだまだ世界中で需要があるようにも思える。しかし、アフガニスタンとイラクにおける米軍や同盟国軍部隊の規模や戦略が変化するのに比例して、ビジネスの形態も変わりつつあるようだ。
前出のブルックス氏は、「需要が激減したわけではないが」と前置きしながら、最近の流れについて語る。
「どの業界にも波はあるものだが、セキュリティ会社が特殊部隊経験者の大量採用に踏み切り、紛争地で大儲けしたのは過去の話。7、8年前がピークだったと思う。その点だけを見れば、業界は縮小傾向にある。要人の警護だけではなく、海賊からタンカーを守る仕事でもセキュリティ会社は活躍しているが、警備以外の分野で新たな活路を見出そうとする動きが増えてきた」
アイゼンバーグ氏も民間軍事ビジネスにおけるトレンドの変化に注目する。
「たしかに米英の特殊部隊出身者らによる警備は心強い。しかし、警備業務は現地スタッフを訓練することによって、一定のクオリティを維持できる。元エリート兵士に銃を持たせて警備につかせるよりも、軍や情報機関で培ったノウハウを活用し、政府や民間企業をクライアントにして情報収集活動する方がビジネスとして将来性があるのではないかという声が大きくなってきた」
民間企業が政府の情報収集・分析を請け負うケースは過去にも存在した。2004年5月にイラクのアブグレイブ刑務所で囚人が虐待を受けていた事実が発覚。裸にされた囚人達の横で咥え煙草でポーズを決めるアメリカ人取調官の写真が何枚も外部に流出したため、大きなスキャンダルへと発展した。
実はアブグレイブで囚人の尋問を担当していたのが、アメリカのバージニア州にあるCACI社から派遣されたアメリカ人の契約社員達だったのだ。CACI社は情報収集・分析ビジネスにも力を入れており、2011年には子会社がスコットランドの国税調査業務を日本円にして約20億円で請け負ったが、地元住民からは批判が噴出した。
加えて、アメリカではCIAなどの情報機関が民間企業に一部業務をアウトソーシング化している事実が明らかになり始めている。
2011年9月20日にワシントンの連邦議会で開かれた公聴会では「諜報活動における民間企業への委託」がテーマとなり、その中でアメリカの諜報活動に従事する全スタッフの28パーセントがセキュリティ会社などから派遣された民間人である事が明かされ、より高い専門知識を持つ民間人スタッフが平均で政府職員の倍のサラリーで働いている実態も紹介された。サイバーセキュリティの強化から衛星写真の解析まで、実に幅広い分野で民間人スタッフが活躍している。
ロイター通信は昨年10月、複数の民間軍事会社関係者の話として、今後ペンタゴンから軍事業務の民間委託が激減するだろうという業界内部の認識を伝えている。イラクとアフガニスタンから米軍が完全撤退すると、米軍の任務を請け負う必要性が無くなってしまうという見通しが強い。また、オバマ政権が中東からアジア太平洋地域に戦略的なプライオリティを変更したため、「戦艦や海兵隊部隊が重要視される地域では、これまでのような民間軍事会社スタッフに対する需要は出てこないだろう」とロイター通信は伝えている。
アフガニスタンとイラクから米軍部隊が撤退するのに合わせて、世界各国の民間軍事会社も新たなビジネスチャンスを模索し始めた。仮に元エリート兵士らによる警備活動がアジア太平洋地域ではあまり必要とされないとしても、すでに兵站や情報収集・分析といった分野で着実にビジネスを拡大する業界にとって、日本を含むこの地域が新たな主戦場になる可能性はゼロではない。
http://diamond.jp/articles/-/33019